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特集:第72回全日本大学バスケ選手権

明星大が創部初のインカレへ! 3部からはい上がってきた新田嵐主将らが描く成長曲線

インカレ初出場に喜びを爆発させた新田(左から2人目)は、勢い余って仲間を押し倒してしまった(すべて撮影・小沼克年)

インカレチャレンジマッチ

11月13日@東京・駒沢オリンピック公園総合運動場
明星大学 85-77 神奈川大学

インカレ出場をかけた一発勝負。オータムカップ2020にて1部10位の神奈川大学と2部3位の明星大学による戦いは、持ち味の攻撃的なバスケを貫いた明星大が8点差で振り切り、創部初となるインカレ出場権を手にした。

大一番は神奈川大との“矛盾対決”

明星大は10月11日に初戦を迎えたオータムカップ2020で3勝1敗の成績を残し、悲願のインカレまであと1勝まできた。「攻撃は最大の防御」と言わんばかりに、ドリブルアタックを主体に攻めに攻める明星大に対し、神奈川大は相手にプレッシャーをかけ続ける守備力が最大の武器。周りから“矛盾対決”と表現する声も聞こえてきたが、明星大は相手がどこだろうと、やることは変わらなかった。

「全てのプレーに対して全力でいこう」

試合前の明星大ベンチで柴山英士ヘッドコーチ(HC)はそう声をかけ、選手たちをコートへ送り出した。第1クオーター(Q)は岡田泰希(3年、北陸)のスリーポイントで初得点を挙げると、神谷璃空(3年、日本航空)、主将の新田嵐(4年、桐光学園)らも加点。シュート確率こそ振るわなかったが、積極的な姿勢を見せて24-21で終えた。

第2Q序盤は、新田が2つ目のファウルを宣告されてベンチへ下がるも、「仲間がつないでくれた」(新田)と、明星大はそこから3本のスリーポイントを射抜いて10点リード。しかし、神奈川大も譲らない。東野恒紀(3年、厚木東)のバスケットカウント、小針幸也(3年、桐光学園)のスリーポイントですぐさま対抗し、45-42で試合を折り返した。

拮抗した試合展開。明星大は気持ちひとつで挑んだ

後半の立ち上がりも同じような展開。明星大は再び点差を2ケタとするも、そこから相手の堅守に苦しみミスが目立ち始める。守備ではなかなか東野を止められず、一時リードを奪われた。62-61。試合は一進一退の攻防のまま最終Qへ。

勝てば天国、負ければ地獄。会場内も前半より一層張りつめた空気が漂う。明星大はここでも岡田が得点力を発揮して69-62と前へ出た。さらには新田のミドルシュートも決まり、新田は小さく拳を握る。11点差。しかし、試合終了まであと5分近くある。コート上の5人、ベンチで見守る仲間、そして柴山HCも「まだだぞ! まだだぞ!」と、自分たちに言い聞かせるように最後まで声を張った。

新田主将「最後は自分が決めたかった」

この熱戦の終止符を打ったのは、主将の新田だ。試合終盤に訪れた1対1の場面、持ち前のスピードで抜き去ってペイント内に侵入し、フワッとボールを浮かすフローターシュートを沈めて79-69。そこから、神奈川大に執念を見せられ4点差に迫られたが、東野が取ったリバウンドを新田がスティール。ボールを奪われた東野は5つ目のファウルを宣告され、ファウルアウトとなった。新田はここまで28得点を挙げていた相手エースをベンチへ追いやると、このプレーで獲得した2本のフリースローを決め切り、明星大の勝利を確実なものにした。

新田は主将として、4年生として、自分の力でチームを勢いづけたかった

「シュートが入り出せば自分たちの展開になるかなと思ったんですけど、前半はなかなか入らず辛抱強くやっていました。そんな中でもリードしていたので、後半になればチャンスがあるなと思いました」と、新田は試合を振り返った。加えて「今日は本当に仲間のおかげで勝てたと思います」と、ゴール下を支えたシェッラ ママドゥ(4年、延岡学園)、大一番で33得点を叩き出した岡田ら3年生の活躍に感謝したが、最後は自分のプレーで勝利をつかみたかったと心情を吐露した。

「今日は本当に緊張しましたし、手がシビれるような緊迫した試合になりました。個人的にはよくなかったと思うんですけど、それでも最後は自分が決めたいという思いでプレーしていました」

この思いが、きっと最後の好プレーにつながったのだろう。計14得点に加え、6スティールとディフェンスでの貢献も光った。柴山HCから“ワンダーボーイ”と親しまれるスピードスターは、試合終了のブザーがなるまで決して表情を崩さなかったが、試合後の会見では終始白い歯を見せて喜びに浸っていた。

試合を重ねるごとにチームは成長

新田が入部した年の明星大は、まだ3部リーグに所属していた。翌年の2018年から2部昇格を果たしたが、この年のリーグ戦では2部・3部の入れ替え戦を経験し、昨年も6位と「インカレ出場」という目標は決して近くはなかった。

それでも今シーズン、新田を主将にすえて臨んだオータムカップでは「初戦よりも2戦目、2戦目よりも3戦目と、共通理解を持ってみんなで声をかけ合えるようになってきた」と、大会を通してチームは成長。「練習中はそんなに声かけることはないんですけど、試合では勝とうという気持ちを一番見せたいので、自分から声をかけるようにしています」と、新田は自分なりのキャプテンシーでチームを牽引(けんいん)した。「本当に成長したチームになったなと思います」

ライバルの思いも背負い、いざインカレへ!

試合終了を告げるブザーと同時に喜びを爆発させた明星大。試合後、新田は桐光学園時代の後輩に当たる神奈川大の小針の元へ駆け寄った。その小針は、最終盤に連続スリーポイントを決めるなど最後まで明星大を苦しめたひとりだ。ほんの少しだけできたふたりだけの空間。新田先輩からかけられた言葉を聞いた途端、小針の目に涙が浮かんだ。

「来年はお前の番だし、やっぱり神大を背負うエースとして頑張ってほしいと伝えました」

新田(左)は桐光学園時代の後輩・小針の思いも背負い、最後の舞台に立つ

激闘を繰り広げたライバルの思いも背負い、新田、そして明星大は初のインカレに挑む。「とりあえずインカレを目標にしてきたんで、(インカレでの目標は)これからみんなで話し合いたいと思います」と新田は笑ったが、「本当にこっからは突き進むだけ。この先もドライブからのバスケットを貫きたいと思います」と力強く意気込む。

自分たちのスタイルを貫き通し、創部初の快挙を成し遂げた。だが、新田嵐率いる明星大学のバスケは、まだ終わらない。12月8日、ようやく辿り着いた大学日本一を決める晴れ舞台に立つ。初戦の相手は、大阪学院大学だ。

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