創価大学は吉田響・吉田凌コンビに、下級生の力融合させ箱根駅伝「総合3位以内」狙う
箱根駅伝のシード権を4年連続で獲得している創価大学は12月19日、第100回大会に向けた壮行会をオンラインで行い、榎木和貴監督をはじめ、主力選手たちが意気込みを語った。
取り組んできた「スピード」発揮し、出雲駅伝準優勝
今季はスローガンに「創・攻・主~ゼロからの挑戦~」を掲げ、チームの土台から作り直してきた。連続シード権獲得に大きく貢献してきた柱の嶋津雄大(現・GMOアスリーツ)、葛西潤(現・旭化成)、フィリップ・ムルワ(現・GMOアスリーツ)らが卒業し、主力メンバーの顔ぶれはガラリと変化。シーズン前は大きな戦力ダウンを心配する向きもあったが、秋から新時代の到来を予感させる強さを見せている。
10月の出雲駅伝は、成長を感じさせるチーム初の準優勝だった。課題として取り組んできたスピードを存分に発揮。6区間45.1kmと学生3大駅伝では最も短い距離の中、かつての弱みを強みに変える襷(たすき)リレーを披露した。11月の全日本大学駅伝(伊勢路)では序盤こそ出遅れたものの、中盤から流れを変えて、意地の6位入賞。榎木監督は、確かな手応えを得ている。
「箱根に向けて、上昇気流に乗っています。このチーム力を持って、総合3位以上の目標を達成できるように全力で臨んでいきたいです」
5区濃厚の吉田響「最低でも69分台を」
今のチームが発足した当初は、大黒柱と呼べる存在がいなかった。ただ、今年4月に東海大学から編入してきた3年生の働きぶりに指揮官は目を細める。「吉田響(東海大静岡翔洋)の存在は大きいです。エースになるべく、存在感ある走りを見せてくれている」
往路優勝を狙う上でのキーマンにも挙げる。出雲路は5区で区間賞、伊勢路でも5区を任され、従来の区間記録を塗り替え区間賞。駅伝でゲームチェンジャーとしての役割を果たし、箱根路ではさらなる期待が寄せられている。
「5区に山のスペシャリストを置けるのが一番の強みです」
絶大な信頼を得ている吉田響は、新天地で水を得た魚のようにロードを駆けている。青と赤の新鮮な襷をつなぐときには仲間に大きな声をかけ、終始笑顔をのぞかせる。前年の冬から春までブランクをつくったのが、まるでウソのよう。夏合宿では月間1000kmを走破し、その練習の成果が早速出ている。東海大時代に悩まされてきた故障もなく、万全の状態で大一番を迎えられそうだ。
1年時には5区で区間2位と好走しており、実績も十分である。かつて青山学院大学の神野大地(現・セルソース)が山を駆け上がる姿に感銘を受け、憧れを抱き続けてきた区間。山上りには並々ならぬ意欲を示す。
「最低でも69分台を狙います(区間記録は70分04秒)。区間新のタイムでチームに貢献したいです。山上りは気持ちが大事。どんなきついときも歯を食いしばって坂を上れるかどうか」。一度は消えかけた陸上の熱を取り戻させてくれた創価大への感謝の気持ちも強い。「山区間では3分差、5分差でもひっくり返せます。箱根でも結果で恩返しがしたい」
2人のライバル・小暮栄輝が疲労骨折から復帰
エネルギーが満ちあふれている新戦力に触発されているのが、同期の吉田凌(学法石川)だ。伊勢路を走り終えた後も「響がいるから僕も成長できている」と顔をほころばせていた。公私ともに仲が良く、練習から切磋琢磨(せっさたくま)しているという。出雲路では吉田響から襷を受け、アンカーとして準優勝のフィニッシュテープを切ったことは自信になっている。
「出雲では初めてアンカーを務めました。最終順位を決める重要な区間でプレッシャーもかかりましたが、自分の力を100%出せました」
主力としての自覚も芽生えてきた。1年時の箱根駅伝は8区で出走。自身2大会ぶりとなる今回も復路の後半区間を希望している。「今はチームを引っ張る責任感があります。120%の力を出したいと思います」
秋からの駅伝シーズンで目を引く活躍を見せる「吉田コンビ」に対抗心を燃やす、もう一人の3年生がいる。9月の日本インカレ10000mで日本選手2位と実力をアピールした小暮栄輝(樹徳)だ。出雲と全日本は、足の甲の疲労骨折で欠場。出走できない悔しさをぐっとかみ殺し、箱根だけに照準を合わせてきた。
「故障した原因を分析し、足りない筋力を強化してきました。ハーフを意識して、距離も踏んできました。実力は吉田響、吉田凌の2人にも劣らないと思っています。2人とも意識している存在なので。良いライバル関係で競い合っています」
小暮が志願するのは、1年時からイメージしてきた3区で、目指すのは区間5位以内。持ち前のスピードを生かし、戸塚から平塚まで下り基調の21.4kmを一気に駆け抜けるつもりだ。
出雲区間賞の山森龍暁「4年生としての走りを」
12月の強化合宿でもエントリーメンバー16人は、すこぶる調子がいい。前年度は大会直前、主力に故障者が出て総合8位。苦い経験をしたことで、調整には万全を期し、榎木監督の表情には自信がにじむ。「前年度と比べても、はるかに内容がいいです。16人のメンバーのうち5人は1年生。チームに良い刺激を与えています。1年生の突き上げが、上級生を引き締めている」
ルーキーでは出雲2区で区間5位となった小池莉希(佐久長聖)をはじめ、全日本1区で区間4位と大健闘した織橋巧(中京)、7区では留学生のスティーブン・ムチーニ(ミクユニ)が区間4位とそれぞれ結果を残しており、すでに貴重な戦力となっている。
最上級生たちも下級生の台頭をひしひしと感じているようだ。出雲の4区で区間賞を獲得した山森龍暁(4年、鯖江)は、冷静にチーム状況を分析していた。「昨年度は4年生に支えられていましたが、今年度は1年生、2年生に勢いがあります」
それでも、最終学年としての意地とプライドは持っている。後輩の成長が発奮材料となり、春先から自己ベストを次々と更新。4月に10000mで28分27秒21、6月はハーフマラソンで1時間3分15秒、9月には5000mで13分49秒59をマークしている。最後の箱根では、チームを牽引(けんいん)することを誓う。
「4年生としての走りをする。どのような流れでも良い状況に持ってきます。区間3位以内を狙います」
高い目標に挑むだけの戦力は整っている。ゼロから積み上げて大きくなったチームは、いよいよ最後の大舞台に臨む。