陸上・駅伝

9年ぶり全日本大学女子駅伝優勝の立命館大 勝てない間も念頭に置いた「優勝」が結実

優勝タイム「2時間03分03秒」の計時に集まり記念撮影する立命館大学の選手たち(すべて撮影・井上翔太)

第42回全日本大学女子駅伝対校選手権大会

10月27日@弘進ゴムアスリートパーク仙台発着の6区間38km

優勝  立命館大学  2時間03分03秒
2位 大東文化大学 2時間04分06秒
3位 城西大学   2時間05分41秒
4位 名城大学   2時間06分02秒
5位 東北福祉大学 2時間06分23秒
6位 大阪学院大学 2時間06分43秒
7位 拓殖大学   2時間06分48秒
8位 筑波大学   2時間08分10秒

10月27日に開催された第42回全日本大学女子駅伝で、立命館大学が9年ぶり11度目となる優勝を飾った。入学後は名城大学にその座を阻まれ続けた選手たち。昨年は「攻めのオーダー」だったが、今年はそこに「粘り」も加わっての栄冠だった。

【写真】全日本大学女子駅伝、全26チームのフィニッシュシーン 最高順位更新も!

1~3区で区間記録を更新

「前半の4区間で、なるべくたくさんのリードを広げて、後半は粘りに粘って、最後にトップでゴールするというのが今回の戦略でした」。杉村憲一監督はレース後、区間配置の狙いについて、そう明かした。

日本インカレ女子10000mで2位に入った大東文化大学の野田真理耶(2年、北九州市立)や同3位の大阪学院大学・永長里緒(4年、筑紫女学園)ら、各チームの主力選手が集まった1区。立命館大は太田咲雪(2年、立命館宇治)が担った。4km過ぎで先頭集団は8人となり、ここから名城大の米澤奈々香(3年、仙台育英)が遅れ出す。5~6kmにかけて区間賞争いは野田、永長、太田の3人に絞られ、野田がトップで襷(たすき)をつないだ。太田は2秒先着を許したが、3番の永長までが区間新記録。1区からハイレベルだった。

1区から名城大の米澤、大東文化大の野田、大阪学院大の永長と有力ランナーがそろった

2区はルーキーの山本釉未(1年、立命館宇治)。7月のホクレン・ディスタンスチャレンジ千歳大会で5000m15分37秒38の好タイムを出し、8月末にペルーで開催されたU20世界選手権にも出場した実力者だ。「これからも抜かれない区間新記録を作りたいと思っていた」という強気の言葉通り、大東文化大に追いつき、引き離した。昨年、太田がマークした区間新を14秒塗り替え、3区で待つ主将の村松灯(4年、立命館宇治)へ。2位の大東文化大とは20秒差をつけた。

村松は、立命館大の過去の先輩たちが全日本大学駅伝や富士山女子駅伝で連覇している姿をテレビで見て、憧れて入学した。チームが全日本で5連覇を果たしたとき、村松は小学3年から中学1年。第1回富士山女子駅伝から5連覇を果たしたときは、小学5年から中学3年。ただ、入学してからは「立命館に来たから優勝できるわけじゃない」ことを思い知った。「1年1年、やりきる覚悟があってこそ優勝できる」。その気持ちを走りで示した。1、2区に続き、3区でも区間新を樹立。2位以下に1分以上の差をつけて、後半区間に入った。

表彰式で優勝旗を受け取る主将の村松

中地こころ「チームが稼いでくれた差を私が守る」

レース全体を通して、最も大きなポイントになったのが最長区間(9.2km)の5区だ。注目選手は関東インカレ女子1部10000mと5000mで「二冠」を果たし、学生個人選手権5000mと日本インカレの5000mも制した大東文化大のサラ・ワンジル(2年、帝京長岡)。外園隆監督は「優勝はサラ・ワンジルの走り次第。サラ・ワンジルでトップに立てなければ優勝の可能性は低くなる。できれば30秒以内で(襷を)渡してほしい」と話していた。

対する立命館大は4区のルーキー池田悠音(1年、立命館宇治)が区間3位で粘り、5区の中地こころ(4年、立命館宇治)へ。2位の城西大学は56秒差、サラ・ワンジルは1分1秒差でスタートした。

最長区間の5区を走った中地(中央)はリードを守り切った

中地にとっては大学1年以来の5区。「チームが稼いでくれた差を私が絶対に守る」という覚悟を持って、後ろからサラ・ワンジルが迫ってきていることを沿道の声援から感じながら、逃げ続けた。その声援は、中地の力にもなった。「立命頑張れ!だったり、私の名前を呼んで応援してくださったりする方々がいて、『立命館は本当に愛されているチームだな』と感じました。それは私たちの代だけじゃなくて、今までの先輩方が強い立命館を築いてくださったおかげです。そんな立命館を背負って走れることが幸せでした」。19秒差まで詰められたものの、トップの座は譲らなかった。

9年ぶりの優勝が近づくにつれて、杉村監督の胸中は「すごく長かったです。もう早く帰ってこい、という思いで見てました」。最終6区を託された土屋舞琴(3年、興譲館)はトップのアドバンテージを生かしきり、大東文化大との差を広げ、区間賞も獲得。「アンカーのラスト2kmぐらいまでは、もう心臓バクバクだったんですけど、実際に競技場へ入ってきたら『もうこれだけ空いたら大丈夫』となりました」と杉村監督。土屋は右人さし指を突き上げながらフィニッシュ。待ち受ける仲間たちのもとへ、笑顔で駆け込んだ。

フィニッシュ後、笑顔で仲間のもとへ駆け込んだ土屋(左)

チームの全員が「一意専心」を胸に

優勝タイムの2時間03分03秒は、設定通りのフィニッシュタイムだったと、杉村監督は言う。「どの区間も油断できないという中で、目標をそれぞれ設定した通りのタイムで来てくれました。全員が力を出した結果だなと思います」。今季のチームスローガンは「一意専心」。女子の長距離パートを指導する十倉みゆきコーチは、全員が目標に向かって心を一つにして戦えたと振り返る。

「この間、勝てない時期もありましたけど、目標は常に優勝においてきました。各年代のキャプテンと年度の当初に話し合いをしたときも、必ず目標は優勝。ちょっと実力的に他のチームが強かったとしても、優勝を念頭に置いてきました。昨年は正直、チームの戦力差を実感していたんですけども、完敗だけは避けたいと言うことで『攻めのオーダー』を組んで、今年は攻めも粘りも両方できるオーダーを組むことができました」

レース前日「前半で駅伝の流れに乗りたい」と語っていた杉村監督、その通りの展開となった

夏合宿中のミーティングで、4年生たちには「なぜ勝ちたいのか」を掘り下げ、下の学年にも浸透させてほしいと伝えた。村松は言う。「誰か一人でも『(優勝は)無理なんじゃないか』とか『私ぐらい諦めてもチームの優勝には関係ない』と思ったら、絶対に優勝できない。誰一人、思いが違う方へ向かないで当日を迎えられるチームにしたいと思っていました」

これまでの思いや取り組みが、今大会で結果となって表れた。歓喜に包まれたのもつかの間、次は12月末の富士山女子駅伝を見据える。区間も増え、高低差174mという全日本とは別物のレースで、今年度のチームの集大成を見せつける。

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