陸上・駅伝

特集:2023日本学生陸上競技個人選手権大会

個人選手権3000mSC2連覇の早稲田大学・菖蒲敦司「チームのために流れを」

個人選手権で2連覇した菖蒲(131番)。今季は主将として、最上級生としての自覚を持ち上を目指す(すべて撮影・藤井みさ)

2023日本学生陸上競技個人選手権大会 男子3000mSC決勝

4月23日@レモンガススタジアム平塚(神奈川)

1位 菖蒲敦司(早稲田大4年)8分38秒94☆大会新記録  
2位 村尾雄己(順天堂大2年)8分42秒19
3位 花谷そら(福岡大4年)8分45秒92

4月23日の学生個人選手権3日目、男子3000mSCで早稲田大の菖蒲敦司(4年、西京)が8分38秒94の大会新記録で優勝し、昨年の優勝に引き続き2連覇を達成した。だが目標タイムに届かなかったという菖蒲は、うれしさよりもまず悔しさを全面に出した。

 昨年優勝も選出されず「深い傷」

昨年の大会では8分40秒57の大会新記録で優勝し、大会前にはFISUワールドユニバーシティゲームズ(以下、ユニバ)の派遣標準記録も切っていた。しかし、菖蒲は派遣のメンバーには選ばれなかった(のち、大会は今年に延期)。「個人として、世界と戦いたい」という思いで早稲田に入学した菖蒲にとって、あと一歩で届かなかった世界。「本当に、箱根駅伝のメンバーに入れなかったときぐらい悔しかったです。かなり深い傷が残ったという感じでした」。だからこそ今回は派遣標準記録の8分40秒を単に切るのではなく、最低でも8分35秒を切るタイムを出したいと思っていた。

菖蒲のこれまでの勝ちパターンは、終盤で集団を抜け出してラスト1周で先頭を行く選手をとらえるというもの。今回のレースはスローペースでスタートし、2周目から順天堂大の村尾雄己(2年、佐久長聖)が飛び出し、あとは集団となる展開だった。はじめの1000mは2分56秒、次の1000mは2分58秒となり、菖蒲はタイムが出ないと判断して考えを切り替えた。残り1000mを切ったあたりで前を行く村尾をとらえ、ペースアップ。ラスト1000mは2分43秒、最後の1周は65秒台と上げ、苦しい顔になりながらのゴールとなった。

タイムを狙うために、残り1000mを切ったところで前に出た

4月8日の金栗記念1500mに出場し3分49秒52で走り、ここに向けて練習を積もうとしてきたが、「なかなかうまく走れなくて、本当に今日勝てるか心配でした」と明かす菖蒲。「今俺は調子いいんだ、というのを言霊のように自分に言いながらやってきて、悪いなりには最後動かせたかなと思います」という。

今後上を目指し、シニアや世界の舞台で戦うには、これまでのようなスローの展開からラスト上げる、というだけでは戦えない。はじめからある程度速いペースで突っ込んだ上で、さらにラストスパートを効かせないと勝てないと考えている。「そこは花田さん(花田勝彦監督)と一緒に頑張っていかないなといけないなと思っています」。一方、ラストのキレに関しては先日の金栗記念である程度「戦える」という手応えを得た。

チーム内には石塚陽士(3年、早稲田実業)、伊藤大志(3年、佐久長聖)、山口智規(2年、学法石川)といった学生トップレベルの選手がいる。「彼らと一緒に練習をすることで、速いペースで押せる力をつけていかないといけないと考えています」

「いい流れを断ち切りたくない」上向きのチーム状態

今季、駅伝主将を務める菖蒲。「去年は特にトラックシーズンでいえば『自分のためのトラックシーズン』という思いだったんですけど、今年はやっぱりチーム全体で結果を出さないと面白くないと言うか、そっちのほうが何十倍も面白いし楽しいので。最近は本当にチームのために、流れを作るという意味も込めて頑張れています」と心境の変化を語る。「今日のラストもそうですし、本当に一人のためじゃなくて『みんなで頑張るぞ』っていうのはタイムにも現れていると思います」

実際、箱根駅伝後に早稲田の選手の活躍が目立つ。2月の丸亀ハーフマラソンでは伊藤が1時間1分50秒、菖蒲が1時間2分00秒で自己ベスト。延岡西日本マラソンでは佐藤航希(4年、宮崎日大)が2時間11分13秒で優勝を飾った。また、山口は1500m、3000m、5000mで自己ベストを更新している。さらにこのレースの前日には、NITTAIDAI Challenge Gamesの10000mで石塚が27分58秒53をマークした。

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シニアレベル、そして世界で戦うためには序盤のスピード強化も課題となる

「チーム早稲田で頑張ってずっといい流れで来られていて、昨日の石塚でさらにブーストがかかったというか。より頑張らなきゃって思いはありました。失敗できないというか流れを切れないという意識もたぶんチームの中であると思うので、僕も流れを切らずに優勝できてよかったと思います」

シニアのレベルで勝負し、世界へ

去年、菖蒲は個人選手権と関東インカレの3000mSCで優勝したが、他の選手の成績が続かず「僕一人が突っ走ってたような感じでした」。だが、今回は菖蒲が中心というよりは、他の選手に引っ張ってもらっているような雰囲気を感じるという。「今年はすごくいい流れかなと思っています」と口にする。

同郷・山口県出身の同級生花谷(右)と、西京高校の後輩・山口(中心)と記念撮影

キャプテンとして、最上級生として一番上の立場になったので、「失敗できない、自分が頑張らないと」という思いがより強くなったという菖蒲。今後は今週末の早稲田記録会で5000mのペースメーカーを務め、次は関東インカレで3000mSCに出場する予定だ。さらに選出されれば、セイコーゴールデングランプリに出場し、シニアのレベルで勝負したいとも考えている。そして試合後の25日、正式にユニバの内定が決まった。チーム全員で作るいい流れを、このまま続けていきたい。

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