ラグビー

明治大学の大石康太・副キャプテン、4年目で初めてまとった紫紺のジャ-ジー

明治大学の大石康太副将。フッカー転向を経てFW第3列に戻ってきた(撮影・斉藤健仁)

新チームにとって貴重な成長の場である関東大学ラグビーの春季大会が5月2日、2年ぶりに開幕した。その初戦、明治大学(昨季対抗戦1位)は日本大学(リーグ戦3位)と対戦。明大は、FL(フランカー)福田大晟(中部大春日丘)を筆頭に1年生3人がデビューを果たすなど若い力が台頭するのと同時に、最後の10分ほど、過去3年間、1分も出場時間がなかった副キャプテンが紫紺のジャージーに初めて袖を通した。

春季大会開幕戦でデビュー

24-19とリードして迎えた後半34分、今季、明大の副キャプテンに就任したNo.8大石康太(4年、國學院久我山)が公式戦に初めて出場した。「まだ練習でいい動きができていませんが、試合に出られてうれしく思います。周りには『緊張していそう』と言われましたが、あまり焦りや緊張はなかった。5点差だったので、いいコミュニケーションをとってチームを落ち着かせるなど自分の役割を果たそうと思っていました」と冷静に振り返った。

開幕戦の後半34分、No.8福田陸人と入れ替え出場した(撮影・斉藤健仁)

大石は持ち味のボールキャリアーや体を張ったプレーで、他のベンチメンバーとともにチームに勢いをもたらし、相手のアタックを粘り強く守り切り、そのまま5点差で接戦を制した。大石は「先発や控え選手に関係なく、春はフィットネスを鍛えてきたので、自信を持って取り組むことができた。後半、控え組がエナジーを持ってできたのは良かった」と破顔した。

大石は2年生の時までは3、4軍にあたるCチーム以下の「ルビコン」でプレーし、3年生の昨季は主力のA、Bチーム「ペガサス」と「ルビコン」をいったりきたりという選手だった。また昨季はコロナ禍でジュニア選手権も開催されなかったため、過去3年間の公式戦でのプレータイムはゼロ。それでも腐ることなく練習に打ち込み、今季、初めてメンバー入りを果たし、春季大会の初戦からチャンスをつかんだ。

スクラム圧倒の試合締める

試合の流れで大きかったのは、明大がスクラムで圧倒したことだった。マイボールは100%ボールを供給し、相手スクラムでは反則も誘った。FWのまとめ役でもある大石は「フロントロー(FW第1列)は昨季からメンバーがあまり変わっておらず経験値があったかもしれないが、スクラムやラインアウトは明治大の武器にしたい。相手をドミネイト(圧倒)する、制圧しようと取り組んでいる」と胸を張った。

春はほとんど8人対8人でスクラムを組んでいないという。お互いに指摘し合いながら、スクラムの基本姿勢を徹底し、一人ひとりの低さ、具体的には膝の高さを1cm、手の平一つ分にしようなどと取り組んできた。またラインアウトでは持ち上げる選手が最後までリフトするなど個人の精度にこだわってきた。「明治らしさ、明治スタンダードを大事にして、明治のスクラムを築き上げていきたい」(大石)

大石は、両親がラグビー好きだった影響で、小学2年生から東京・葛飾ラグビースクールで本格的に競技を始めた。中学校から部活でラグビーをしたいという思いもあり、通学には1時間半ほどかかったが、名門の國學院久我山に進学。高校3年生の時はキャプテンとして、「花園」こと第97回全国高校ラグビー大会(2017年度)でベスト8に輝いた。

第97回全国高校大会準々決勝でトライを決めたが、10-29で大阪桐蔭に敗れた(撮影・朝日新聞社)

フッカー転向で長所生かせず

大学は高校のOBも多く進学しており、FWの強い明大へ進んだ。運動量が豊富で器用な選手だったが、身長179cmとさほど大きくなかったこともあり、大学に入るとスクラム最前列のHO(フッカー)への転向を決めた。

ただ、HOとしてセットプレーに集中するあまり、なかなか自分の長所であるフィールドプレーが生きてこないと感じていた。そこで大学2年の夏、田中澄憲監督、そして高校と大学の先輩でもある滝澤佳之FWコーチと相談。「中途半端になるなら、バックロー(FLとNo.8の総称)でプレーした方がいいのでは」とアドバイスを受け、高校時代までプレーしていたポジションに戻ることを決めた。

大石は3年まで「ルビコン」にいる時間が長かったが、「人としての土台があってはじめてラグビーができる」とフィールド外では、自らを律し、整理整頓や下級生とコミュニケーションを密に取ることなどを率先して行ってきた自負はあった。2021年2月、新4年生全員でキャプテンを決める話し合いをした時に、SH飯沼蓮(4年、日川)とともに名前が挙がったのが、公式戦の試合経験が全くなかった大石だった。

「共同キャプテン」という案も出たが、結局、1年生から試合に出続けている飯沼がキャプテン、大石が副キャプテンという形で落ち着いた。

明治大学の飯沼蓮新主将、「MEIJI PRIDE」掲げて3季ぶりの王座奪還へ

大学に入ってから試合に出ていない大石は、副キャプテンに就任することには「正直、葛藤があった」と思いを吐露する。それでも、「練習中に一番動き回ってコミュニケーションを取りたい。私生活に関して大事にしているので、(飯沼)蓮が見逃したようなことは、年間を通じて厳しくやっていきたい」と意気込んでいる。

明治「8番」のプライド

もちろん、大石はフィールド内でも控えメンバーになって満足しているわけではなく、激しいポジション争いの中、8番を着て先発することを狙っている。滝澤FWコーチと話した末、「明治大のNo.8はもっとフィジカルが必要」とトレーニングに精を出しつつ、常に、倒れても立ち上がって次のプレーに参加し、1対1のコンタクトでも勝てる選手を目指している。

「紫紺の(ジャージーの)8番を着続けることに関して、僕が貪欲にやっていかない限りチームも変わらない。この選手が頑張っているので自分も頑張ろうという雰囲気になり、チーム自体が成長意欲を持ってやるようになれば、もっといい試合ができる。チームが成長できるよう中心選手としてやっていきたい」(大石)

明治大学の背番号「8」は重い(撮影・斉藤健仁)

好きな言葉は、プロ野球の名将だった故・野村克也監督が残した「先入観は罪、固定観念は悪」だ。「やる前から、物事を判断するのではなく、自分でやってみる、実戦してみてから、自己研鑽していきたい。常に変化を求めること、変化=成長につながると思うので、自分に何が必要か見極めながらやっていきたい」と冷静に自分を見つめている。

そして副キャプテンとしても大石は「(飯沼)蓮に一人で背負わせないように上手く拾って、蓮の意志プラス僕らの意見を出していくと今季の色になっていくと思う」とサポートする思いは強い。飯沼キャプテンも大石のことを「賢くて、頼りになります!」と全幅の信頼を置いている。

大石は明大の王座奪還のために、フィールド内外で率先して体を張り、キャプテンを支えつつ「MEIJI PRIDE」というスローガンを体現していく一人となる。

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