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特集:第73回全日本大学バスケ選手権

筑波大学が2度の延長戦制し日本大学に大逆転勝ち、二上耀「最後は自分がやる」

筑波大学は2度の延長戦を制し応援席も歓喜に沸いた。肩を落とす日本大学の選手(撮影・全て朝日新聞社)

第73回 全日本大学選手権大会 準々決勝

12月10日@大田区総合体育館(東京)
筑波大学 81-78 日本大学

試合時間は残り20秒を切った。筑波大学の井上宗一郎(4年、福岡大大濠)が起死回生の3点シュートで同点を狙う。「打った瞬間、タッチが良かったので入ったと思った」。しかし、ボールはリングに当たり、バッグボードより高く跳ねる。井上が「あぁ、終わった」と言えば、吉田健司監督も「入ってくれ~と思って、ダメかと」。次の瞬間、上に弾んだボールがリングの間にストンと落ちてきた。同点。「大田区のリングに感謝です。あれは運です。よかった」。身長200cmの井上は振り返った。

終了間際に同点の3点シュートを決め、同僚に迎えられる筑波大の井上宗一郎(中央)

14点を追い第4Q

筑波大は関東リーグ戦で34点差をつけられた日本大学に10点リードされて折り返した。第3クオーター(Q)に一時3点差に迫りながら逆襲を許し、44-58と14点差をつけられて第4Qを迎えた。井上は「全然、追いつけなくて、気持ちが切れかけた」。日大の1年生エースの一人、身長206cmのコンゴロー デイビッド(報徳学園)とマッチアップし、前半は厳しい防御からファウルを多発。ベンチに下がらざるを得ず、「申し訳ない思いが大きかった」

もう攻めるしかない。二上耀(ひかる、4年、北陸)の連続得点などでじりじりと追い上げた。この試合から初めて使ったオフェンスが日大を混乱させた。「14点離され、リーグだったらこのままずるずるいく流れだった。最後は自分がやるというのが課題でもあった。4年生がしっかりやるところでやって、下級生の力も大きい」と二上。本来はディフェンスから流れをつかむチームが攻めて攻めて勢いを取り戻し、井上の「奇跡」のスリーポイントシュートにつなげた。

大逆転の流れを作った筑波大の二上耀

ルーキー米須玲音、力尽きる

2分のインターバルを挟んで、5分の延長戦は1回で決着がつかなかった。春の関東大学選手権(スプリングトーナメント)を15年ぶりに制し、12年ぶりの王座を狙った日大もさすがだった。ベンチから仲間を鼓舞することが多かった若林行宗主将(4年、日大豊山)は「今までとは違ういいチームになれた」。地道なディフェンス強化に取り組み、コンゴローと最強ルーキーコンビの米須玲音(東山)に存分に力を発揮させチーム力を高めてきた。秋のリーグ戦では2位に入り、王者・東海大学の対抗一番手に挙がった。

ただ、コンゴローが体調を崩して勝負どころで使えないなど誤算があった。後半は米須中心の組み立てにならざるをえず、筑波大にディフェンスを絞りやすくした。1回目の延長戦で貴重なゴールを決めるなどこの日もチームを引っ張った米須は「(第4Qに)二上さんが点数を連続で取った時に流れがあっちにいってしまった。ガードとしてあそこで1本切れれば、自分たちのペースでもう1回進めることができた」。フリースローの調子がいま一つで、「オーバータイムに入る前のフリースローをしっかり決めることができれば、オーバータイムにならなかった。そこが一番、反省しなければいけない」と振り返った。

フリースローを外し渋い表情をみせる日本大の米須玲音

「いいゲームだった」感激の吉田監督

互いに譲らず72-72で2度目の延長戦に入った。この延長で勝利を引き寄せるゴールを決めた三谷桂司朗(2年、広島皆実)が「チームもけが人が多くまとまってなかった。どうやったらいいのか、解決策がわかってなかった」と振り返った試合前半の状況から、4年生に引っ張られる形で17点を挙げ、奇跡的な逆転劇に貢献した。

2度目の延長戦で貴重なゴールを決めた筑波大の三谷桂司朗(34)

結局、2度の延長戦の末、3点差で決着がついた。日大の片桐洋祐監督は「ちょっとのずれが修正できなかった。若い選手が多くダメになった時の修正力が足りなかった。勝たせてあげたかった」と選手たちをねぎらった。筑波大の吉田監督は興奮気味に言った。「すごいですね。うちだけじゃなく向こうも。勝利への執着。ボールへの執着。シュートへの執着。最後までやってくれた。感謝している。日大さんも優勝への執着があった。いいゲームだった。そういう中で私も一緒にプレーできてうれしい」

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