慶應義塾大・外丸東眞 雪辱果たした早慶戦 初完封で示した2年生エースの進化
東京六大学野球春季リーグは5月30日、3回戦までもつれた早慶戦で幕を閉じた。慶大が1-0で接戦を制した一戦で注目を集めたのが、リーグ戦初完封を飾った外丸東眞(そとまる・あずま、2年、前橋育英)だ。昨年の春、1年生ながら堂々と慶大のマウンドに立ち、勢いのある球でチームを勝利へ導いた「若き血」の持ち主。この春は、初完封を含めて防御率1.37の好成績を残し、慶大のエースへと飛躍した。
1回もたずに降板 糧となった昨秋の早慶戦
前橋育英高校時代、エースとして夏の甲子園出場の原動力となった外丸は、入学時から期待を寄せられていた。昨年の春季リーグ戦では、2試合目の東大2回戦からマウンドに立った。九回に登板し、2者連続で四球を与えたものの三振で切り抜け、無失点でデビュー戦を飾った。その後は先発を任され、登板試合は少ないものの唯一の1年生投手として防御率2.45の好成績を収めた。
秋季リーグ戦では第2先発として起用されたが、5試合で3敗を喫し、悔しい登板が続いた。大舞台の早大2回戦では、先発したものの4点を失い、1回を持たず降板。このときの悔しさを、今春の早慶戦での完封勝利につなげた。
オフに下半身を強化 直球は最速148キロに
昨秋のリベンジを果たした成長の裏には、オフシーズンに積み重ねた努力があった。2月から3月にあった鹿児島キャンプで更なる成長を見せた。ウェートトレーニングを軸に下半身を強化したことで体重も増え、ストレートは最速148キロまで上がった。ファウルを取れるようになり、積極的に勝負できるようになったという。
そして迎えた今春の開幕戦。慶大の先発マウンドに立ったのは、新エースとなった外丸だった。開幕戦を勝利で飾ることはできなかったものの、今春は、エースとして申し分のない活躍をみせた。
「持ち味のコントロールを生かすことができ、シーズンを通して安定したピッチングができたと思います。法政戦は、自分の思うようなピッチングができませんでしたが、明治戦から修正することができたと思います」
1敗1分けで迎えた明大3回戦で先発した外丸は、4回を投げて4奪三振。2失点したものの、チームは七回からの反撃で逆転勝利を収め、この春のリーグ戦で唯一、明大から勝利を挙げた。
その翌日の明大4回戦。2日続けて先発マウンドに上がると、序盤から140キロ超の直球で明大の上位打線を圧倒し、5回を4安打無失点に抑えた。
2連投から4日後の東大1回戦では、5回まで東大打線をノーヒットに抑え、7回3安打5奪三振1失点で初勝利を挙げた。
立大3回戦でも、8回4安打7奪三振2失点の好投で勝利を呼び込み、早大3回戦で文句のつけようのない快投を披露した。最後は九回2死三塁のピンチを迎えたが、144キロの直球で27個目のアウトを取ると、力強く右拳を握った。
外丸は試合後、「一球一球、丁寧に投げることができたと思います。ストライク先行で、打たせて取るイメージで投げました」と振り返り、「負ければ勝ち点を落としてしまうという責任も感じていたので勝つことができてよかったです。試合後にはチームのみんなが駆け寄ってくれたので本当にうれしかったです」と話した。
「大学野球を代表する投手に」
登板した11試合中9試合で先発し、勝ち星には恵まれなかったものの昨秋の4倍となる計40三振を奪うなど、誰もが認める慶大のエースとなった。
「春のリーグでは、目標としていた優勝を達成することができなかったので、秋は優勝できるように全員で頑張りたいと思います」と、外丸は意気込む。
大学野球を経験して1年余り。今後について、「大学野球を代表するピッチャーになりたいと思っています。成長しなければいけない部分がたくさんあるので、練習して六大学だけではなく、大学野球を代表するようなピッチャーになりたいと思います」と、エースとしての自覚を見せる。
神宮球場に鳴り響く「若き血」で彩られた慶大のマウンドで、外丸はさらなる成長に挑み、新たな戦いに臨む。大学野球界を牽引(けんいん)する存在として輝き始めた若きエースから目が離せない。