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特集:第76回全日本大学バスケ選手権

京都産業大・宇都宮陸 阻まれ続けた〝関東の壁〟最後は「勝てた」と思えたからこそ涙

1年目からチームを牽引してきた京都産業大学の宇都宮陸(すべて撮影・井上翔太)

第76回全日本大学バスケットボール選手権大会 男子2回戦

12月5日@横浜武道館(神奈川)
専修大学 86-55 京都産業大学

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コート上では気丈に振る舞っていたが、控室に向かう通路で急に涙が止まらなくなった。12月5日の第76回全日本大学バスケットボール選手権(インカレ)男子2回戦。京都産業大学の主将・宇都宮陸(4年、報徳学園)は、またも関東の壁に阻まれた。これまで以上に「勝てた」と思えたからこそ、悔しさばかりが募った。

徐々に持ち味発揮し、第2Qはリード

秋の関西学生リーグ戦を3年ぶりに制し、宇都宮自身は最優秀選手賞に選ばれて挑んだ日本インカレ。トーナメント1回戦でグループステージを勝ち上がってきた名古屋経済大学を101-45で退け、2回戦は専修大学とぶつかった。宇都宮にとっては1年時の日本インカレで、ベスト4進出を阻まれた相手でもあった。

相手はエース格の介川アンソニー翔(2年、開志国際)がケガの影響で出場しなかったものの、「能力者集団」の異名を持つ通り、3x3 U23日本代表でも活躍した淺野ケニー(4年、洛南)を中心にオフェンスを仕掛けてきた。試合の入りはマンツーマンディフェンスだったが、センターのヒシグバータル・オーギル(3年、明徳義塾)にファウルトラブルがあり、京産大が本来やりたいバスケが序盤はなかなかできなかった。

ファウルを受けフリースローを放つ宇都宮、この日は7本中5本成功

「ゾーンで堅く守って走る」(宇都宮)という持ち味が、第2Q(クオーター)から第3Qにかけて徐々に出始めた。宇都宮は司令塔らしく、オーギルにノールックのバックハンドパスを通したり、自ら切り込んでフローターシュートを決めたり。第1Qは8-25だったが、第2Qだけなら21-13とリード。ただ、スコア全体をひっくり返すまでにはいたらず、トータルスコア55-86で力尽きた。

試合後の宇都宮は、率直な気持ちを吐露した。「全然戦えるし、勝てるチャンスもあった。けど、やっぱり小さなミスの積み重ねが、最後にああいう形になってしまった。練習中からそういうところの設定を高くしてやらないといけないと感じました。個人的にもチーム的にも、自分たちのやりたいバスケができた時間帯があったので、そこは本当に自信につなげてもらいたいと思います」

華麗な身のこなしでレイアップシュートを狙う

示したかった「関西からでもプロに行ける」

報徳学園時代は、2020年のウインターカップでベスト8。準々決勝で準優勝した東山(京都)に敗れた。当時から注目選手の一人に挙げられ、卒業後は「関東で活躍する」という気持ちよりも、「関西で結果を残して、一番になって『関西からでも戦えるし、プロにも行けるぞ』というところを自分発信で示していきたい」という思いが勝り、京産大に進んだ。

「自分は1年生のときから、いい思いをさせてもらった」と振り返る通り、ルーキーイヤーから中心選手としてチームを引っ張り、3年前のインカレは2回戦で明治大学に勝ち、ベスト8まで進んだ。ただ、先述の通りこのときも専修大に阻まれた後、2年時のインカレはベスト16で中央大学に、昨年は早稲田大学に敗れ、〝関東の壁〟を乗り越えられないでいた。宇都宮はその間、1年時に愛媛オレンジバイキングス、2年時にアルバルク東京の特別指定選手となり、Bリーグの舞台も経験した。「特別指定の期間は、自分でも成長できたと感じています。頭を使ったバスケをすることだったり、練習からのインテンシティー(強度・集中力)だったり。やり続けることの大切さが、一番勉強になりました」

在学中からBリーグの舞台も経験し、チームに還元した

自らが学んだことをチームにも落とし込み、最後の関西学生リーグ戦で頂点に立った。「関西で一番になる」という目標は達成したが、今回も関東のチームに勝つことはできなかった。関西と関東の違いは何ですか、と尋ねると「やっぱり一つひとつの動きに意味がある。アジャスト能力というか『こう来たから、こう応える』っていうところで関東のチームは頭が切れる。関西はまだ『こう来たら、それで終わっちゃう』という部分が多くあるので、もっともっとゲームを増やして感覚をつかんでいかないといけないと思います」と答えてくれた。

過去2年間は関東勢に面食らったところも

過去2年間の日本インカレは、関東のチームに対して面食らい、持ち味が出せないままに終わるということが多かった。ただ、今大会は「途中で『本当に勝てる』と思ったので、そこの心境の違いはありました」と宇都宮。自身は大学を卒業後、プロの道に進む。今度は後輩たちが宇都宮の思いをくみ取り、壁を乗り越えるまで、何度でも関東勢に立ち向かっていく。

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