ラグビー

特集:第58回全国大学ラグビー選手権

帝京大攻守スキなく10度目の大学日本一、勇退の岩出監督「一番いい時に渡せる」

全国大学ラグビー選手権で優勝し胴上げされる帝京大の細木康太郎主将(撮影・西畑志朗)

ラグビーの第58回全国大学選手権決勝が1月9日、東京・国立競技場であり、関東対抗戦優勝の帝京大学が明治大学を27-14(前半20-0)で下し、前人未到の9連覇を達成した54回大会以来、4季ぶり10度目の大学日本一を達成した。関東対抗戦3位から巻き返してきた明大の3季ぶりの王座復活はならなかった。

明治大から5トライ奪う

帝京大は厳しい防御とスクラムで明大を圧倒、前半4、後半1の計5トライを挙げた。ゴールキックが外れたこともあり点差は開かなかったが、全く危なげない試合運びだった。右プロップの細木康太郎主将(4年、桐蔭学園)を中心に春を含めて公式戦負けなしでシーズンを乗り切った。全国大学選手権の2桁優勝は16度の早大、13度の明大に続く3校目。試合後、1996年から指揮を執り、28年間で屈指の強豪に育てた岩出雅之監督(63)が今季限りでの退任を表明した。

江良と奥井、20歳が躍動

「成人の日」を控えた2人の2年生が帝京大の強さを象徴した。フッカーの江良颯(大阪桐蔭)は「監督から前日にやっぱりラグビーはディフェンスと言われた。仲間のために体を張り続けようと意識し続け、80分間できたので、本当によかった」。

前半、明大のWTB石田に強烈なタックルを浴びせる帝京大HO江良(撮影・森田博志)

前半23分ごろ、自陣の守りで明大はラインアウトからモールを組んだ。SH(スクラムハーフ)飯沼蓮(4年、日川)が右サイドを突いてきて、クロスするようにWTB石田吉平(3年、常翔学園)が入ってくる。モールサイドを守っていた江良が明大エースの石田に強烈なタックルを見舞い、反則を誘った。「横の選手とコミュニケーションがとれた。とれていなかったら(自分が)SHにそのままいって、石田吉平選手に抜かれていた場面だと思う。僕だけじゃなく、横のコミュニケーションがあったからこそのタックルだと思います」。分厚く連係がとれた帝京大の防御の壁が、明大の勝負手を封じ勢いをそいでいった。江良は前半終了間際、自陣ゴール前のピンチで相手ボールを奪い返した。直後にWTB白國亮大(4年、摂津)がインターセプトからこの試合自身3つ目のトライを奪いハーフタイムを迎えた。

細木を中心にスクラムで圧倒

計5本の帝京大のトライのうち3本はスクラムで圧力をかけたことがきっかけになった。スクラムで明大の反則を誘い、PKのタッチで明大陣に入って攻撃を重ねたものだった。前半34分のトライは相手ゴール前のラインアウトから右へ右へと7回攻撃を継続して、最後はNo.8奥井章仁(2年、大阪桐蔭)がうまく回り込んで相手選手に体を預けながら白國へパスを送った。奥井は「個人の判断ですが、1年間やってきたことで、あそこはグラウンドをフルに使うというのがあり、順目、順目にどんどん回っていった。1年間やり続けていたからこそ、スペース見つけられたのかなと思います」。

後半26分、左中間にトライを決める帝京大のNo.8奥井(撮影・森田博志)

後半26分には22mほどを走りきって自らダメ押しのトライを挙げた。奥井がブラインド側に残って好機を広げる準備してきたプレーだったが、インゴールまでボールを運びきった。チームが成長したこの1年を「徹底したことですかね。小さなことであったり、基礎の部分だったり。自分たちが去年負けて何が悪かったかというのを本当に話し合った。ペナルティーの数も減り、そういうところを徹底でき優勝につながった」と振り返った。

「負けて卒業していった4年生のおかげも」

江良と奥井はともに高校2年生から高校日本代表に選ばれている逸材で、大阪桐蔭高で初の高校日本一も達成した。「(高校日本一の)経験はさせてもらったが、この舞台と高校の舞台は全然違う。そこはチャレンジャーとして挑めたと思う」と江良は言った。

帝京大にとって決勝の舞台も9連覇した時以来だった。岩出監督は言った。「(連覇が)止まって、そこから上がってくるというのは正直、簡単ではなかった。4年生が負けてもう1度4年生ができる訳ではないので。結果はでなくても踏ん張りがあったからこそ、そしてまた、悔しさが残っているからこそ細木も燃えたと思いますし、負けて卒業していった4年生のおかげでもある」。昨年度の4年生が9連覇を知る最後の世代だった。細木主将ら4年生は初めて頂点にたどり着き、帝京大の新たな歴史をつないでいく。

試合後に明大の神鳥監督にあいさつする帝京大の岩出監督(右、撮影・森田博志)

試合後、帝京大の岩出監督と細木主将が参加した記者会見の最後で岩出監督が「少し時間を頂けます」と切り出した主な引退表明は次の通り。

「今日の試合で監督として最後にさせてもらおうと思っています。いろいろと考えを持って、大学とも相談をして、勝っても負けても今日を終わりにしようと思っていた。学生たちの頑張りで運良く勝たせてもらいました。26年間、監督させて頂きましたけれども、帝京大学の監督はこの試合をもって引退させて頂く予定です。キャプテンには2、3日前にちょっと伝えたのですが、試合前にそういう話をするのはと、学生たちには黙っていた。先ほどロッカールームで話をして。いろんな経験と充実した時間を頂いたと思います。もう、後任も決めていますので、次の人がしっかり頑張ってくれると思います。チームが充実して戻ってきましたので、一番いい時に渡せていいかなと個人的には思っています。ありがとうございました」

後半、スクラムで明大を圧倒する帝京大のPR細木ら(撮影・森田博志)

帝京大・細木主将 「監督から『徹底すること』と言葉を頂いて、僕からはみんなに1年間やってきたことを全て出し切ることを伝えた。先週の試合で、スキというもを自分たち自身が作って、苦しいゲーム運びになったことを本当に1週間考え直した。ゲームの始めから、厳しいところにガツガツいくことによって、ゲームの中で自信を持つこともでき、ピンチがチャンスになるというところを感じられた。80分間通してガツガツいけて、勝利することができた。試合終わって涙していたのは、自然に出てきて僕もわからない。うれしかったのと、今までのいろんなことを思って涙が出てきた。(後半、スクラムに勝ちガッツポーズしたのは)明治大学さんがメンバー交代して、フレッシュな状態の選手からかなりプレッシャーを受けたが、後ろから押しをもらい前に進めたのがうれしかった」

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