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青山学院大のユニホームに「Snapchat」 会場が青学生で埋まる日をめざして

ロゴ入りのユニホームを持つ左から野口さん、伊藤さん、南さん(撮影・井上翔太)

関東学生アメリカンフットボールリーグ1部BIG8の青山学院大学ライトニングが公式戦で着用するユニホームの右胸に昨年12月から、写真共有アプリ「Snapchat」のロゴが入った。チーム内のブランディングを担当する部署が営業し、獲得に至った。背景や経緯をメンバーに聞いた。

愛されるチームになるため

関東学生アメリカンフットボール連盟によると、2021年からユニホームへの広告掲載が認められるようになった。加盟チームの財政を支援することが目的で、連盟から承認を受ければ、右胸、左胸、右袖、左袖の4カ所に広告を掲載することができる。1カ所につき1社で、青山学院大ではそれまで、右袖に部のOBが社長を務める会社が広告を載せていた。

青山学院大では昨年の冬に、ブランディングを担当するチームが立ち上がった。メンバーの一人で、選手としてRBも兼任していた野口倫太郎さん(4年、攻玉社)は「試合で勝つためにも、人間として成長するためにも、まずは皆さんから愛されるチームになりたいというのがありました」と結成した理由を語る。スポンサーを獲得するための営業や、試合で集客策を練ることが、主な目的だ。

ロゴ入りユニホームを着用して公式戦に臨んだ選手たち(提供・青山学院大学アメリカンフットボール部)

もともと高かったアプリの使用頻度

Snapchatを運営し、アメリカ・カリフォルニア州に本社を置く「Snap Inc.」が日本法人を設立したのは昨年3月末のことだった。アプリを開くと最初にカメラが立ち上がり、撮影後は送信先を選択する画面に移る。やり取りが続くと、その回数が数字が積み上がり、一度相手の投稿を見ると基本的に消えるのも、人気の理由の一つだ。中学3年から使っているというブランディング兼チーム広報の南百衣さん(3年、青山学院)は「友だちに『いま遊んでる』とか『ごはん食べてる』とその場で撮ったものを送信している感覚です」。Instagramは「映え」が意識されて、編集にこだわる利用者も多いが、Snapchatは「日常を共有する」感覚のようだ。

日本にオフィスを構えたSnapは、大学生の世代を中心に認知度と使用率を高めることを目的として、各大学の部活動やサークルに「協賛プログラム」を展開した。野口さんによると、部内で1カ月間に何通か送り合うと、ちょっとした景品がもらえるといったキャンペーンだったという。このプログラムに申し込んだところ、使用頻度が他の団体よりも高いことをSnapから教えてもらい、「話を聞きたい」と先方から声をかけられ、オフィスを訪ねたのが、最初の接点だった。

当時、ユニホームスポンサーの営業は手詰まり気味だった。主に営業を担当していた伊藤真泰さん(2年、横浜平沼)は対戦相手の分析をするアナライジングスタッフ、野口さんは先に触れた通り選手、南さんは広報と兼務だった。「営業までなかなか手が回っていないところもある中、ぜひともスポンサーになってもらいたい」(伊藤さん)とSnapに絞って提案したところ、快諾を得た。

スポンサーを獲得したことをSNSで報告すると、これまでの記録を大きく更新する最多「いいね」数を獲得し、特にOB、OGや青学生からの反響が大きかった。12月3日の上智大学戦でお披露目され、この日の一戦は集客面でも支援してもらった。画像データをSnapに提供することで、たとえば自撮りアプリの「SNOW」で加工するようなライトニングオリジナルの「レンズ」や「フィルター」を作ってもらった。

Snapの日本法人を訪ねた3人(提供・青山学院大学アメリカンフットボール部)

2030年の甲子園ボウル出場と日本一をめざす

チームは2020年、OBとOGを中心に「甲子園プロジェクト」を発足させ、2030年の甲子園ボウル出場と、学生日本一を目指している。そのためにプロのコーチを迎え、強化を進めている。伊藤さんはブランディングの活動も、最終的にはチームの強化につながると信じている。「最後は勝ちにつながるように。支援も選手がいい栄養を取れたり、より良い指導を受けられたりすることにつながります。最初も今もファーストペンギンで、何をしたらよいか常に考えているんですけど、チームをより良くしていくという1点は変わらない。その軸だけを据えて、枠にとらわれずに色んなことを進めていければと思っています」

試合会場での観客層はチームのOBや選手たちの家族が、まだまだ多い。春に卒業を控える野口さんは、この流れを変えたいと願う。「まだ規模は全然小さいですけど、今回の認知度を生かして、色んな営業を進めていってほしいです。そしてたくさんの青学生に来てもらいたい、多くの青学生に応援されたいと思っています」

学生が自分たちの手で、これまでになかった新しい分野を開拓する。今回のスポンサー獲得は新鮮さとともに、「学生が主体的に行動する」という大学スポーツのあるべき姿と本質が詰まっていた。

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