陸上・駅伝

特集:第98回箱根駅伝

MARCH対抗戦で戦力充実を見せた青山学院大 主将・飯田貴之「箱根にいい流れ」

急遽の出場だったと言いながら、好結果を残した主将の飯田(撮影・藤井みさ)

1124日に初開催されたMARCH対抗戦で、青山学院大学は全5組でトップとなるなど、強さを見せつけた。選手たちは箱根駅伝に向けて、それぞれの思いを持ちながらこの大会に臨んだ。

 山内「後輩からもらった刺激を返せた」

3組でトップになったのは山内健登(2年、樟南)。昨年度の駅伝初戦となった全日本大学駅伝でルーキーながら駅伝デビューを果たしたが、それ以降駅伝への出走はない。今年喘息が発覚し、それもあって自信をなくしてしまっているところもあった。学内タイムトライアルでも5000m1457秒かかり、1114日の世田谷ハーフマラソンでも1時間622秒と、力を発揮できずだった。

「今シーズンは厳しいかなと思っていて、それもあって今回も2930秒ぐらいを目標にしていました」。レースは立教大学陸上部監督の上野裕一郎さんがペースメーカーとなり引っ張った。「ちょっと速いかなと思った」というが食らいついていったところ、5000mを通過してもまだ余裕があると感じられた。そのままペースを維持し、283412での組トップでのゴール。自己ベストも大幅に更新した。

山内は組トップでゴールし、ガッツポーズ(撮影・藤井みさ)

強い1年生の活躍が目立ち、「下級生には負けたくないけど、(世田谷ハーフなどで)負けてしまって自信をなくしてました」という山内。「今日こうして勝てて、下からもらった刺激を下に返すことができたのかなという気持ちです」とすこし自信を取り戻した様子だった。近藤幸太郎(3年、豊川工)を尊敬しているという山内が箱根駅伝で走りたいのは、前回大会で近藤が走った7区。チームの上昇気流に乗っていきたい。

 ルーキー若林「5区で勝負したい」

4組では1年生ながら出雲駅伝、全日本大学駅伝を走った若林宏樹(洛南)が282772でトップに。5200mでペースメーカーが外れてからは先頭を引っ張る形となり、そのままゴールしたが、この展開は「まったく予定していなかった」という。「8000mまでついていって、残り2000mで出てタイムを狙おうと思っていた」というが、なかなか前に出る選手がいなかった。そのため「しんどかった」というが先頭をキープし、粘りのレースを見せた。

「完全に想定外だった」というが、若林は先頭で押し切った(撮影・藤井みさ)

若林は10月の出雲駅伝では4区を担当し、区間6位。順位は落とさなかったものの、前との差は開いた。11月の全日本大学駅伝では、体調を崩した西久保遼(3年、鳥栖工)のかわりとして急遽、本番2日前の18時に出走を言い渡された。「経験として連れて行かれたという状況で、急遽走ることになって。正直緊張もすごくて準備もあまりしていなかったので……その結果があれです」。3位で襷(たすき)を受け取ったが、区間12位と苦しい走りとなり、順位を5位に落としてしまった。「チームとしてもブレーキになってしまい、メンタル面でもきていて、練習でも疲れがたまっていました」とここまでいい状態ではなかったと話す。だが、チームメートや多くの人たちからの励ましがあり、立ち直ってここまでくることができた。今日のレースは自信になりましたか? と問われると「はい」とはっきり答えた。

若林が箱根で走ってみたいのは、5区だという。和歌山出身の若林は、中学時代には日常的に山を使っての練習に取り組んでいた。主将の飯田貴之(4年、八千代松陰)も5区を希望しているが、「飯田さんに勝って走ることができたらそれも自信になると思うので、勝っていきたいと思います」とチーム内競争にも闘志を燃やす。

登りが得意なので、5区を走りたいという若林。取り戻した自信で箱根に挑む(撮影・藤井みさ)

1114日の世田谷ハーフマラソンでは同級生の田中悠登(敦賀気比)が、宮古サーモンハーフマラソンでは太田蒼生(あおい、大牟田)がそれぞれ優勝した。だが若林には、1年生の中では一番練習を積めているという自負がある。「自分もそれぐらい(結果は)出せるという自信があります」。箱根駅伝でこそ快走を誓う。

 主将・飯田「箱根こそキャプテンらしい走りを」

主将の飯田は5組に出走。エース・近藤幸太郎(3年、豊川工)が強さを見せる中で、第2集団から徐々に前へと順位を上げ、組4着の283030と自己ベストを更新してフィニッシュした。もともと大会に出る予定ではなく、1週間前に30km走を速いペースでこなしたあとに原晋監督から「出るぞ」と言われたと話す。「練習の一環で走ってどれぐらいタイムが出るのか、試す場所としてやりました」。設定タイムは5000m1410秒と聞いていたが、それより速く先頭がすすんだ。「余裕があれば前の方に行こうと思ってて、途中で先頭とは離れちゃったんですけど、いい流れで進められたと思います」と手応えをにじませた。

青学・近藤幸太郎がMARCH対抗戦で首位、箱根駅伝優勝した2年前と同じ勢いを実感

飯田は出雲駅伝で2区区間7位、全日本大学駅伝ではトップの駒澤大と18秒差の2位でアンカーとして走り出したが、途中追いついたもののラスト2kmで突き放された。史上最も僅差の8秒差の2位でゴールし、泣き崩れた。その時のことは「今でも忘れてないですし、ふとした時に思い出しますけど、それはそれで忘れないほうが箱根も頑張れると思います。前は向いてるので」と切り替えている。

だが、自らは主将としてまだ満足いく役割を果たせていないと感じている。「今年1年間は、キャプテンらしい結果が残せていないのが現状です。駅伝で区間賞がないので、区間賞の走りをして優勝に導くこと。それができてキャプテンの走りができたと言えると思うので、それを目標にやっていきたいと思います」

勝てなかった悔しさを忘れずに、飯田はキャプテンとして最後の箱根に臨む(撮影・藤原伸雄)

以前取材で5区を走りたいと答えていた飯田だが、若林くんも5区を希望していましたが……と話を向けると「僕も5区を走りたい気持ちはもちろんあります。そこの争いもアピール次第というか、練習で監督が決めると思うので。僕は山を目指してもし外れても、平地で力を発揮できると思うので、どの区間になっても走れるように準備していきたいと思います」と頼もしい。

レーザーや音楽のド派手な演出に「東京オリンピックみたいでテンションも上がったし、記録も出そうだなと思った」という飯田。青山学院大の選手はこの日、実に20人が自己ベストを更新した。「箱根に向けていい流れだと思います」。千葉・富津での選抜合宿を経て、10日にはエントリーメンバーの16人が発表される。今度こそ頂点へ。上り調子のチームがどんな戦いを見せてくれるか。

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