陸上・駅伝

特集:第98回箱根駅伝

東洋大・宮下隼人主将 最後の箱根駅伝では「自分の区間記録を超える走りを」

オンライン会見に臨んだ左から石田、宮下、前田(写真提供・東洋大学)

箱根駅伝総合3位以上を目標に掲げて臨む東洋大学。12月20日のオンライン会見で、チームの中心となる主将の宮下隼人(4年、富士河口湖)、副将の前田義弘(3年、東洋大牛久)、出雲駅伝と全日本大学駅伝で連続区間賞を獲得した石田洸介(1年、東農大二)が出席し、それぞれの意気込みと思いを語った。

東洋大・酒井俊幸監督「思い切った布陣で箱根駅伝往路優勝、総合3位以上を」

全日本シード落ちの悔しさで奮起、朝4時から練習

宮下は前回の箱根駅伝で右足脛の疲労骨折をしてから、焦りもあり故障が長引き、前半シーズンはレースに復帰できず、充分に練習も積むことができなかった。出雲駅伝も欠場し、11月の全日本大学駅伝でアンカーを務めたが、その時の調子は「6~7割ぐらいでした」という。11位でもらった襷(たすき)を1つ押し上げたものの、10位でのゴール。14大会ぶりにシード権を落としてしまった。涙ながらにゴールし、ゴール後もしばらく号泣していた宮下。「シード権を取れなかったことで、今まで襷をつないできた先輩、それから来年は予選会からになる下級生に申し訳ないという気持ちで、ショックが大きかったです」と話す。

宮下は全日本大学駅伝アンカーでゴールしたあと号泣。酒井監督に「この思いを箱根でぶつけないとだめだ」と声をかけられた(撮影・岩下毅)

しかし、酒井俊幸監督に「この思いを箱根でぶつけなければだめだぞ」と言われ、「箱根しか残されていないので、それであれば後輩たちに思いをつなごうと、強い気持ちを持つことができました」と話す。「箱根で有終の美を飾って終わりたい」という思いも強くなった。前半シーズンの出遅れを取り戻すためにもっと練習したい。昼間は授業などもあるため、練習時間を確保することを考えた際に、朝早く起きて4時から取り組もうと決心したという。その姿を見て、チームから1人、また1人と宮下に続き、全体練習の前に各自の取り組みを始める選手も現れてきた。

自分の区間記録更新は最低限

今のチームの雰囲気を問われると、チーム全員で「全日本大学駅伝シード落ち」の現状を受け止め、各学年が「やらないといけない」という雰囲気が出てきたという。「気持ちだけじゃなくて、行動として現れるようになってきたなと強く感じています」。現状は自らの状態も8~9割まで戻ってきているという実感がある。「あと2週間でさらに上げて、体も気持ちも10割に整えていきたいです」とおだやかな口調ながらも、燃える胸の内を感じさせた。

最後の箱根駅伝でも5区へのエントリーが最有力だが、目標については「2年前に出した(自分の)区間記録の更新は最低限したいと思っています。前回往路2位で終わったので、今回は往路優勝。そしてチームとして総合3位以内の目標を達成したいです」。今回エントリーされた4年生は、は宮下と蝦夷森章太(愛知)の2人のみ。エントリーできなかった4年生の気持ちも背負って箱根の山に臨む。

2大会前、区間新記録を更新したときの宮下。その時の自分を越えたい(撮影・佐伯航平)

副将・前田 チームを支える存在として

宮下を副将として1年間支えていたのが前田だ。宮下も「僕自身が見きれない面を補助して助けてくれた」と前田の存在の大きさを認める。前半シーズンは宮下がレースに出られず、その分練習で引っ張ること、周りを見て声をかけるようにと意識して取り組んできた。関東インカレの際も宮下が出場できず、「副主将である自分が点数を取らないといけない」とハーフマラソンに臨んだが、13位と入賞できなかった。「出雲も(3区)区間6位、全日本も(区間)8位で、ルーキーの石田が区間賞を取ってるのに、情けない成績しか残せなかった悔しさがチームに対してあります」

前田は1年から箱根駅伝に出場し、8区6位、3区8位の成績を残している。3年目の今年は、夏合宿で今までで一番距離を踏み、スタミナが身についたという自信もある。また、寮に低圧低酸素器と高圧高酸素ルームが導入され、高い強度の練習をしても疲労を残すことなく次の練習に移れているのも大きいという。その積み重ねを、箱根こそは発揮したい。走りたい区間をたずねられると「前回は3区で不甲斐ない走りをしてしまったので、往路でリベンジしたいという気持ちもありますが、総合3位以内に入るために監督が任せてくれた区間で責任をまっとうしたいです」と話す。

夏合宿でスタミナをつけてきた前田。箱根駅伝では区間賞を取れるような走りをしたいと話す(写真提供・東洋大学)

16人のエントリーメンバーのうち、3年生は前田を含め6人と最多。出雲駅伝でアンカーを務めた柏優吾(3年、豊川)など、着実に力をつけてきている選手が多い。3年生はどんな学年ですか? と聞くと「それぞれの個性がとても強いです。チーム全体で見ても3年生の人数は多いので、いい影響も悪い影響も与えると思っています。できるだけいい方向に引っ張っていけるような学年にしたいです」。次なる鉄紺の中心となる自覚はじゅうぶんだ。

スーパールーキー石田「区間賞は意識しない」

ルーキーの石田は、5000mの高校最速記録(当時)を持ち、大きな注目の中で東洋大に入学した。しかし前半シーズンはけがもあり、レースへの出場は途中棄権した日本選手権5000mのみにとどまった。夏合宿もAチームに合流したのは8月下旬から。しかし出雲(5区)、全日本(4区)と連続で区間賞を獲得し、酒井監督も「才能あふれる選手」と評価する。

20kmを超える距離のレースは石田にとって未知の領域となる。練習で自信をつけていくこともそうだが、それ以上に「心理的な壁をできるだけ作らないようにしている」と話す。「初めての20kmにワクワクする気持ちを今は大事にしています」。ここまで出雲、全日本と連続で区間賞。もし箱根でも区間賞獲得となれば、1年生での3冠は日本人としては初めてとなる。そこは石田も知っているが、「区間賞にこだわりすぎない」と言い切る。「もちろん取りたい気持ちはありますが、どういうレースを求められるかにもつながると思うので。箱根駅伝では1区間もミスが許されないので、チームの状態を考えるのがベストだと思います」とあくまで与えられた区間での役割をまっとうするつもりだ。

石田は東洋大学に、世界を目指すために入学した。常日頃から世界を意識している石田の言動は、他のチームメートにも刺激を与えていると酒井監督は言う。そして箱根と世界を分けて考えるつもりもない。「結果を残すことが世界への第一歩だと考えています。駅伝と世界、別に捉えるのではなく、すべてがつながっていると思っているので、結果を出していきたいと思っています」

東洋大のエースへの第一歩

小学生の時からテレビで見ていた箱根駅伝は、夢の舞台でもある。印象に残っているのは2大会前、東洋大の先輩である相澤晃(現・旭化成)が2区で区間新記録を出したことだ。相澤のように走りたいか? と聞いてみると「自分は東洋大のエースを目指しているので、エースとして走らなければいけない区間は2区だと思います。最終的には2区で、相澤さんの記録を超えたいと思います」と頼もしい答えだ。だが「前半から行く走りが自分の持ち味」という石田は、現段階では自らの適性は3区か4区ではないかとも話す。

石田は出雲駅伝、全日本大学駅伝で連続区間賞。世界を見すえつつ、全てで結果を出す(写真提供・東洋大学)

大学では正直、競技力がそこまで上がったわけではないという。しかしけがをしていた時に支えてくれた監督をはじめとするスタッフ、先輩、同級生に助けられたことへの感謝、日頃支えてくれる方への感謝をしっかりと感じられるようになったこと、礼儀が身についたことなど、大学に入って人間力が成長したと感じているという。「自分がテレビを見ていて勇気づけられたように、次は自分の走りで勇気づけたいと思います」。スーパールーキーの箱根デビュー戦が楽しみだ。

本番まで残り2週間。箱根路で力を発揮し、チームスローガン「鉄紺の証明」を体現することができるか。

in Additionあわせて読みたい