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特集:第76回全日本大学バスケ選手権

東海大・大久保颯大 Bチーム出身の主将、プレータイム限られても「一瞬一瞬が特別」

東海大の大久保颯大はタイムアウト時、先頭で選手たちを出迎える(すべて撮影・井上翔太)

第76回全日本大学バスケットボール選手権大会 男子決勝

12月15日@オープンハウスアリーナ太田(群馬)
日本大学 70-63 東海大学

※東海大は2年連続の準優勝

【写真】日本大学が15年ぶり13回目の優勝、女子は白鷗大が2連覇!バスケインカレ

5年連続で進んだ決勝の舞台。2年ぶりの頂点には、あと一歩届かなかった。第76回全日本大学バスケットボール選手権(インカレ)男子決勝。日本大学に63-70で敗れ、2年連続の準優勝となった東海大学の主将・大久保颯大(4年、東海大浦安)は、あふれ出そうな涙をこらえながら語った。「周りの方たちに感謝しかないですし、下級生がこの場でこれだけ活躍してくれたので、来年リディーム(取り戻)してくれると思います」

理想は泥臭さを大切にする「ディフェンスのチーム」

中学生の頃から、ゆくゆくは「大学の1部でプレーしたい」という気持ちがあり、系列の東海大浦安高校に進んだ。「まったく名の知られていない中学時代で、強豪校から声がかかる選手でもありませんでしたけど、その頃から漠然とそういう思いがあって。東海にはBチームもトライアウトもあると知っていたので、『自分はそこからはい上がるんだ』と、高校のときから思っていました」

中学時代から「大学の1部でプレーしたい」という志を持っていた

東海大では2年の夏までBチームで過ごし、AとBの合同で戦う新人戦を終えたところで、Aチームに合流した。昨年のインカレを準優勝で終え、新チームになると、前主将の黒川虎徹(現・アルティーリ千葉)ら当時の4年生たちからの後押しもあり、「半分雰囲気、半分立候補」で主将に就任。「自分はチームをまとめることが嫌いじゃなくて、逆にこのチームでできるのはすごく光栄なことだと思ったので、『チャンスがあるなら自分がやります』と言いました」。Bチーム出身の選手が主将になるのは、1960年創部という歴史あるチームの中でも珍しいことだった。

「自分がキャプテンである以上、どういうチームにしたいのか、このチームでどこをめざすのか、決められる立場でもあるし、示せる立場でもある。最初はプレッシャーより不安の方が大きかったかもしれないです」。大久保なりの理想のチームとは。たどり着いた結論は「ディフェンスのチーム」。リバウンドに飛び込んだり、ルーズボールを追いかけたりといった「泥臭さ」を大切にしてきた。

準決勝の白鷗大学戦では途中出場し「ディフェンスの圧」を心がけた

決勝はプレーヤーとしてコートに立てなくても

ハーパージャン ローレンスジュニア(4年、福岡第一)や西田陽成(4年、福岡大大濠)といった同期だけでなく、下級生にも轟琉維(2年、福岡第一)や赤間賢人(1年、藤枝明誠)、佐藤友(1年、東山)ら高校時代から全国の舞台で活躍してきたメンバーがそろう。ゆえに、大久保のプレータイムは限られる。日大との決勝では、プレーヤーとしてコートに立つことはなかった。それでも「チームの決まり事を誰よりも遂行して、もし誰かができていないときは、いち早く気付いてコミュニケーションを取る。プレーでは他の4年生が引っ張ってくれるので、自分はそれ以外のところをやります」とベンチから声をからし続けた。

日大との決勝は、序盤に流れを引き寄せられなかった。相手のスコアラー泉登翔(3年、福岡大大濠)の3ポイントが決まり、突き放された。タイムアウト時、真っ先に選手たちを出迎え、彼らに硬さが見られたという大久保は言った。「やってきたことを信じれば、流れは絶対にうちに来る。自分たちは後半勝負。それまでに今の点差を少しでも縮めよう」

第3クオーター(Q)を終えて、東海大は15点のビハインド。ベンチで「ディフェンスが何回連続で相手オフェンスをストップできるかを数えている」という大久保は、第4Qの中盤に3連続まで続いたことに気付いた。「前日の白鷗戦のときは、序盤で7ストップしてたんです。そういう展開のときは、必ず自分たちのゲームになる」。その言葉通り、西田の3ポイントが決まり始め、一気に3点差まで迫った。ただ残り時間が少なく、ファウルで時計を止めざるを得ない展開に。チームファウルがかさみ、日大にフリースローを与える状況に追い込まれ、追い上げもここまでだった。

ベンチでは、座っている姿を見かけることの方が少ない

「4年間、毎日毎日感謝してました」

頂上決戦の後、大久保は表舞台で涙を見せなかった。「4年間の集大成として『全部出し切って終わろう』と思っていて、ちょっと(涙を)こらえてた部分もあったんですけど、『自分が泣いちゃいけない』と思いつつ。泣くほどの後悔はないので、そんなに泣かなかったです」。表彰式の間もうなだれることなく、盾やカップを受け取る日大の選手たちに拍手を送り、応援が印象的だったチームに贈られる「クリーン・ザ・ゲーム賞」に東海大が選ばれたと発表されると、声援を送り続けてくれたベンチ外のメンバーが賞を受け取るように促した。

同学年の前野幹太(右)とともにチーム表彰を受けた

インカレの全イベントを終え、改めて4年間を振り返ると、どんな光景が思い浮かびますか、と尋ねると、大久保はこう答えてくれた。「自分からしたら、周りは本当にスーパースターなんですよ。そんな彼らと飯を食うこともそうですし、プライベートでどこかに出かけることもそうですし、その一瞬一瞬が特別でした。自分は言ってしまえば、そこら辺にいる人と変わらない。でも、ハーパーとか名の知れた選手たちと一緒にバスケットができることが幸せでしたし、ラストシーズンはキャプテンとしてチームをまとめる立場を与えてくれたことに感謝です。4年間、毎日毎日、感謝してました」

高い志を持ち、壁にぶつかっても諦めず、自分が貢献できる道を探し、遂行し続けた大久保の言葉は、取材しているこちらの心にも響いた。

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