陸上・駅伝

特集:第55回全日本大学駅伝

東京国際大が5大会連続伊勢路 白井勇佑、大志田秀次氏からの「エースになれ」を胸に

チームのエースになることが期待される東京国際大の白井(撮影・井上翔太)

第55回全日本大学駅伝対校選手権大会 関東地区選考会

6月17日@相模原ギオンスタジアム(神奈川)
1位 城西大学   3時間57分35秒40
2位 大東文化大学 3時間57分50秒77
3位 東海大学   3時間57分58秒89
4位 東京国際大学 3時間59分02秒86 
5位 東京農業大学 3時間59分20秒68
6位 帝京大学   3時間59分34秒06
7位 国士舘大学  3時間59分45秒19
----------ここまで本戦出場------------
8位 立教大学   3時間59分59秒49
9位 神奈川大学  4時間00分07秒27
10位 明治大学   4時間00分20秒02

6月17日に開催された第55回全日本大学駅伝関東地区選考会で、東京国際大学が5大会連続5回目となる本戦への切符をつかんだ。昨シーズンは全日本と箱根駅伝でシード権を獲得できず、2011年の創部からチームの指導にあたっていた大志田秀次氏(現・Honda陸上競技部エグゼクティブアドバイザー)が退任。チーム内にも衝撃が広がった。再び伊勢路で襷(たすき)をつなげることができ、ここから新たな歴史を紡ぐ。

1組目に主将が登場、幸先いいスタート

1組目は主将の生田琉海(4年、徳島科学技術)と菅野裕二郎(2年、学法石川)が出走。2人は終始、お互いが見える位置で走っていた。蒸し暑い気候の中、レースは1km3分04秒前後のペースで進んだ。7000mを過ぎたところで集団が徐々に縦長になっても、2人は並走。最後は城西大学の林晃耀(3年、いわき総合)がラストスパート勝負を制し、生田は組7着、菅野は組8着で幸先のいいスタートを切った。

「欲を言えば、もうちょっと前へ行きたかったんですけど、最低限の仕事は果たせたんじゃないかと思います」と生田。レース展開は「牽制(けんせい)し合うだろう」と予想しており、「風もあったので絶対に前には出ずに、初めは最後尾でもいいと思っていました。終盤まではとりあえずついていって、余力があれば出ようと。記録のことは考えず、レースの展開に対応できるようにしていました」と振り返った。

1組目を走った生田(5番)と菅野(25番)はゴール後、握手を交わした(撮影・藤井みさ)

3組目を終えボーダー、最終組で留学生が力を発揮

生田は2組目以降の戦略も、明かしてくれた。「2組は(他校に)留学生がいるので、そこに対応できる選手を入れています。3、4組目は持ちタイムが速い選手で固めているので、順位とタイムを狙っていきます」

ただ、2組目を走った白井勇佑(3年、仙台育英)は、出場したチーム内の日本選手の中では、最も早い28分27秒45の持ちタイムを持っていた。「本当は自分が4組目を走らないといけないんですけど、2組目に置かれて『エースとして活躍できない分、チームに貢献できるようにしないと』と思っていました。『絶対に失敗できない』という責任感もありました」と、最近は本来の実力を発揮できていない自身へのふがいなさを少しばかり感じながら、臨んだ。

レースは大東文化大学のピーター・ワンジル(3年、仙台育英)が独走。2着以下を周回遅れにした。白井は8000mを過ぎたところで前に出て行こうと考えていたが、あまりのスローペースに「みんな余裕がありそうで、ラスト勝負になると自分の状態的にも厳しい」と早めに仕掛けた。ただ、ワンジルの独走が影響し「1周、間違えました」。城西大学勢や東海大学勢にかわされ、組7着。「反省点が多いレースでした」と語る一方、関東インカレ男子2部10000mでは組の最下位に沈んだ悔しさから少し立て直し「最後にレースを動かすこともできたので、50点ぐらい」と自己評価をつけた。

2組を終えた時点で、東京国際大は全体の4位。3組目は森春樹(2年、北海道栄)が組19着、副将の楠木悠人(3年、小林)が組30着で、ボーダーラインの7位まで落としたが、最終4組目は留学生の力が大きかった。アモス・ベット(1年、イテン ミックスデイ)が27分59秒45で走りきり、チームは4位で本戦出場を決めた。

個人の全体トップでフィニッシュしたアモス・ベット(撮影・井上翔太)

白井勇佑「落ち込んでいるようじゃ、エースになれない」

昨シーズンは日本人エースの丹所健(現・Honda)や最強留学生と呼ばれたイェゴン・ヴィンセント(現・Honda)といった強力な選手たちを擁したが、全日本でも箱根でもシード権を獲得できなかった。チームの立ち上げからここまで育ててきた大志田氏が退任し、いまは再建が迫られている。

新体制となり、特に競技への向き合い方が変わったのが白井だ。「大志田さんからは『チームのエースになれ』と送り出してもらいました。ずっと大志田さんに練習を見ていただいていたので、監督が代わって最初は不安が大きかったです。でも、そこで落ち込んでいるようじゃ、エースにはなれない。その言葉の意味を考えて、練習しないといけないと思っています」

これまでは丹所ら、先輩たちに頼る部分もあり「自分が失敗しても、何とか取り返してくれる」という気持ちがあったと明かす。ただ、今季は「自分がそういった存在にならないといけない」と白井。「今は失敗続きですけど、駅伝シーズンではチームのエースとしての走りができるようにしたい」

白井は駅伝シーズンに向けて頼られる存在になることを誓う(撮影・井上翔太)

実際、昨シーズンまでとはチーム内の雰囲気も異なるようだ。主将の生田は全選手が競技に取り組みやすい環境づくりに心を砕くだけでなく、「日頃の行い、生活面についても今年は少し厳しく言ってます。そういうところが今回の『粘り』につながっているんじゃないかと思います」。

2021年の出雲駅伝を制し、大学駅伝界にも影響を与えた新興校の「第2章」が幕を開けた。

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