陸上・駅伝

特集:第98回箱根駅伝

「箱根駅伝でインパクトを残したい」國學院大主将・木付琳と4年生が示す「覚悟」

「総合優勝」を目指し、選手たちは総合力で箱根に臨む(撮影・藤井みさ)

2大会前の箱根駅伝で総合3位となり、旋風を巻き起こした國學院大學。今年、新チームを始動するにあたって、選手たちが話し合って決めた目標は「箱根駅伝総合優勝」だ。出雲駅伝、全日本大学駅伝とともに4位、確実に自分たちの力がついてきている。その手応えをもって選手たちは箱根路に臨む。

木付「自分の力を出せれば他大学のエースとも戦える」

木付琳(4年、大分東明)は3年生から2年間、主将の重責を担ってきた。前主将は土方英和(現・Honda)。出雲駅伝初優勝、箱根駅伝総合3位とそれまでの國學院史上最高の成績を残したチームが、木付たちの目標であり、超えるべき存在だった。しかし3年の時はけがをして走れない時期も多く、その状態でチームの先頭に立つことに迷いもあり、自分自身が何をすべきか見失うこともあったという。土方に何度も助言を求めたこともあった。前回大会は直前に区間変更で10区にまわり、「ごめん」のポーズで9位のゴールテープを切った。「本当は10区を走る予定じゃなかったので迷惑をかけたのもそうですし、襷(たすき)を9位でもらって、本当は3位を目標にしていたのに、6位争いをして、しかも負けてしまったことに情けない気持ちがあって、自然と出てしまいました」と振り返る。

前主将の土方から主将を継ぎ、2年間チームの先頭に立ってきた木付(撮影・藤井みさ)

箱根が終わってから自分をしっかりと見つめ直すことで、「偉大な先輩に頼りきりでは自分のチームにならない」と気づくことができた。前田康弘監督と話す機会も増やし、「自分の色を出していいんだよ」とも言われ、自然に振る舞えるようになってきたという。「4年目になってから競技者である自分と、キャプテンである自分を区別できるようになって、いろいろと吹っ切れました」。その思いは競技面にも現れる。出雲では大学に入って初となる、2区区間賞。これが木付の大きなターニングポイントとなった。

「どの区間でも自分の力を出せれば、他大学のエースとしっかり戦えるという自信がついてきました。しっかりと自分の走りをしたいと思います」。最後の箱根では往路で、総合優勝の力になりたいとまっすぐに見すえる。「心も体も今は本当に充実していて、戦う準備はできています。2年前のチームを目標にしていて、あのインパクトをもう1回残せれば、今後の國學院も大きく変わってくると思うので。今年だけというよりは、今後のことも考えつつ箱根を走りたいです」。穏やかな口調に闘志がにじむ。

副将・島﨑は「1区と6区、どっちも走りたい」

出雲と全日本は、ともに同級生の島﨑慎愛(よしのり、4年、藤岡中央)と襷(たすき)リレーをした木付。出雲の区間賞も「島﨑と2人でとった区間賞だと思います」という。普段から仲のいい2人だが、2人が初めて箱根を走ったときも、6区と7区で襷リレーをしていた。「そういった意味でも、思い入れはありますね」と話す木付。

総合3位となった2年前が島﨑と木付の箱根駅伝デビューだった。襷をつなぐことに思い入れもある(撮影・佐伯航平)

その島﨑は今年3月の学生ハーフマラソンで3位に入り、ワールドユニバーシティゲームズの出場権をつかんだ。しかし新型コロナウイルスの影響で大会は延期になり、派遣も白紙となってしまった。「日本代表のユニホームがほしかったな、という気持ちもありましたが、そこからは切り替えて『総合優勝』の目標に向けて、しっかりと練習を積むことができました」。3年生になってからほとんどけがをせず、練習を継続できていることで力を着実に伸ばしてきた。チームでは副将を務め、木付を1年間支えた。「1年生のときからほとんど競技力も同じで、ライバルで親友みたいな感じです」と木付のことを表現する。今年の夏合宿、木付がけがで離脱した際に、島﨑が主将役を務めたことがあった。「チームを引っ張っていく、しかも言葉で、というのは大変だなと改めて感じました」と盟友の背負っているもの大きさを改めて感じたという。

練習を継続できていることが競技力の向上につながったという島﨑。スピード、キレを磨きチームに貢献する(撮影・藤井みさ)

島﨑は過去2回箱根を走ったが、2年続けて6区を走り、前回は区間4位と好走した。今年は出雲、全日本とともに1区を担い、スターターとしての役割をしっかり果たした。走ってみたい区間をたずねると、「1区と6区、どっちも走りたいです」と決められない様子。1区を想定し、1000mのインターバルのあとに200mをプラスするなど、出し切ったあとにさらにラストスパートを絞り出す想定で練習も積んでいると話してくれた。

1年時から「優勝」を考えてきた藤木

3年時から抜き出た力を持ち、チームの「エース」と呼ばれてきた藤木宏太(4年、北海道栄)。7月から9月の間はけがで思うような練習を積めず、出雲では3区区間10位、4区区間7位と本来の実力からは物足りない結果となってしまった。「結果が出せる状態ではなかったので」と振り返り、今はやっと体の使い方が以前のようにつかめて、状態が上がってきたと話す。最後の箱根となるが、希望区間はあまりない。「5、6区以外は行けるようにしておけと言われているので、自分の状態とチームの状況で(どこに配置されるか)大きく変わると思っています」

走りでチームを引っ張ってきた藤木。熱いものを秘めていることを感じさせた(撮影・藤井みさ)

一見クールな受け答えをする藤木だが、仲間への気持ちと「優勝」への思いは強い。昨年度、木付が3年生主将だった時に、競技で結果を出せないことで思い悩んでいる姿を見ていた。「琳が言いたいことがあっても結果を出してないから強く選手たちに言えない、ということは、多少結果を出してる僕が言わせてもらったりしていました」。いまの4年生が入学した時、5000mで持ちタイムが14分30秒を切っている選手は1人もおらず、けがも多く「史上最弱世代」だと言われたこともあった。「その時に『優勝してやろうぜ』と同期で話していました。僕はけっこう本気で思ってたので、今でも優勝ということには本気です」と熱い一面を見せる。「注目されるのはタイムを出してる大学だと思うんですけど、自分たちはレースに出てないだけで、タイム以上の力を持っていると思うので。トラックは関係なくて、自分たちがロードでやってきた練習をそのまま出すだけだなと思ってます」と言い切る。

溢れ出る「山愛」で5区に挑む殿地

11月13日の「激坂王決定戦」で「三代目山の神」神野大地(現・セルソース)に次いで2位になった殿地琢郎(どんぢ、4年、益田清風)は、山へのこだわりと愛を見せる。高校の時から起伏が激しいコースを毎週走っていたといい、登りの適性はあるのかなと感じていた。高校2年のときに國學院に勧誘されてから、「ここに行って自分が(5区を)走ったらもっとチームが強くなるのでは」と思い、5区を強く意識するようになった。しかし1、2年時は浦野雄平(現・富士通)の山への適性が抜きん出ており、殿地は8区、10区を担当。浦野が卒業したあとを誰かが継がなければという思いで昨年度、再度5区に志願し、念願の山デビューを果たし、区間8位だった。

殿地はこれまで3年連続箱根駅伝を走っている。最後の年は5区しか見ていない(撮影・藤井みさ)

前回大会は風が強く、思ったよりタイムが伸びなかったと殿地。筋力の必要性を感じ、臀(でん)部のトレーニングなどもして最終学年の山に備えてきた。ライバルとして見ているのは、青山学院大学の飯田貴之(4年、八千代松陰)と東洋大学の宮下隼人(4年、富士河口湖)。「(2年前に)浦野さんより速かったのもあって、敵討ちじゃないですけど、勝ちたいなと思っています」。「山は特徴が2%で、98%が気持ち」だという殿地は、ガッツで箱根の山に臨もうとしている。

前田監督「総合力でなんとかねばり倒したい」

殿地の「山愛」は前田康弘監督も認めるところで、5区は殿地で行くと明言している。そして、すでに2区も決めていると口にする。「チームの誰に聞いても満場一致だと思います。それぐらい、2区を走る子は(力が)抜けてます」。誰とは明言しなかったが、しっかりと前田監督の頭の中には構想があるようだ。「耐える2区にはなると思いますが、うちとしては堂々と置ける2区です。さすがに(イェゴン)ヴィンセントくん(東京国際大3年、チェビルベルク)や田澤くん(廉、駒澤大3年、青森山田)とはちょっと違いますが……他大学のエースともじゅうぶん勝負できると思います」

4年生がここまで練習を積み、強くなってきたが、上昇気流に乗るチームには年々強い選手が入学してくるようになってきた。ルーキーの平林清澄(きよと、1年、美方)はすでに出雲のアンカー、全日本の7区と重要区間を任され、それぞれ区間5位、区間3位と結果を出している。入学時から5000m13分台を持っていた山本歩夢(1年、自由が丘)もここへ来て好調。全日本のアンカーを務めて区間賞を獲得した伊地知賢造(2年、松山)の実力も申し分ない。今シーズンは苦しんでいるが、中西大翔(3年、金沢龍谷)も力のある選手だ。以前より前田監督は「駅伝は4年生の力」と言い続けてきたが、ここへ来て力をつけた4年生と、実力がある下級生が増えてきたことで、チームが強くなりつつあると話す。

平林(手前)は箱根駅伝を見すえてという意味でも全日本大学駅伝で7区に配置された(撮影・佐伯航平)

とはいえ、駒澤大学や青山学院大学と比べてしまうと、層の薄さは否めない。特にエントリーメンバー16人が10000m28分台のタイムを持っている青学を警戒する気持ちは強い。優勝する条件は、山でリードを取り、「2強」に追わせる展開にすること。青学、駒澤以外にも創価、東京国際大学、順天堂大学などの名前をあげ「往路はどこが勝ってもおかしくないです。だからこそ復路は総合力が問われる。そこで勝負したいと思います」。監督なりにレース展開をシミュレーションし、「勝負区間」ももう決めているという。「どのチームにもチャンスがあると思うので、なんとかねばり倒したいですね」。2年前のようなインパクトを、この箱根路で与えることができるか。勝負の時は刻々と迫る。

in Additionあわせて読みたい