大分東明高・奥本菜瑠海 興譲館高から転校後、走れなかったときに芽生えた心境の変化
U20日本陸上競技選手権クロスカントリー競走 女子6km
優勝 奥本菜瑠海(大分東明高3年)20分16秒
2位 下森美咲(北九州市立高3年) 20分22秒
3位 村上美優(成田高1年) 20分23秒
4位 池田悠音(立命館宇治高3年) 20分24秒
5位 石川桜子(豊田大谷高3年) 20分24秒
6位 細川あおい(仙台育英高2年) 20分25秒
7位 湯田和未(学法石川高1年) 20分27秒
8位 水本佳菜(エディオン) 20分28秒
2月25日に福岡市の海の中道海浜公園で開催された第39回U20日本陸上競技選手権クロスカントリーの女子6kmで、大分東明高校3年の奥本菜瑠海が優勝を果たした。興譲館高校(岡山)で競技力を磨きながら、3年になるときに転校。卒業後は実業団の日立に進み、トップ選手をめざす。
スタート直後から飛び出し、独走態勢に
「最初から前に出て逃げ切る予定でした」と振り返る通り、奥本は126選手が一斉にスタートした直後から積極的に仕掛けた。最初の直線から高低差6mの坂を駆け上るところで、早くも先頭に。アップダウンがある1周2kmのコースを3周するレースで、1周目から後続との差をぐんぐんと広げた。
「後ろとの距離が怖くて、気はずっと抜けなかったです」。約30mつけた2位集団との差は、2周目に入ってもなかなか縮まらない。むしろ広がり、奥本は独走状態を築いた。周回コースの最後に待ち受ける三つのこぶを越えたところで、やや疲れも見られたが、最後まで力強い足取りで右腕を突き上げながらフィニッシュ。2位に入った北九州市立高校3年の下森美咲に、6秒先着した。
「今までは、最初に飛び出すと中間でタイムが落ちすぎて、前に出られたり、最後に抜かれて負けてしまったりすることが多かったんですけど、今回はあまり中間タイムが落ちすぎず、勝ちきるレースをすることができました。後ろのプレッシャーがある中で、頑張れたかなと思います」
前回は3位、成長を示した1年
奥本は前年、このレースで悔しい思いをした。今回と同様、スタート直後から先頭でレースを進めた。ただ後続を大きく引き離すことはできず、1周目の序盤は4人の先頭集団を形成。2周目も先頭で5人の集団を引っ張る形となった。
レースが動いたのはラスト1周終盤の三つのこぶ。奥本が最初に仕掛けたが、最後の直線で長野東高校の名和夏乃子(現3年)と筑紫女学園高校(福岡)の松本明莉(現・積水化学)にかわされ、フィニッシュすると、その場に倒れ込んだ。
雪辱を誓った今回は、「去年が3位という悔しい結果で終わってしまって、最後に差されてしまったのでとてもうれしいです」。結果だけでなく、そこに至るまでの過程やレース内容でも1年前からの成長を示した。
けがとインフルで離脱中、支えてくれた周囲
昨年の全国高校駅伝(都大路)女子で大分東明高校の1区を任され、区間賞を獲得した姿は記憶に新しい。都大路には3年連続で1区を走っているものの、1、2年時は岡山の強豪・興譲館高校のユニホームを着て走っていた。3年目は弟が大分東明に進むことに合わせる形で転校。家族と一緒に引っ越した。
1年生の頃は「自分のタイム目標に集中して競技をしていた」と言うが、3年生になると心境の変化が生まれた。「いろんな人に出会って、支えてもらって、応援してくれる人に感謝を伝えるための走りという部分を意識しました」。昨年4月に足首を故障。5月にはインフルエンザに感染し、1カ月間ほど走ることはおろか、バイクトレーニングをすることもできなかった。「ゼロからのスタート」を余儀なくされた中でも、指導者は練習メニューを作ってくれ、両親やチームメートも支えてくれた。「そのおかげで今の自分があると思っています」
卒業後は実業団の日立に就職する。決め手は「関東のチームでいくつか合宿に参加させていただいた中で、チームの方々との相性が良かった」から。まだ専門種目を決めておらず「最初は5000mから。ちょっとずつ距離を伸ばしていって、最終的に自分がやりたい種目を見つけられたらいいなと思っています」。
今回のレース結果で3月末にセルビア・ベオグラードで開催される世界クロスカントリー選手権への出場が決まった。「自分自身の力が世界でどれぐらい通用するのか、自分らしく攻めていきたい」と奥本。将来の目標に据えている「オリンピックで金メダル」のため、初めての世界大会で力試しに挑む。