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特集:第72回全日本大学バスケ選手権

明治大が全てをかけてきた白鷗戦、富田一成主将ら4年生がチームに残したもの

この試合4本の3ポイントを沈めた富田。第2クオーターに出血で長くコートを離れたのが痛かった(撮影・全て青木美帆)

第72回全日本大学選手権 2回戦

12月10日@大田区総合体育館Bコート
明治大学 62-72 白鷗大学

昨年度、関東大学リーグ2部に降格、インカレ不出場という憂き目に遭った明治大学は、今年最後となる公式戦で、関東1部リーグ4位の白鷗大学を相手に素晴らしい戦いを見せた。「組み合わせが決まってから、白鷗戦のことだけを考えて、その後のことは何も考えずにやってきました」。主将の富田一成(4年、藤枝明誠)が話す通り、明治大は序盤からすさまじい気合いをもって格上の相手に挑んだ。

白鷗大・荒谷を押さえ込み、互角の立ち上がり

要注意プレーヤーに掲げた白鷗大の荒谷裕秀(4年、東北)を植松義也(4年、桐光学園)が押さえ込み、リバウンドやルーズボールに全員で食らいつく。学生バスケの真骨頂を凝縮したようなディフェンスに加え、186cmの長身ガード、常田耕平(3年、正智深谷)のゲームコントロールから富田や植松がアウトサイドシュートを沈め、互角の立ち上がりを見せた。

植松はインサイドでプレーすることが多かったが、外角の力も磨いてきた。荒谷とのマッチアップでは好守を発揮

しかし、第3クオーター中盤に許した連続得点で、リードを2桁に広げられたのが痛かった。序盤によく決まったアウトサイドシュートも落ち、巻き返しはならず。62-72というスコアでタイムアップを迎えた。

専任の指導者がいない中、4年生がチームをつくった

金丸晃輔(シーホース三河)や安藤誓哉(アルバルク東京)、 齋藤拓実(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)を輩出した大学バスケ界の名門は、近年苦境に立たされている。専任の指導者がおらず、本業を持つOBが、毎年のように交代しながらチームを見ざるを得ない体制は、その大きな要因のひとつかもしれない。

コーチが指導に多く時間を割けない以上、学生たちには強い主体性が求められる。そして、今年の4年生はそれを発揮してチームを引っ張ってきた。富田は「今年の4年生は言いたいことを言い合える関係。コーチがいない時こそしっかり話し合って、いいケミストリーがつくれたと思う」と言い、植松も「練習に遅刻しないとか、遊びよりも自主練習を優先するとか、本当に小さなことだけど、バスケに対してストイックに向き合ってきました。自分たちのそう言う意識が後輩たちに引き継がれて、チームのバスケへの向き合い方も変わったと思います」と続ける。

正PGを務めてきた渡辺翔太がプロ転向で退部し、常田がオータムカップから急きょPGに。試合後は「翔太さんがいたら勝てた」と悔やんだが、今季の経験を最終学年に生かしてほしい

ゲームメーカーとして4年生を勝たせられなかったという申し訳なさから、試合後しばらく立ち上がれなかった常田は、深い感謝をもって話した。

「コーチが毎年のように変わったり、2部に落ちたり、大変なことも多かったけれど、4年生はここ数年のチームの雰囲気を変えようと、すごく努力してくれました。プレー中に言葉でリーダーシップを発揮するわけではないし、多分『後輩たちがインカレに連れてきてくれた』と言うと思うけれど、僕は先輩たちにインカレに連れてきてもらったんだと思っています」

富田(34番)から常田へ、明治大のリーダーが引き継がれる

学生たちが、大学や部の体制に大きく介入することは難しいかもしれない。これまでにも“大人の事情”に翻弄(ほんろう)され、苦しむチームや選手をたくさん見てきた。しかし、大学生だってれっきとした大人。与えられた環境の中で自ら考え、行動し、現状を変える方法はいくらでもある。明治大の4年生は、それを強く教えてくれた。

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