天理大学・井脇将誠 自身の成長とリベンジへの思いを示した神宮大会準決勝での同点弾
第55回記念明治神宮野球大会 大学の部準決勝
11月24日@明治神宮野球場(東京)
青山学院大学 5x-4 天理大学
(延長10回タイブレーク)
明治神宮大会準決勝の青山学院大学戦。2点を追う四回2死二塁で、天理大学の1番打者・井脇将誠(4年、尽誠学園)が打席に立った。ストレートを力強く振り切ると、打球はレフトスタンドへ。同点2ランとなり試合を一時、振り出しに戻した。
11月上旬に行われた関西地区代表決定戦でも奈良学園大学戦で3ランを放ち、秋の阪神大学リーグ戦から好調を維持している。10試合中9試合にスタメン出場し、33打数11安打。自身2度目となる外野手部門でのベストナインに輝いた。
4年生のレギュラーにけが人が続出しても戦い抜いた
2年の秋にレギュラーの座をつかみ、3年秋に初めてベストナインを獲得。50mを6秒3で駆け抜ける快足にも磨きがかかり、最終学年になると不動の1番打者として打線を牽引(けんいん)してきた。
「足を生かした守備範囲の広さに自信を持っています。この秋は、単打より長打が増えたことが、成長できたところなのかなと思っています。それでも自分は長距離バッターではないので、アベレージで勝負できるバッターを目指しています」
最後の秋はレギュラー陣の4年生にけが人が続出し、チームの状態は万全とは言えなかった。井脇と同じく下級生の時からチームの中心を担い、春は中軸として主将を務めた三塁手の下林源太(4年、天理)が、右肩負傷の影響で秋はリーグ戦から欠場していた。遊撃手の天野航也(4年、報徳学園)はけがで明治神宮大会にスタメン出場できず、今秋のリーグ戦で最優秀選手賞と最優秀投手賞を受賞したエース右腕・長野健大(4年、松商学園)も右ひじの違和感で明治神宮大会はベンチから外れた。
「(4番を打った)石飛(智洋、4年、出雲西)や僕もリーグ戦で状態が良くない時があったんですけれど、(明治神宮大会は)4年生で何とか頑張ろうって言っていたんです」
濃い霧に包まれた初戦、ひやりとする場面も
限られた上級生で臨んだ関西地区代表決定戦は、関西5連盟優勝校との激しい戦いを制し、第1代表の座を勝ち取った。迎えた明治神宮大会。第4試合だった初戦の札幌大学戦は、昼過ぎまで降り続いた雨の影響で球場内がかすみ、午後6時前のプレーボール。濃い霧がかかった状態で、試合が進んだ。「ナイターでもそこまで見えにくい感じはなかったんですけれど(試合の途中から)霧が出てきて危ないなとは思っていました」。ナイターは「正直、好きじゃないです」と井脇は苦笑いする。リーグ戦でもナイターの経験はあったが、やはり神宮球場の雰囲気は違っていた。
試合は先発の的場吏玖(2年、大阪電通大高)が一回に無死満塁から1点を失い、三回まで毎回安打を許していた。「的場は立ち上がりが良くないので、いつもの展開なのかなと。それでも負ける気はしなかったです」とセンターの位置から試合を見つめていた。
天理大打線も毎回のように走者を送り込んでいたが、あと1本が出ない。ようやく五回、死球と内野安打で走者をため、バスターエンドランなどでチャンスを広げたのち、連続犠飛で逆転に成功した。
直後の守りで、ひやりとする場面があった。2死三塁で札幌大の4番打者・佐野翔騎郎(4年、札幌大谷)の飛球を井脇が何とか捕球した。「あの場面は、飛んですぐに2歩くらい前にいっていたんです。そうしたら、レフトの石飛から『裏!』って言われて、慌てて後ろに回ったんですけれど……。外野はかなり(霧で)白くなっていて、やりづらかったです」
本来は打球音で飛距離を判断するが、スタンドの声援などもあって聞こえづらかった。試合後は「自分の打球判断ミスでした」と猛省していた。
王者・青山学院大学を最後まで追い詰めた
札幌大戦は4打数1安打に終わったが、盗塁を決めるなど持ち味の俊足を生かし、相手を揺さぶった。2-1の接戦を制し、次戦の相手は6月の全日本大学選手権準決勝で2-10の力負けを喫した青山学院大。「リベンジに燃えていた」と井脇は振り返る。
先頭打者として一回に左前安打を放ち、その後に飛び出したのが四回の同点2ランだった。4-4で両者譲らず、延長戦へ。無死一、二塁から始まるタイブレークに入った。表の攻撃で天理大は無得点に終わり、その裏、1死満塁からサヨナラ打を浴びた。雪辱を果たすことはかなわなかったが、天理大の三幣寛志監督は「選手権の悔しさがあったから、ここまで来られたと思います。選手らはよくやってくれた」と最後まで諦めなかった選手たちをねぎらった。
〝全国4強〟の壁がまたしても天理大の前に立ちはだかった。それでも〝大学四冠〟を達成した王者・青山学院大を最後まで追い詰めた戦いぶりは、しっかりと全国の舞台に刻まれた。
井脇は卒業後も社会人で野球を続ける。持ち前のスピードを生かし、次のステージでもぶれずに頂点を狙い続ける。