水泳

特集:うちの大学、ここに注目 2023

法政大学・三井愛梨 入学式直後に世界選手権代表内定 パリオリンピック狙うルーキー

三井の活躍には今後も目が離せない(すべて撮影・佐々木雪乃)

日本水泳界に新たなヒロインが誕生した。4月4日から6日間にわたって東京アクアティクスセンターで行われた日本選手権で、法政大学の三井愛梨(1年、桐蔭学園/横浜サクラ)が100mと200mのバタフライに出場。大会3日目の200mバタフライで自己ベストを更新する泳ぎで優勝し、今年7月福岡で開催される世界選手権の代表に内定した。昨年12月に行われた世界短水路選手権に続く代表入りとなった。

200mバタフライで後半に持ち味を発揮

開幕前日に入学式を終えたばかりのルーキーは、並々ならぬ自信と覚悟で今大会に挑んだ。昨年8月にアメリカ・ハワイで行われたジュニアパン・パシフィック水泳で100mバタフライ2位、200mバタフライで優勝。また12月にオーストラリア・メルボルンで開催された世界短水路選手権には、シニア代表として初めて日本代表に選出され、200mバタフライで6位入賞を収めた。ただ長水路でのシニア代表経験がない三井にとって、今大会で長水路の代表権を獲得することは来年のパリオリンピック出場へ向けた至上命題だった。強い思いを持って臨んだ彼女の2日間の戦いを振り返る。

大会1日目は100mバタフライに登場。「決勝進出とベストタイム更新」を掲げて挑んだ。全体の6位で予選を通過して決勝へ。7位入賞とはなったものの、目標としていた自己ベストの更新とはならなかった。しかし、三井本人は「日本選手権の前に行っていた直前合宿の時から調子が良く、100mバタフライを泳いだ時にもそこそこの手応えがあった」と自身の体調の良さを改めて感じたという。

そして状態を保ったまま迎えた大会3日目の200mバタフライ。予選を危なげなく1位で通過して決勝に進んだ。

自らの持ち味を存分に発揮したレースとなった

前半の100mを1分01秒76の全体5位で折り返すと、ここからギアを一気に上げた。三井が持ち味とする後半の追い上げに入り、100mから150mにかけて前にいる4人を一気にかわし、先頭へ。後続に0.3秒ほどのリードをつけて、最後のターン。ラスト50m勝負は追ってきた5レーンの牧野紘子(あいおいニッセイ同和損保)との一騎打ちを体半分の差で制して先頭でフィニッシュした。世界選手権代表の座を手繰り寄せた瞬間だった。

「あぁ足りなかったなぁ」と思っていたら……

フィニッシュ直後、電光掲示板でタイムを確認すると驚いた表情を見せ、隣を泳いでいた牧野と言葉を交わしていた。レース後、三井本人に尋ねると「ゴールした瞬間まず電光掲示板を見た時に、5レーンのタイム(2分07秒45)見てしまって(笑)。ベストではあったんですけど自分の目標としていたタイムには届いていなくて、『あぁ足りなかったなぁ』と思っていたら、隣のレーンから牧野さんが「おめでとう!」と声をかけてくださって、それでもう1度掲示板を確認したら自分のタイムが2分06秒77で驚いた」と激闘の舞台裏を語ってくれた。

フィニッシュ直後、牧野と健闘をたたえ合った

表彰台のてっぺんに立った彼女の顔は、代表入りへの強い気持ちを持って挑んだ大舞台で結果を残したことに対する充実感と安心感であふれていた。インタビューで「200mバタフライは絶対に代表入りすることに加え、優勝して代表権を獲得すること、タイムは2分6秒台を出すことを目標としていた」という強気の言葉の残した通り、自己ベストで優勝し世界選手権の代表に内定。有言実行の泳ぎだった。

充実した表情で表彰台に上がった

来年のパリオリンピックを見据え

22年ぶりの自国開催となる7月の世界選手権に向けて、「最初の100mを1分1秒台前半で入ることを目標にしてタイムを縮めていくことで、自分の持ち味である後半の泳ぎをもっと生かせるようにしていきたい」と意気込みを語った三井。世界のトップスイマーたちと戦うため、残りの期間でやるべきことはわかっている。2024年のパリオリンピック出場を見据える彼女にとって、今回の世界選手権はあくまで通過点に過ぎないだろう。「自己ベストを更新することはもちろんで、そのうえで予選、準決勝、決勝と3本のレースを泳ぐ」。新進気鋭のルーキーは世界選手権での「決勝進出」をターゲットに定め、次なる大舞台での飛躍を誓った。

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