東洋大・酒井俊幸監督「思い切った布陣で箱根駅伝往路優勝、総合3位以上を」
前々回大会で10位となり、11大会連続3位以内が途切れた東洋大学。しかし前回大会は底力を見せて総合3位に返り咲いた。今年は「鉄紺の証明」をスローガンに掲げ、箱根駅伝では総合3位以上を目標に臨む。12月20日のオンライン会見で、酒井俊幸監督がここまで取り組んできたこと、そして箱根への意気込みについて語った。
思い切った布陣で往路優勝、そして総合3位以上を
「鉄紺の証明」というスローガンは、選手たちから考えた言葉だ。「第97回箱根駅伝総合3位という結果が偶然ではないことを優勝を目指して証明する」、「鉄紺のチームスピリッツ『その1秒をけずりだせ』を体現し証明する」、「走りだけでなく人間性の成長を見せる、証明する」という3つの意味がある。
しかし東洋大の前半シーズンは、宮下隼人主将(4年、富士河口湖)をはじめとしてけが人が続出。関東インカレ長距離種目では入賞がなく0点に終わるなど、近年にない厳しいスタートとなった。しかし夏合宿は新型コロナウイルスの影響を大きく受けた昨年と比べ、充実した合宿を行うことができ、「中間層の構築ができた」と酒井監督は話す。
出雲駅伝、全日本大学駅伝では「新しい戦力の台頭」を目標として臨んだ。出雲では3位となったものの、全日本では10位で、14大会ぶりにシード権を落とす結果に。そこから選手たちは改めて危機感を持って取り組み、「ようやく鉄紺をまとう雰囲気が出てきました。全日本のときとは別のチームぐらいの雰囲気が出てきました」と酒井監督。
前回は起用する10人は比較的すぐに決まったが、今回は誰を起用しようかいい意味で迷うぐらいだといい、「前回大会の往路メンバー4人が残っています。前回は往路2位でした。思い切った布陣で往路優勝を取りに行き、総合3位以上を改めて狙っていきたい」と力強く言い切った。
「東洋大スピリッツ」を改めて選手たちと共有
全日本大学駅伝まではトラックを見すえてスピード練習を重視していたが、11月以降は箱根駅伝に向けてスタミナ重視の練習に切り替えた。それと同時に、「襷(たすき)を持ってユニホームを着た時にぶれない心」を練習の時から作り出していこう、と選手たちに意識づけるようにした。全日本直後に選手たちに言ったのは、「個人のレースではなく、駅伝である」ということ。「自分が任された責任を果たすことが重荷になるのではなく、『自分がなぜ箱根を目指すのか』、『仲間たちとどういう思いでやっているのか』、そこに立ち戻ってやっていこう、と伝えました」
また、今まで「当然」と思われていた東洋大に受け継がれてきたものについても、改めてじっくりと話すようにした。「コロナ禍もあって、昔話のようなミーティングをやる機会がありませんでした。それを全日本大学駅伝のあとから、知ってて当然かなというような話も、僕や妻(陸上競技部・瑞穂コーチ)、選手たちみんなで話していきました」
14年間どういう思いで全日本大学駅伝の襷をつないできたかや、箱根駅伝で初優勝を遂げたあと、卒業生たちがどのようにここまできたのか。東洋大のスピリッツである「その1秒をけずり出せ」「怯まず前へ」といった言葉が生まれた背景など、さまざまなエピソードを一人ひとりに、また学年ごとに話すようにし、思いを共有してきたという。
このまま終わるわけにいかない
チームの中心となっているのはやはり主将の宮下だ。宮下は全日本のアンカーを3年連続で務め、最後となった今年は涙を流しながらゴールした。酒井監督は宮下をゴールで迎え入れ、4年生として主将としてシードを取れなかった彼の無念を感じた。そこから気持ちを立て直し、朝練習の集合時間は5時半だが、4時から練習に取り組む宮下の姿を見てきた。「それを見て他の者も心が動いて、1人、2人と朝練のだいぶ前から自分の取り組みをするなど、キャプテンの意気込みがチームを変えてきていると思います」。このままでは終われない、その気持ちを強く感じられる。「このままいけば前回大会の区間3位よりは確実にいけると思います」と酒井監督も期待をかける。
前回大会では決して全員が区間上位ではなかった。区間2桁順位となる区間も2区間ある中で、「学生たちの執念を感じました」。「一方で今年はそういう気持ちが欠けているのかなと思うこともありました。ですが学生たちが『証明』と掲げた、その言葉を信じて、彼らを信じて、このまま終わるわけにいかないと証明したいです」。酒井監督の言葉に力がこもる。
今回が20年連続、80回目の出場という節目となる東洋大。鉄紺のユニホームと襷のもとチームが一つになり、強さを「証明」することができるか。