東京国際大・山谷昌也、関カレ5000m入賞に悔しさ、今度は自分が丹所健の力に
第101回関東学生陸上競技対校選手権大会 男子2部5000m決勝
5月22日@国立競技場(東京)
1位 ノア・キプリモ(日本薬科大4年) 13分55秒47
2位 ヴィクター・キムタイ(城西大1年)13分55秒82
3位 鶴川正也(青山学院大2年) 13分55秒99
4位 山谷昌也(東京国際大4年) 13分56秒88
5位 リーキー・カミナ(創価大2年) 13分57秒96
6位 目片将大(青山学院大4年) 13分58秒55
7位 白井勇佑(東京国際大2年) 14分01秒12
8位 片川祐大(亜細亜大2年) 14分01秒36
関東インカレ男子2部5000m決勝で存在感を示したのが、東京国際大学の山谷昌也(4年、水城)と白井勇佑(2年、仙台育英)の2人だった。先頭を走る留学生集団に山谷が白井を引っ張りながら2人で食らいつき、ラスト1周では白井が一気にスパート。最後は山谷が4位、白井が7位という結果だったが、「ずっと一緒に練習してきた仲間」の2人は東京国際大の強さを体現した。
ラスト1周で勝負
2人は5月20日の男子2部5000mでもともに走り、山谷は2着、白井は3着でそろって決勝へと進んだ。2日後の22日決勝、スタートからほどなくして星槎道都大学のデジェン・テスファレムウェルドゥ(3年、星槎国際湘南)が前に出たのをきっかけに留学生が集団から抜け出し、4人で先頭集団を形成。山谷は第2集団の先頭につけていたが、1000m過ぎには白井をつれて先頭集団についた。青山学院大学の目片将大(4年、須磨学園)は第2集団を引っ張りながら先頭集団に迫り、再びひとつの大きな集団となった。
留学生の後ろに山谷と白井、その後ろに青山学院大の鶴川正也(2年、九州学院)と目片という位置取りでレースが進む。ラスト2周を前にして鶴川がペースを上げて留学生の間に割って入ると、その後ろを白井が追う。ラスト1周に入る前に白井が一気にスパートをかけて先頭に出る。しかしバックストレートで後続ランナーにつかまり、山谷もラスト200mで白井を捉えた。一時は鶴川との差も縮めたが最後の直線でまた差が開き、山谷は4位でゴール。白井は7位だった。
白井「雲の上の存在」だった山谷や丹所の背中を追い
昨シーズンはまだルーキーだった白井にとって、東京国際大の日本人エースである丹所健(4年、湘南工科大附)と山谷は「雲の上の存在で憧れの選手」だったという。10月の出雲駅伝で学生駅伝デビューを果たし、3区で首位に立った丹所から襷(たすき)を託され、そのまま首位を守って5区につなぎ、東京国際大は初出場で初優勝を飾った。
しかし11月の全日本大学駅伝ではメンバーから漏れ、年始の箱根駅伝では当日変更で7区を外され、同期の冨永昌輝(1年、小林)が出走した。「本当に直前の練習で決まったんだと思います。あの何とも言えない気持ち。来年こそこの気持ちを味わいたくない。もっと頑張っていこうと思いました」
今年の春先に山谷と同じ練習をするようになり、遠くに感じていた背中が少しずつ近くに感じられるようになったという。「それまでは決められたメニューをやればOKだったけど、丹所さんや山谷さんは決められた以上のものを追い求めていたので、自分に足りないものをしっかり学ぶという姿勢でやっています。2人に離されないよう、追い越せるように頑張りたいです」
3月13日の学生ハーフではチーム内トップの46位ではあったが、「優勝したのは同学年の平林(清澄、2年、美方)なんで」と現状に甘んじていない。6月からのホクレン・ディスタンスチャレンジで山谷や丹所を超える記録を狙う。
山谷、丹所やヴィンセントに救われた
そんな白井とのレースを振り返り、山谷は「ラスト1周で白井が前に出た時はビックリしたけど、やっぱり後輩には負けたくないですし、ずっと一緒に練習してきた仲間でライバル心をもってやってきたので、最後に勝ち切れて良かった」と言う。関東インカレという大舞台で4位入賞のうれしさはあるが、日本人トップや優勝を狙っていた山谷には悔しさの方が大きい。
「1年生から3年生までずっと、この(トラックシーズン)は調子が上がらず監督やみんなに迷惑をかけてしまって、その度に丹所やヴィンセント(イェゴン、3年、チェビルベレク)とか主力が結果を残してくれて、自分も負けられないなと思って頑張れました」
だからこそ、今大会では自分が結果を残したかった。日本人エースとして結果を出してきた丹所はケガが相次ぎ、走れない状況が続いた。山谷と丹所は陸上から離れてもともに過ごす時間が長く、色々な話をする機会はあるが、陸上の話はほとんどしないという。「例え落ち込んでいてもそんな姿を見せないのが丹所の強さを思う」と山谷は言う。
自分が丹所の姿に刺激を受けたように、今度は自分が丹所の力になりたい。山谷は4月2日の関東私学六大学3000mで7分57秒29、5月8日の日体大記録会5000mで13分36秒77と立て続けに自己ベストをマークできたのも、丹所の存在が大きいという。自分が結果を出すことで、丹所の背中を押してあげられたらと考えている。
丹所と掲げた目標
山谷と丹所の2人はともに日本選手権を目指してきたが、その夢は学生の内にはかなわなかった。だがこれから続くホクレン・ディスタンスチャレンジや日本インカレでは、同じレースを走ることになるかもしれない。もちろん互いに負けられない。「2人で(10000m)27分台を出して卒業しようとずっと言ってるんで、その目標をかなえてから卒業したいです」。山谷はうれしそうな顔で明かしてくれた。
もちろん、駅伝でもかなえたい夢がある。昨シーズンは出雲駅伝で1区、全日本大学駅伝では丹所がケガをしていたこともあり1区から2区に代わり、箱根駅伝では1区を任されてきた。「1区は誰にも譲りたくないんで。『1区は山谷』と言われるような結果をトラックをはじめ駅伝でも出していきたいです」
1区から流れを作り、「3大駅伝優勝」を。そんな大きな置き土産を後輩たちに残せるように。