大学ラクロス

特集:女性アスリートという生き方

バレエで鍛えた体幹が武器 ラクロスで広がった廣瀬藍の夢

女性アスリートが普段の生活で大切にしている生活習慣や考え方、体づくりの秘訣(ひけつ)などに迫る連載「女性アスリートという生き方」をスタートします。1回目はこのほど、アメリカの女子ラクロスプロリーグ・WPLLでプレーするために海を渡ったばかりの廣瀬藍さん(25)です。上智大学在学中は3部リーグ所属でありながら、2016年から日本代表としても活躍してきました。

まだ確立されていない、だから楽しい!!

――ラクロスは大学からだそうですが、それまでどんなスポーツをされてきたのでしょうか?

廣瀬:幼稚園から高校2年生までバレエを習ってました。通っていた幼稚園でバレエ教室が開かれていて、衣装がかわいいという理由で始めたのが5歳のときです。小学校に入ると発表会でソロをやらせてもらえるようになって、そうなると俄然(がぜん)モチベーションが上がりました。そのまま高校卒業まで部活に入ることもなく、週に5、6日はバレエのレッスンを続けるほどで。バレエって「完璧」がなくて、どこまでいっても改善点があるので、一つひとつクリアしていくことが楽しかったんです。NBA全国バレエコンクールで入賞したこともあります。

――全国大会で入賞もされたんですね。なぜそのバレエをやめようと思ったのでしょうか?

廣瀬:留学をきっかけにやめました。高校2年生の夏から1年間、アメリカのアリゾナ州で過ごしました。英語のスキルを身につけるために留学したので、日本に戻って大学受験するときも、英語の面接やTOEICの点数が大きな割合を占める公募推薦で受けました。

――そして上智大学に入学されました。いろんなスポーツがあった中でもラクロスをやりたいと思ったのはなぜですか?

廣瀬:バレエを習っていた当時、バスケに熱中する兄を見て、「球技っていいなあ」と思ってたんです。バレエって「自分との闘い」という側面が大きくて、すごく孤独だから、仲間と一緒に戦えるスポーツにあこがれたんでしょうね。それで大学からでも始められるスポーツってなんだろう?  って考えたとき、アルティメットかラクロスだなって。両方体験に行ったんですけど、ラクロスの方が楽しく感じたんです。

上智大時代の廣瀬さん(写真は本人提供)

――どんなところにラクロスの面白さ、魅力を感じたんですか?

廣瀬:日本に入ってきて30年ぐらいのスポーツで、いろんなことが確立されてないところです。スタンダードがないので、プレイヤーとしてはつくっていく楽しみがある。大学やクラブごとにやってることが全然違って、「あんな攻め方もあるんだ! 」「あんなシュートがあるんだ! 」っていうのを、よく目の当たりにしますし、チームごとに試行錯誤してつくり上げたスタイルを見るのは楽しいですね。ディフェンスの面ではボールを奪う面白さがあります。

――学生時代で一番印象に残っているのは、どんな試合ですか?

廣瀬:二つあります。一つは引退試合になった入れ替え戦です。接戦で勝って、3部から2部に昇格できたんです。もう一つは2年生の時の入れ替え戦。滑りやすいグラウンドだったんですけど、私が滑ってこけたせいで、大事な場面でボールを奪われて負けちゃって……。勝った試合と負けた試合。対照的な二つのの試合がどちらも印象に残ってます。

引っ越しもし、ラクロスを中心にした毎日

――4年生のときにはU22の日本代表にも選ばれてますね。

廣瀬:はい。私のときは4年生になると部活をやめる人も多かったんですけど、2年生のときにコーチをしてくれた先輩がクラブチーム「NeO」のメンバーだったので、その人といつか一緒にプレーすることを目標に続けてきた結果、代表に選んでもらえました。トッププレイヤーの中でプレーできたのはいい経験でした。でも上智は3部だったので、基礎技術から何からレベルが違ってて、自分のプレーが通じなくて当初は焦りました。高いレベルでプレーし続けてきた人たちの試合に対する考え方や人間性に触れて、大きな刺激を受けましたね。

――現在は働きながら「NeO」でプレーをされていますが、体力的にも時間的にも大変ではないですか?

廣瀬:大変ですね……。毎週平日2日と土日の計4日間をラクロスに費やしてます。私のポジションはミディ(MF)で、いまはディフェンスもやってるんですけど、去年から青山学院大学のディフェンスコーチをやらせていただいてて、月曜日の夜と水曜日の朝は青山学院大のグラウンドにいます。週末は自分の練習ですね。

――朝練のあとに出社されるんですか!?

廣瀬:そうです。水曜日は朝5時に起きて、家を出るのが5時半。6時半から8時半まで練習した後、シャワーを浴びて、フレックスを利用して10時に出社してます。出張前は仕事量が増えるので、夜10時くらいまで働いて帰宅という流れです。

――忙しいスケジュールを乗り切るためには体調管理も必須ですね。

廣瀬:ラクロスを続けるために、練習場に近いところに引っ越しました。体力維持のためにも必ず3食とってます。朝練の日は朝練前とその後で2度、朝ごはんを食べますし、夜の練習がある日も、練習の前後に食事をとってます。栄養バランスにも気を配らないといけないとは思ってるんですけど、あまり野菜が好きじゃないので、果物やヨーグルトで補うことを意識してます。とはいえまったく野菜をとらないのはよくないので、栄養豊富なブロッコリーやニンジンを中心に、少しだけですが食べてます。

――健康維持のために、ほかに生活に取り入れていることはありますか?

廣瀬:ベッドと枕をいいものに替えました。疲れのとれ方が全然違いますね。あとは実家にいる犬たちに癒されています。ヨークシャテリアとマルプー(マルチーズとプードルのハーフ)なんですけど、2匹に会うのはいつも楽しみです。名前は空と大(だい)。合わせて「大空」です。一緒にいると疲れも吹き飛びます。

ラクロスが子どもたちのあこがれになるように

――バレエの経験がラクロスに生きていると感じることはありますか?

廣瀬:あります! バレエって自分の体をよく知ってないといけなくて、どこに重心があるかとか、どうバランスをとるかといったことを常に考えているので、体幹が鍛えられるんですよ。だから体格のいい外国人選手に強い力で押されても、体がブレずにボールをキープしていられます。体幹の強さは周りからも評価されてますし、バレエをやっててよかったなと思いますね。

――ご自身の強みはどこだと思われますか?

廣瀬:アプローチの強さですね。ボールを持ってる人に対して、イヤなプレッシャーを与えるディフェンスができる自信があります。プレーしてて楽しいのは、ボールを奪うとき。自分の力で奪って、それが得点につながったときは一番うれしいです! ラクロスってシュートシーンが一番目立つけど、ディフェンスとしては、そのシュートが入る前にどこでボールを奪ったかということまで注目してほしいです。

――これから7月末までアメリカのチーム「Brave」でプレーされますが、なぜチャレンジすることになったんですか?

廣瀬:去年の11月、山田幸代さん(日本初のプロラクロス選手)がアメリカのプロ選手を招いて「WORLD CROSSE」を開催された際、日本選抜チームのメンバーに選んでいただきました。その試合のあと、「WPLLに挑戦しないか? 」というお話をいただきました。会社勤めをしているので「行かない」という選択肢もあったんですけど、自分の力を試してみたいし、有休を使って行かせていただけるとのことで、渡米を決めました。これまでに何度かワールドカップやアジア大会、国際親善試合に出場してきた中で、「世界でチャレンジしたい!! 」という意欲が強くなってたんです。

――アメリカ滞在中にやりたいことを教えてください。

廣瀬:プレーに関して言うと、自分の一番の強みがアプローチなので、どんな人に対しても勝負しにいこうと思ってます。それともう一つ、アメリカのラクロス文化をしっかり見てきたいです。アメリカは公共の公園にもラクロスのゴールが設置してあるくらいのラクロス先進国。育成プログラムも充実していますので、しっかり学んできたいですね。

――ラクロスを通じての最終目標を教えてください。

一番の目標は日本においてのラクロスの価値を高めることです。子どもがあこがれるスポーツになれるよう、貢献したいです。そのためにも、まずは実績を残したい。ワールドカップもそうですし、2028年のロサンゼルスオリンピックでラクロスが正式競技になれば、メダルをとりたい。そうなればきっと、ラクロスだけで食べていくことも実現できると思ってます。それと、私個人にできることとしては、大学の3部や4部リーグに所属してる人でも、アメリカのプロリーグや、NeOという日本トップのクラブチームにも挑戦できるという夢を伝えることだと思ってます。子どもたちに目標にしてもらえるよう、アメリカでもしっかりいい結果を出してきたいです。

――最後に、仕事をしながらスポーツにもチャレンジし続けている人にアドバイスをお願いします。

廣瀬:スポーツ以外もそうだと思うんですけど、仕事のほかに熱中できるものがあれば、効率よく仕事を終わらせてプライベートの時間を充実して過ごせるはず。朝晩や土日にやりたいことをやるために、平日にきちんと仕事を終わらせようというモチベーションを保てるので、うまくバランスをとって生活できると思います。私は海外の営業担当なので出張も多くて、土曜の練習に出るためにスケジュールを詰め込んで、朝5時の便で帰国することもしょっちゅうなんですけど、そうやって自分で時間を確保することに熱心になれるからこそ、練習にも集中して取り組めているんだと考えるようになりました。

青山学院大・中村真緒 ボルダリングだけは、ずっと飽きなかった

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