ラグビー

初優勝にかける天理か、22年ぶりの頂点狙う明治か

突破力が光る天理のNo.8ファウルア・マキシ (撮影・谷本結利)

大学選手権決勝

1月12日@東京・秩父宮

天理大(関西Aリーグ1位)vs 明治大(関東対抗戦3位=4位扱い)

今シーズンの大学王者が決まる。関西Aリーグで連覇を達成し、準決勝で帝京の10連覇を阻んだ天理大と、関東対抗戦で3位(4位扱い)ながら東海、早稲田との接戦を勝ち上がってきた明治大が対戦する。

今シーズンは5月と8月に練習試合で対戦しており、天理がそれぞれ24-17、24-19と接戦で勝っている。天理は準決勝で、3度目の挑戦で初めて帝京を破った。明治はその帝京に今シーズン3連勝。決勝も熱戦になりそうだ。

明治は4年生ハーフ団がキーに

それでは対抗戦4位扱いからの下克上優勝を目指す、「EXCEED」を掲げる明治のメンバーから見ていこう。準決勝からメンバー変更はなし。

まず、ランにも長けたキャプテンSH福田健太(4年、茗渓学園)、ゲームメイクとプレースキックが武器のSO忽那鐘太(4年、石見智翠館)の4年生ハーフ団のゲームコントロールが鍵を握る。

FWを見ると、第1列はPR安昌豪(3年、大阪朝鮮)、PR祝原涼介(4年、桐蔭学園)、HO武井日向(3年、國學院栃木) というスクラムに強い布陣となった。LOは献身的な片倉康瑛(2年、明大中野)と箸本龍雅(2年、東福岡)。そしてバックローにはFL井上遼(4年、報徳学園)、石井洋介(3年、桐蔭学園)、No.8坂和樹(3年、明大中野八王子)と機動力とボールキャリーに長けた選手が並ぶ。

ハーフ団以外のBKでは、CTB陣はキックもうまい森勇登(2年、東福岡)、縦に強い射場大輔(3年、常翔学園)。WTBはスピードのある山崎洋之(3年、筑紫)、力強いランが持ち味で好調を維持しているWTB髙橋汰地(4年、常翔学園)、さらに最後尾にはロングキッカーでカウンターアタックの能力も高いFB山沢京平(2年、深谷)が陣取る。

ベンチメンバーにはSO松尾将太郎(4年、東福岡)、WTB山村知也(3年、報徳学園)ら攻撃力の高い選手もおり、後半から出場してくるだろう。

準決勝でトライを奪った明治のNo.8坂 (撮影・谷本結利)

天理は強力スクラム、ディフェンスにも厚み

次は創部以来、初優勝目指す天理のメンバーを見ていこう。天理もまた準決勝と同じメンバーとなった。

チームの中心はルーキーイヤーの昨シーズンからハーフ団を組んできた2回生のSH藤原忍(日本航空石川)、そしてSO松永拓朗(大阪産大付)の二人だ。松永は準々決勝で負傷したものの、準決勝で出色の出来を見せた。

爆発的な突破力だけでなく、献身的なプレーも光るNo.8ファウルア・マキシ(4年)を筆頭にトンガ人留学生のLOアシペリ・モアラ(1年)、CTBシオサイア・フィフィタ(2年、いずれも日本航空石川)は三人とも先発。また大学選手権から先発に復帰したWTB久保直人(4年、天理)の決定力も、明治にとって驚異となるだろう。

他にもFWはキャプテンHO島根一磨(4年、天理)が引っ張り、スクラムの強さに定評があるPR加藤滉紫(4年、専大松戸)、PR小鍛治悠太(2年、大阪産大付)がセットプレーを支える。また控えのPR山川力優(3年、天理)も強い。LOは由良祥一(4年、大阪産大付)、FL岡山仙治(3年、石見智翠館)、佐藤慶(4年、天理)の三人が運動量豊富であり、タックルを繰り返す。

中盤でフィフィタとコンビを組むCTB池永玄太郎(4年、上宮太子)は縦に強く、WTB中野豪(4年、常翔学園)も決定力に長けたランナーで、SOでもプレーえきるFB立見聡明(3年、明和県央)が後ろから冷静にゲームを動かすはずだ。

天理大を引っ張るキャプテンの島根 (撮影・谷本結利)

成長した明治、天理に押されても粘れるか

試合の一番のポイントとなるのは、天理の堅固なディフェンスを明治が崩せるか、というところ。「ディフェンスのリアクションが武器」と島根キャプテンが語る通り、天理は関西Aリーグから大学選手権までの9試合の平均失点は9.8。零封も2試合あり、最多失点も19で、準決勝も帝京の激しいアタックを1トライの7失点でとどめた。大きな自信になったはずだ。

一方の明治は爆発的な攻撃力はないかもしれないが、FWとBKが一体となってボールを保持して攻め続けるスキル、フィットネスを合わせもつアタッキングチームだ。またゴール前に攻め込めば、FWが近場で取りきる力もある。またボールをキープする時間を増やせば、必然的に相手にアタックされる時間も減るため、一石二鳥。フェイズを重ねつつ、チャンスにはしっかりスコアしたいところだ。

二つ目のポイントはスクラムだ。互いにスクラムには自信を持っているチームである。天理のスクラムを教えるのは、小松節夫監督の天理高時代の同級生であり、明治出身でワールドでもプレーした岡田明久。一方の明治はOBでリコーでもプレーした滝澤佳之が指導している。

小さいながらも8人一体で低く組む天理は京産大、大東文化大というスクラムの強いチームにもしっかり押して勝ち進んできており、大きな武器となっている。拳のように8人一体となってスクラムを組んできた明治としては、もちろん優勢に組めるのが一番だが、ペナルティーを犯さず、マイボールをきっちり出すことが求められる。スクラムを押すことができれば、相手FWのフィットネスを奪い、メンタル的にも優位に進めることができる。スクラムの出来が勝敗を大きく分けるはずだ。

最後に挙げるとすれば、明治のSH福田、SO忽那の4年生ハーフ団のゲームコントロールがポイントだろう。明治のディフェンスは徐々に安定してきており、天理は9試合の平均得点が59.5点とアタック力もあるチームだけに、なるべく自陣奥深くに入られるのは避けたい。敵陣でプレーするようにハーフ団がコントロールし、激しいディフェンスで前からプレッシャーをかけて接戦に持ち込みたい。

天理としてはスクラムでプレッシャーをかけてペースを握り、留学生の突破力を生かして主導権を握りたいところ。天理大の小松監督は「優勝目指してやってきているので、決勝は一番いい試合をできるよう準備したい」と語っている。島根キャプテンは「目標は日本一なのでそれに向けて全力でひたむきにいきたい」と語気を強める。

明治としては、スクラムを互角に組み、準決勝のようにディフェンスで粘ることで接戦に持ち込み、1年間掛けて磨いてきたアタック力でしっかりと好機を得点につなげていきたい。田中澄憲監督は「大学選手権は厳しいトーナメントを勝ち抜いたことが成長につながってます」と口にした。また福田キャプテンは「明治のスタンダードを落とさず、いい準備をして決勝に臨みたい」と意気込んでいる。

「黒衣軍団」天理が優勝すれば、1925年の創部以来初優勝となり、関西勢としては1984年の同志社以来の快挙となる。「紫紺のジャージー」明治が優勝すれば1996年度以来、22シーズンぶり13度目の頂点となる。

天理か明治か。1月12日、いよいよ、今シーズンの大学王者が決まる。

明治キャプテン福田は大学ラストゲームで輝くか (撮影・谷本結利)

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