フィギュアスケート

連載:女性アスリートという生き方

早稲田・永井優香 フィギュアスケートのおかげで、壁に挑むのが楽しくなった

永井さんは大学でフィギュアスケート引退を決めている(イメージカットはすべて撮影・齋藤大輔)

女性アスリートが普段の生活で大切にしている生活習慣や考え方、体づくりの秘訣(ひけつ)に迫る連載「女性アスリートという生き方」の第5弾です。早稲田大学に通いながらフィギュアスケートに取り組んでいる永井優香さん(3年、駒場学園)。今シーズンは東日本学生選手権と東日本選手権をともに制し、12月19日からの全日本選手権に出場します。

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ピンクの衣装でクルクル回る浅田真央選手にあこがれて

――フィギュアスケートを始めたきっかけを教えてください。

永井:テレビで浅田真央選手を拝見してあこがれて、「私も習わせてほしい」と親に頼んだのがきっかけです。ピンクの衣装でクルクル回ってる姿が素敵だったんです。当時、私は小学校1年生くらい。それ以前は、幼稚園のときに親に連れられて近所の体操教室に通ってたくらいで、自分から何かをやりたいと言ったのはあれが初めてでした。すぐには「いいよ」と言ってもらえなくて、1年くらい言い続けてやっと習わせてもらいました。

――実際に通ってみて楽しかったですか?

永井:同い年くらいの子がたくさんいたので、楽しく通えましたね。でも最初は、数人で一緒に学ぶ「お教室」だったんですけど、私が下手すぎてみんなのレベルについていけなかったんです。それで先生からの提案もあって、個人レッスンをお願いするようになってからは、学校が終わるとほぼ毎日リンクに向かってました。遠足なんかで疲れてるときでも休まず通ううちに、いつのまにかここまできたという感じです。

――大会にはいつから出場するようになったのですか?

永井:大会に出るためにはスケートの級が必要なので、まずは級をとるために個人レッスンを頑張りました。個人レッスンを始めてから2カ月で級をとれて、小学校3年生くらいのときに初めて大会に出場しました。初めての大会はすごく楽しく滑れて、小さな地方大会だったんですけど、銅メダルをいただけてうれしかったという記憶があります。

全日本選手権の出場は今年で6回目となる(写真は2017年のもの、撮影・遠藤啓生)

――これまで一番印象に残っている大会を教えて下さい。

永井:たくさんありますけど、一番うまく滑れたなと思うのは、高校1年生の12月のジュニアグランプリファイナルのショート(プログラム)です。これまでで一番大きな大会でしたけど、そこでミスなく滑れたので、すごく印象に残ってます。もう一つは、高校2年生のときに出場したスケートカナダです。初めてシニアの方々と一緒に滑らせていただいたんですけど、周りには自分がテレビで観ていた選手も多くて、それまでの大会とは全然違う雰囲気でした。お客さんの数も違うし、現地の方々が温かい声援をくださったおかげで楽しく滑れたので、あまり調子はよくなかったにも関わらず3位に入れました。

毎日の送り迎えやお弁当、母には感謝

――海外の大会にはご家族も応援で同行されるのですか?

永井:そうですね。母が来てくれました。家族の支えがなかったら、こんなに長いこと競技生活を送れなかったと思うし、とても感謝してます。日々の練習においてもすごく支えられてます。毎朝の練習には車で送り出してくれるし、夜ももちろん迎えに来てくれます。食事面の配慮も万全で、なるべく外食にならないようにお弁当を作ってくれるし、夜遅いので、夕食は車の中で食べられるように用意してきてくれます。

――朝晩の練習は毎日ですか?

永井:朝は月曜日から金曜日まで毎日6時から7時半までで、夜は月、火、木、金です。それに加えて、昼も時間がある限り滑ってます。リンクを貸し切りにできる日には授業を入れないように調整してるんです。学業も疎かにならないようにはしてはいるんですけど、やはり比重としてはスケートの方が大きくなってしまいますね。

――それだけ練習していると勉強の時間を捻出するのが大変そうですね。

永井:そうですね。平日は練習で疲れて、帰宅後すぐ寝てしまうことが多いので、土、日や移動時間で勉強するようにしてます。入学前は受験勉強とスケートの両立がつらいと感じたこともあるんですけど、スポーツ以外のことも学びたいと思って社会科学部に入学したんだし、きちんと学業も収めたいと思ってます。

――遊ぶ時間はほとんどないですか?

永井:シーズンに入ったら気持ちが落ち着かないんで、遊びに出かけることはほとんどないですね。友だちと飲みに行くこともないんですけど、大学4年生の1月に引退するので、2月、3月は遊びまくろうかと思ってます(笑)。これまでスケート三昧の生活で社会のことを知らなさすぎるので、まずは1度社会に出て、そこからスケートに戻りたくなったら、そのときに戻ったらいいと思ってます。引退すると決めてますので、最後の試合でこれまでで一番と思える演技をするのがいまの目標です。

テニスボールで体の張りをほぐす

――ベストを尽くすためには心身のケアはとても大切だと思いますが、普段実践しているメンテナンスやリフレッシュ法があれば教えてください。

永井:まず肉体面に関しては、フィギュアは柔軟性も問われる競技なので、ストレッチは毎日欠かしません。それでも運動量が多くなると体が張ってくるので、いつでもほぐせるようにテニスボールを持ち歩いてます。授業中は椅子と体の間にボールを挟んで腰回りをほぐしたり、足の裏でコロコロさせたりすることもあります。メンタルに関しては、自分はあまり強い方じゃないんですけど、最近はネガティブな気持ちに振り回されないようにと意識していることもあって、気持ちが安定しやすくなりました。

――フィギュアスケートを通して学んだことは何でしょうか?

永井:たくさんありますけど、一番は何があってもあきらめないで、自分のベストを尽くす精神が培われたことです。周りに流されなくなったし、壁に挑むことを楽しいと思えるようになりました。それにいま現在すごくつらいことや苦しいと感じることがあったとしても、数日、数週間、数年経てば「そんなこともあったな」くらいにしか思わなくなるものです。

――今年は東日本選手権、東インカレでも優勝されていますが、その中で新たな課題が見えてきましたか?

永井:両方の試合で優勝できたのは大きなモチベーションになってますし、去年と比べて成長できたとは思うんですけど、一番の目標はやはり全日本選手権です。去年はふがいない結果になってしまったんですけど、今年はフリー(スケーティング)でジャンプをしっかり跳ぶこと、ミスがない演技をすることはもちろん、みなさんの記憶に残る演技をすることも大きな目標です。最後の大会になる来年の全日本選手権ではこれまでで一番いい演技をして、応援してくださった方に感謝の念を表したいです。そしてこの先の人生で歩んできた道のりを振り返ったとき「フィギュアに一生懸命取り組んできてよかった」と思えるよう、ベストを尽くします!

女性アスリートという生き方

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