日体大が74年連続の箱根駅伝、玉城良二監督「4年生が一丸となって取り組んだ成果」
第98回東京箱根間往復大学駅伝競走予選会
10月23日@陸上自衛隊立川駐屯地周回コース(21.0975km)
1位 明治大学 10時間33分22秒
2位 中央大学 10時間37分38秒
3位 日本体育大学 10時間39分32秒
4位 山梨学院大学 10時間41分15秒
5位 神奈川大学 10時間41分57秒
6位 法政大学 10時間42分12秒
7位 中央学院大学 10時間43分08秒
8位 駿河台大学 10時間44分47秒
9位 専修大学 10時間44分58秒
10位 国士舘大学 10時間45分41秒
日本体育大学は、現在も継続している中では歴代最長記録となる73年連続で箱根駅伝に出場している。「周りからも『今年も頼むぞ』と言われてました」とエースの藤本珠輝(たまき、3年、西脇工)は言い、けが明けで挑んだ10月23日の箱根駅伝予選会では意地を見せて15位(日本人7位)に入り、日体大は3位通過。記録を「74年連続」に伸ばした。エースの走りが光ったが、玉城良二監督は「夏の合宿とか全て4年生中心になってまとめてくれ、そういう意味では今日の結果も4年生が一丸となって取り組んでくれた成果だと思います」と4年生をたたえた。
エース藤本が日本人先頭集団で勝負
日体大のレースプランは、藤本1人をフリーで走らせ、あとは集団で押し切るというものだった。藤本は7月に右足の疲労骨折をして以降、チームでの練習ができていなかった。体力を落とさないよう、9月はひたすらバイクをこぎ、痛みが強く出ない程度にスピード練習を継続。ギリギリの選択の中で藤本の出走を決めたこともあり、玉城監督は藤本自身の感覚に任せてレースに送り出した。
当日の天気は快晴で、強い風が吹くことも予報されていた。1周2.567kmを8周するレース、藤本はまず、1周は様子を見て集団の中でレースを進めたところ、思ったよりも感覚がよく、5kmをすぎてからは留学生の先頭集団に次ぐ第2集団の先頭につけた。大きな集団となった第3集団の後方に盛本聖也(3年、洛南)、第4集団の先頭で大畑怜士(4年、島田)が走り、後は加藤広之(4年、学法石川)や佐藤慎巴(4年、埼玉栄)を先頭にチーム内で固まってレースを進めた。
藤本はその後も日本人トップ集団の中で勝負。ラスト2周を過ぎても20人ほどの大きな集団で動き、強い向かい風が吹く残り600mの直線でスパート勝負となった。藤本も最後までもがいたが、日本人7位の15位でゴール。「レース中、痛みは特に感じなかったんですけど、足が動かなくて……」と練習不足を痛感させられた。単独でレースを進めた盛本は42位のチーム内2位に、続いて佐藤が58位でチーム内3位につけた。
自分でメニューを考えて1人で練習
藤本は5月の関東インカレでは男子1部10000mで4位(日本人2位)、5000mでは6位(日本人4位)と力を示し、6月の全日本大学駅伝関東地区選考会(10000m)でも日本人トップの記録をマークしている。どのレースでも自ら先頭を引っ張る積極的な走りをしてきたが、「練習でもずっと1人でメニューを組み立ててやっているので、1人で走るのには慣れています」と藤本は言う。
昨シーズンまでは皆と同じメニューをしていたが、次第にそれでは物足りないように感じ始めた。今シーズンになってからは、ペースを上げたり距離を伸ばしたりとメニューを自分で作り、玉城監督に「これで行きます」と伝えた上で練習をこなしている。「監督からは『そうか、(ペースを)上げすぎるなよ』と言われているんですけど、上げちゃって怒られています」と笑いながら明かす。そのメニューに盛本が加わることもあり、それ以降、盛本も調子を上げている。「いずれは同じメニューを2人でこなして、切磋琢磨(せっさたくま)してやっていけたらいいな」と藤本は言う。
実際にそのメニューをこなして藤本が結果を出し、「これだけやらないと結果は出ない」ということをチームメートに示す一方で、自分が日々の練習から引っ張ることでチームを底上げできない歯がゆさもある。板挟みの気持ちを抱えながらも、藤本はエースとしての責任を全うする覚悟だ。
全日本大学駅伝は「若手にチャンスを」
2週間後の11月7日には全日本大学駅伝が迫っている。日体大は前回1区17位と出遅れ、最後は中央学院大学が見えていた中での12位だった。ただ、チームの最大の目標は箱根駅伝であり、その箱根駅伝を目指して4年生たちは何度もミーティングを重ねてチームをまとめ、練習を積み重ねてきた。「4年生を中心に、どこの大学よりも選手同士、チーム全体でのミーティングをしてチーム作りをやってきたのかなと思っています」と玉城監督は言い、その4年生を箱根駅伝に集中させたいという思いがある。「(全日本大学駅伝に)出る限りはもちろんシードをとりたい。ただうちは、若手にチャンスを与えて戦わざるを得ないのかな」と、箱根駅伝予選会での選手たちの疲労具合を見定め、若い力にも期待したメンバー選びを考えている。
今シーズンの選手たちに対し、玉城監督は「当たり前のことをきちんと丁寧にやろうと伝え、学生らしくというか、ただただみんなでやってきているという感じだと思います」と話す。伝統校のプレッシャーを感じながらも、目の前の課題と向き合い、仲間と切磋琢磨しながら練習をこなす。その一人ひとりの積み重ねが「74年連続」という記録につながっている。