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特集:UNIVASは日本の大学スポーツを変えるか

コロナ禍の大学スポーツはどこへ 鈴木スポーツ庁長官と鎌田UNIVAS会長に聞く

スポーツ庁の鈴木大地長官(奥)とUNIVAS会長の鎌田薫・前早稲田大学総長(撮影・すべて照屋健)

国内初の大学スポーツの統括組織として2019年に誕生した大学スポーツ協会(UNIVAS=ユニバス)は、新型コロナウイルスの影響でその活動が大きく制限されています。大学スポーツは今後どう進んでいき、統括団体の果たすべき役割は何なのでしょうか。2020年9月で退任するスポーツ庁の鈴木大地長官と、UNIVASの鎌田薫会長(前早稲田大学総長)に朝日新聞の中小路徹編集委員が聞きました。

池田敦司・UNIVAS専務理事インタビュー

統括組織UNIVAS創設1年半、3本柱の役割

――鈴木長官の任期中に大学スポーツの統括組織が生まれました。この意義をどうみますか。

鈴木 まずは、なかったものが立ち上がったという意義が大きいと思います。東京五輪・パラリンピックを機にスポーツを変えていこうという波に乗り、大学スポーツ振興を図るチャンスとなりました。

役割は三本柱。一つ目は安全なスポーツ環境整備で、二つ目は学業との両立。学生アスリートはスポーツ中心で他のことをおろそかにしているという意見もあった中、多能な人材として育っていくことはスポーツ界の価値向上につながります。三つ目は大学スポーツの振興で、特に地域コミュニティーの中心になっていけば、地域創生の流れにもつながります。

鈴木大地スポーツ庁長官

――創設1年半、どんな活動をしてきましたか。

鎌田 14のテーマに分けたプログラムに着手しています。具体的には、来春に入学する運動部学生向けに学びへの関心を高める教育プログラムの提供や、大会に医療従事者を配置する事業を始めました。盛り上げ策としては、各競技の全国大会を使い、32競技で大学の総合順位を競うUNIVASカップを開いています。

ただ、課題はあります。(筑波大、慶應義塾大、関西学院大など)有力大学が加盟していません。また、もっと学生が前面に出ていい。「学生部」のような組織作りを検討しています。

感染予防対策の活動再開ガイドラインを作成

――新型コロナはUNIVASの活動にどんな影響を与えていますか。

鎌田 UNIVASカップの対象大会が中止、延期されるなど影響は大きい。一方、けがの功名ですが、6月に作った大学スポーツ活動再開ガイドラインは、各大学で再開の手がかりにしてもらえ、UNIVASが一定の存在価値を示せました。

鎌田薫UNIVAS会長

――大学施設が使えなくなり、大学リーグは会場不足で支障が出ています。UNIVASが大学側に働きかけられませんか。

鎌田 スポーツに限らず、学会も開けず、共通の問題。こういう配慮をすることで試合や大会はできる、という安心感を大学側に与える役割を果たしたいと思います。

――普通の学生生活もままならない中、スポーツ活動を理解してもらえるのでしょうか。

鎌田 「自分たちは教室に入れないのに、運動部が練習しているのはどうか」という声があったと聞いています。ただ、これからの教育は教室で先生の話を聞くだけでなく、自分で問題を発見し、解決していくことが大事。その意味で、スポーツは適した教育の場面といえます。それを加速する契機として、適切な環境整備下でのスポーツ活動には意味があると考えます。

鈴木スポーツ庁長官(左)と鎌田UNIVAS会長

加盟するステータスの確立を

――この厳しい状況で、UNIVASにどんなことを期待しますか。

鈴木 組織の「オフィシャル感」です。加盟することのステータスが確立されて、アスリートが社会に出て活躍していけるような積み重ねをしていって欲しいと思います。

――1000校以上が加盟し、様々なルール作りをしている全米大学体育協会(NCAA)とは影響力が違っています。

鈴木 NCAAも1910年に前身の組織を引き継いで誕生した時は加盟校が100校にも満たなかった。UNIVASも発足時としては順調では。ただ、なぜ加盟しないのか、加盟にどんなメリットがあるか、明確にする必要があるでしょう。

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