筑波大学・樫原沙紀が1500m優勝 昨年の日本選手権で味わった悔しさ、雪辱を誓う
2023日本学生陸上競技個人選手権大会 女子1500m決勝
4月21日@レモンガススタジアム平塚(神奈川)
1位 樫原沙紀(筑波大4年)4分24秒80
2位 正司瑠奈(環太平洋大2年)4分26秒48
3位 道下美槻(立教大4年)4分26秒68
2023日本学生陸上競技個人選手権大会(神奈川・レモンガススタジアム平塚)の女子1500mで、筑波大学の樫原(かたぎはら)沙紀(4年、呉三津田)がラスト300mほどのスピード勝負を制し、初優勝を飾った。昨年の日本選手権では800mで3位に入りながら、「専門」と位置づけている1500mでは決勝に残った12選手中、12番目だった。今年は1500mでも日本選手権で表彰台に上りたいという思いを秘める。
奏功したラスト300mでの勝負
21日に行われた女子1500m決勝は、スローペースの展開となった。最初400mの入りは72秒。800m、1200mを通過した時点でも、400mトラック1周あたり70秒台のラップが続いた。今夏に中国・成都で行われる「FISUワールドユニバーシティーゲームズ」の派遣標準記録を突破するため、「ファストの展開で行く人が、誰かいるかな」と樫原自身も思っていたという。ただ「去年のこの試合もスローだった」と、どんな展開でも対応できるような心の準備はできていた。
本人が描いていたプランは「フロントに出てレースをするというよりは、勝ちにこだわるイメージをしていました」。決勝は最も内側からスタートすることになり、「インレーンから序盤に出ると、どうしても先頭に立ってしまうことが多いので、そこはできるだけ避けたかったです。アウトレーンだったら行ったかもしれないですけど」。スタート位置を加味した上での判断だった。
序盤は集団の最後方からレースを進める場面も見られた。常に近くには、この種目の日本学生記録・4分12秒72を持つ立教大学の道下美槻(4年、順天)の姿があった。「私がマークしていたというよりは、レース中は道下さんの方が私をマークしている感じがしました。ラスト500mで出てしまうと道下さんもロング系で速いので、負けてしまうと思って」。スパートのタイミングを考えながら走っていた。
どの位置から勝負をかければ、自分の勝利が近づくか。導き出された答えは「ラスト300mで切り替える」。樫原は800mも得意なことから「そこそこスプリントはできる」。最後、道下や環太平洋大学の正司瑠奈(2年、就実)らとのスパート勝負は「自分のフォームを維持してゴールまで走りきることだけを考えて走りました」。右人さし指を突き上げながら、歓喜のフィニッシュとなった。
転機となった主将への立候補
樫原は昨年の日本選手権女子800mで3位になった実績を持つが、今年はメインに据える1500mへの思いが強い。「基本的には1500をメインでやっているので、1500の方で結果を出せる選手になりたいなと思っています」。昨年の日本選手権は800mだけでなく、1500mにも出場した。奇(く)しくも、今回の日本学生個人と同じインレーンで、スタート直後は先頭に立ってレースを引っ張っていた。しかし最終的に決勝へと進んだ選手たちの中では、最も低い順位に終わってしまった。
その後の日本インカレから駅伝シーズンに向けても、新型コロナウイルスの感染が判明するなど、思うような練習が積めなかった。「どんどん一気に体力がなくなって、走れなくなって、『走るのが楽しくないなあ』みたいに思ってしまってたんです」。もう一度奮起するきっかけとなったのが、女子の主将・部全体の副主将に就任したことだった。
陸上部内で行われる主将を決める選挙に、樫原は立候補した。「私のキャラクターがいい意味でも悪い意味でも、結構ポジティブな面が多くて。『チームの中でテンションが高い人が主将をやっていたらチームも盛り上がるんじゃないか』という声も、周りからいただいて」。選出された際は、前任で走り幅跳びを専門とする高良彩花(現・JAL)の姿を見ていたことから「断トツの競技力がある高良さんの後なので、自信がなかったんです」。ただそれも、周囲のサポートを感じると、ポジティブ思考が発揮されるようになった。
「色々とアクションを起こしていかないと」
高良よりも「競技力」の面で欠けていると感じている分、樫原は持ち前の「好奇心旺盛」なメンタルで、それを補おうとしている。「色々とアクションを起こしていかないと、みんなに示しがつかないと思うので、広報の面は私も手伝いながら、盛り上げられるように色々しています」。Instagramやブログに関わることも多く、記事作成やデザインに関わることで「チーム内でもお互いのことを知れるし、応援してくださる方々に、筑波大にはどんな選手がいるのか分かると思うんです」。
競技の面では「背中で引っ張る」ため、出場する大会で結果を残していくことが大事になると考えている。今季の目標は「学生新を出したい気持ちはもちろんありますし、学生の中での一番を取れるのは、今年が最後。日本インカレも狙って、チームを盛り上げられるような走りをしたいです」。9月に予定されている日本インカレで男女総合優勝をつかむため、前を向いて走り続ける。