アメフト

日本大学QB小林伸光 U20日本代表初選出、ブランク感じさせぬプレーで初優勝を

走る、投げる、の切れ味が天下逸品の輝きだ(すべて撮影・北川直樹)

6月22日、カナダのエドモントンで、アメリカンフットボールのU20世界選手権が開幕する。7カ国が参加する今大会は、2018年のU19大会以来のユース世界選手権となる。代表メンバーには、米国の大学に所属する2人、高校生4人を含む45人が選ばれた。 代表チームは、6月8日と9日に関西学院大のグラウンドで練習を行い、試合に向けた準備を行った。今大会には、去る12月に廃部となった日本大学旧アメフト部の学生も5人選ばれた。攻撃の司令塔・エースQBは、昨春日大フェニックスのルーキーとして活躍が著しかった小林伸光(のぶあき、佼成学園)が務める。

廃部で試合できず「U20世界選手権が大きな目標」

強気で正確なパスに、思い切りの良いラン。QB小林のプレーは、ブランクを全く感じさせなかった。

代表練習初日となる8日の練習では、ウォークスルー練習を経て、実戦形式のスクリメージなど、今大会に向けて用意された多くのプレーを確認した。

「レベルが高い選手がそろっているので、そういう中で練習ができたことはとても楽しかったです」。小林は、初日の練習をこう振り返った。

中央大学・小林宏充と日本大学・小林伸光 唯一在籍が重なる1年、兄弟対決が実現

2月に日本協会から大会トライアウトのリリースが出ると、自然に日大の仲間うちで応募する流れができたという。

佼成学園の同期、RB蓑部雄望(左、立命館)は「ノブの隣は高校のときと同じでやりやすかったです」と、“横並び”を振り返った

「U20とはいえ日本代表として戦うので、しっかりと日本を背負って戦いたいです。日大の復興に向けても、僕らが活躍することが大きなきっかけになると思っていて、少しでもアピールできたら」

日大旧アメフト部の部員たちは、この春に件の不祥事に無関係と認定された選手で「有志の会」を結成した。現在は4月に監督代行に着任した須永恭通(たかゆき、前中央大ヘッドコーチ)さんとともに、部活動への昇格をめざして練習を行っている。ただし、関東学生連盟には加盟していないため、リーグ戦には参加できない。対外チームとの練習試合等についても、見通しが立っていない状況だという。

そんな中でも小林は、「僕にとってこの大会は大きな目標になっていました。今のモチベーションは高いです」と、まっすぐな目で話した。

「やっぱ日大でフットボールがしたい」

昨年夏に部の活動が停止となってからは、ウェートトレーニングを自主的に行い、体力づくりを行ってきた。また、母校・佼成学園にコーチとして戻り、一緒に練習することで感覚が鈍らないよう努めた。

昨年12月の高校選手権クリスマスボウルでは、サイドラインでコーチとして後輩を支えた

しかし、その後も日大アメフト部は、見通しの立たない膠着(こうちゃく)状態がつづいた。そして年末、急転直下で廃部が決まる。時期的にも、転校や受験をし直すのは現実的ではなく、事件に無関係だった仲間たちは、日大に残るという選択肢を選んだ。

廃部を機にチームを去った者もいたが、下級生を中心に、現在は70人ほどがチームで活動しているという。

小林は言う。「僕らはやっぱ、日大でフットボールをしたくて入ってきたので。そういう考え(転校など)にはならなかったですね。今は希望は見えてますが、これからどうなるかはわからないです。自分たちがやるべきことを、しっかりとやっていくだけです」

出口見えぬなか、社会人から気遣いも

このような厳しい状況下で、手を差し伸べてくれたチームもあった。社会人Xリーグ、X1Superに所属するオリエンタルバイオシルバースターから誘いを受けて、小林を含め10人ほどが練習に合流。対外試合でも、出場の機会をもらった。

「多くの大人の方たちが気を遣ってくれて。本当にお世話になりました」。小林は感謝の気持ちを口にした。

いまは部の立ち上げに向けて皆で話しあい、目標を全員ですり合わせながら、練習に取り組んでいる。一切のめどは立っていないが、「プラスのイメージを持ってやれています」と小林は今の気持ちを表現した。

同世代の代表チームメートと、綿密にコミュニケーションをとりながらプレーを確認した

初優勝の先に、部と自分の未来を求めて

近年は新型コロナウイルスの影響で国際試合の機会が減っていたため、小林は初めての日本代表入りとなる。今大会は、約1週間で3試合が行われるタイトなスケジュール。ハードな展開も想定されるが、見据えているのは、もちろんユース世界選手権での初優勝だ。

「今日の練習でも、まあ思うようにやれてるかなっていう手応えはあります。でも(実戦の)間隔が空いてるので、見えてない部分があったりして、腕は少し落ちてるかなと思います」。小林は練習の感触を振り返った。

それでも、今大会でワイドユニットのコーチを務める、高田鉄男コーチ(パナソニック、元日本代表QB)は小林のことを高く評価している。

「見てる感じ、ブランクなんて無いですよ! 彼の良いところは、持ってる能力をしっかり発揮できるところですね。俺だったら投げないってタイミングでも、積極的に投げて決める力を持っているんで、それはすごく良い味やなと思います。自分に無いものを持ってるので、結構感心してます。海外の大きい選手らと対戦するので、真っ向勝負だと厳しい局面もあるとは思います。そんな中で色んなことを経験して、それを自分なりに消化していくことが、今後の糧に間違いなくなるので。色々学んでくれたらいいなと思います」

小林に、今描いている目標を聞いた。「まだそんなに、具体的に何かになりたいとかはないんですが。アメフトは社会人になってもやると思います。ずっと関わっていきたいですね。これが今見える段階で、現実的な目標ですかね」

初優勝の先に、希望を見いだす。

日本代表のエースQBとして活躍した高田鉄男コーチ(右)も、小林の能力を絶賛していた

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