野球

特集:New Leaders2023

関西大学・有馬諒 甲子園も「緊張しない」強心臓の新主将、頂点だけ見据え戦い抜く

最上級生となり名実ともに攻守にわたってチームを引っ張る(撮影・井上翔太)

高校時代の甲子園を沸かせた司令塔が、大学ラストイヤーを迎えている。関西大学の有馬諒(4年、近江)は高校時代と同じく主将の座に就いた。

「(キャプテン就任は)監督やコーチも含めて、みんなで話し合った上で決まりました。立候補はしていないです。大学でのキャプテンは高校とは全然違います。高校も部員は多かったですけれど、大学は人数の規模が違いますね。高校では怒っていることが多かったけれど、大学はみんなそれぞれ自分の意見を持っていますし、また違う大変さはあります」

近江・有馬諒 2年連続の夏、主将での苦労や多くの気づきが成長の糧に

金丸には具体的な声かけを意識

入学直後から将来を嘱望されてきた。入学早々にコロナ禍となり実戦機会は限られたが、2年生になるとスタメンマスクをかぶり、投手陣を引っ張ってきた。今年もチームの中心選手として関西学生春季リーグ戦を戦っている。

関大の注目選手の一人に昨秋のリーグ戦でMVPとベストナインを獲得した来秋のドラフト候補左腕・金丸夢斗(3年、神港橘)がいる。最速151キロを誇る好投手をリードする上で、心掛けていることはどんなことか。

「飛び抜けてこのボールがいいというのはないのですが、どのボールも高水準でいいんです。球種は6個ありますが、1個が悪くても、あとの5個がいいんです。それも手がつけられないくらいいいんですよ。調子が悪くてもある程度の結果が残せるピッチャーなので信頼も厚いんです」

捕手として、特に投手の状態把握には心を砕く(撮影・井上翔太)

ただ、心を砕いていることがある。

「あまり球数を使わせないようにしています。基本的に3球勝負でいきますね。場面によってストレートを投げたがる時がありますが、三振が取れる変化球があるので、変化球で勝負します。基本的に完投してもらうつもりで投げさせています。金丸は自分のサインに応じて淡々と投げます。負けん気を全面に出すタイプです。でも(近江高校時代にバッテリーを組んでいた)林(優樹、現・東北楽天ゴールデンイーグルス)の方がかなり強気ですよ(笑)」

「それに金丸は緊張しやすいんです。緊張している時に1人にさせると良い結果は出ないので、『ここは四球でいい』とか具体的な話はちゃんとするようにしています」

一方でその有馬は、今まで試合で緊張したことがないという。

「だから僕は緊張する人の気持ちにはなれないんです。野球では緊張しませんが、大学の授業の英語の発表の方が緊張します(笑)。僕はキャプテンだから引っ張っていこうとは思わないです。ただ1、2本打てなかったからといって落ち込んでしまうような姿勢は、良くないと思っています。なので金丸が落ち込まないように、そういう時の声掛けは変わらずにやるようにしています」

近江時代は林(現・楽天)とのコンビも注目された(撮影・朝日新聞社)

ウェートトレーニングでパワーアップ

昨春のリーグ戦は第1節の京都大学戦で勝ち点を落としたことが尾を引き、最後まで波に乗り切れなかったという。その悔しさを胸に秋のリーグ戦では優勝できたが、自身の結果について話が及ぶと、納得がいかない様子を浮かべた。

「(昨秋のリーグ戦は)序盤は調子が良かったんです。苦手意識のあるピッチャーはいないのですが、けがの影響で徐々に調子が落ちていったのはあると思います」

今、自分に最も欠けているのは長打力だと有馬は言う。「これまではヒットを打っていればいいと思っていたところがありましたが、そろそろホームランを打たないといけないと思っています。でも自分はパワーがないので、この冬はウェートトレーニングに取り組んで、スイングスピード(を上げること)や体に力をつけることを重点的にやってきました。体重は5、6kg増えたんです。今、バットはいい感じで振れています」

冬にウェートトレーニングに取り組み、力強さが増した(撮影・井上翔太)

野手が多く残っていることを強みに

昨年末、大学の日本代表候補が集まった合宿を経験し、さらに長打力へのこだわりが増した。全国レベルを体感して、自分に足りないものが何か明確になった。

「(野手の)間を抜くようなというより(野手の)頭を越す打球が理想です。初見で甘いボールを仕留められるか。初球から甘いボールはなかなか来ないと思いますが、それでもいかにきっちりとらえられるか。そこにこだわっていきたいです」

今年のチームは、野手が昨年からほとんど残っていることが大きな強みだ。経験のある選手が多く、1日に開幕したリーグ戦は1戦目をサヨナラで落としたが、落ち着いて2戦目を取り返した。有馬は4番打者を任され、攻守ともに中心的な存在だ。

「(チームとしては)2年前のような厚みのある打線になればいいと思います。この冬は『つなぐ』というスローガンをもとに練習をやってきました。キャンプでも個々の力をつけることをテーマにやってきて、チームでもどう出るのか楽しみです」

大学日本代表候補合宿は、自分に足りないものを把握する機会となった(撮影・井上翔太)

昨年の明治神宮大会では2回戦で、優勝した明治大学に1-2で競り負けた。

「結果は完敗でしたが、内容はそこまで差を感じなかったです。相手は淡々と試合していたけれど、自分たちには落ち着きが足りなかったように思います。チャンスはあったと思いますが、浮足立っていたので……。落ち着きは大事だと思いました」

チームは全国トップレベルとの差を測ることができ、自身のレベルも再確認することもできた。冷静沈着な扇の要は、クールな目線の先に頂点だけを見据え、最後まで戦い抜く。

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