陸上

連載:M高史の駅伝まるかじり

元・関東学院大学陸上部主務の林田あやさん、管理栄養士として選手を支える

林田あやさん。「人とのつながり、まわりの皆さんのおかげ」と取材中も何度も感謝の気持ちを口にされていました

私、M高史と同じく学生時代にマネージャーをされていた方にお話をうかがうシリーズの第7弾です。学生時代は関東学院大学陸上部でマネージャー(3、4年では主務)を務め、現在は第一生命グループ女子陸上競技部の管理栄養士としてチームを食で支える林田あやさんにお話をうかがってきました。

シドニーオリンピックを見て、管理栄養士を志す

埼玉県出身の林田あやさんは、小さいころから料理をするのが好きだったそうです。「少年サッカーのコーチをしている父と、料理が好きな母」という両親のもとで育ったこともあってか、子どものころからスポーツにも食にも興味があったそうです。

2000年のシドニーオリンピックで高橋尚子さんが金メダルを獲得されたときに、林田さんはテレビで管理栄養士の役割について特集していたのを見ました。そのとき「将来、女子実業団チームの管理栄養士になりたい」という思いが湧いたそうです。中学時代は5歳上の姉の影響もあって陸上部に。800mや1500mをメインに取り組んでいたそうですが、時には100mや200mにも出場していました。

球技よりも走る方が得意だったという林田さん。中学から陸上を始めます。※腰ゼッケン11番が林田さん

埼玉県立豊岡高校でも陸上部へ。「長距離の部員がいなくて、高校では短距離をやってました。先生から勧められたのが、意外にも400mハードルでした」と、笑顔で振り返ります。

豊岡高校時代は短距離やハードルにも取り組みました

箱根駅伝に感動、目標が二つに

大学では栄養の勉強をしたいという思いは変わりませんでしたが、高2の正月、ターニングポイントが訪れます。「父と観戦した箱根駅伝に感動したんです! 大手町のスタートだけ見る予定だったんですけど、気がついたら往路フィニッシュの芦ノ湖にいました(笑)」。初めて観戦した箱根駅伝の魅力にとりつかれました。「管理栄養士の資格もとりたい。そして駅伝のマネージャーもやりたい」ということで、栄養の勉強をしながら駅伝のマネージャーもできる関東学院大学へ進学しました。

キャンパスの近くに一人暮らしをしながら、マネージャーとして仕事をこなし、管理栄養士の資格をとるため授業もびっしりという生活。「遅い時間に授業が終わっても、グラウンドに駆けつけて、練習の片付けだけでもやってました」という働きぶりだったそうです。

マネージャーの仕事は給水やタイム計測など練習のサポートから、試合のエントリーなどの事務的なことまでありますが、自主的に取り組んだのが、箱根駅伝予選会のコース写真入り地図の作成でした。「交通量が少ない時間帯の道路のほうが選手もイメージしやすいと思って、横浜から始発で立川へ行って、駐屯地以外のコースを歩いて撮影してましたね」

箱根駅伝予選会で選手をサポートする林田さん(写真:左)

さらに栄養の勉強をしていたこともあり、選手たちの食事調査にもトライしました。チーム、監督、選手に許可をとり、各自の食事の内容を調査。「糖質、たんぱく質、ビタミンを意識している選手もいましたし、中には時間がなくておにぎりだけという選手もいました」

2年間主務を務め、選手たちを支える日々

そして3年生と4年生では主務を務めました。大学駅伝の主務はほとんど男子が務めることが多い中、林田さんは2年間、務めあげました。選手が競技に集中できる環境作りを意識して、サポートしていたそうです。

チームとしては箱根駅伝には出場できませんでしたが、毎年、関東学連選抜に選出される選手がいました。箱根駅伝では1~3年生のときは補助員を担当。「黄色のコートを着て走路員をしてました。3年生のときは復路の戸塚中継所で、走りこんできた選手にタオルをかける役でした」。中継所に飛び込んでくる選手のスピード感に驚いたそうです。

4年生のときはすでに引退していたので、関東学連選抜に選ばれたチームメイトの応援です。主務をしながら管理栄養士免許取得のための実習にも行き、無事に国家試験も合格、管理栄養士としての道がスタートします。

二度の転職を経て、陸上部の管理栄養士に

卒業後は管理栄養士として保育園で4年間、帝京科学大学の柔道部で5年間勤務。そして昨年5月から、第一生命グループ女子陸上競技部の管理栄養士になりました。

「保育園では0歳児もいたので離乳食も作ってました。ごはんを作り終わったと思ったら、すぐにおやつ作りです。アレルギーのお子さんもいたので、個別に対応することも多かったです」。ちなみに、保育園に勤めていたときも、スポーツ現場との関わりを持ちたかった林田さん。母校・関東学院大学の合宿所では土曜日夜は各自で食事をとることになっていたので、監督にお願いして夕食を作りに行ったりもしていたそうです。その後転職した帝京科学大学の柔道部は、まったくの別世界! 男子も女子もいて「1度の食事でお米を8kg使ってました(笑)」。最初は保育園とのギャップに驚いたそうです。

そして、昨年5月からは現在の第一生命グループ女子陸上競技部で管理栄養士をしています。さすがに柔道選手ほどではないですけど、マラソン選手もよく食べます。MGC出場権を獲得している上原美幸選手(リオデジャネイロ五輪女子5000m日本代表)については「(よく食べますね。内臓が強いですね。練習で疲れてても、しっかり食べるので体が回復します。とくに高地トレーニングをしても食欲がありますね」と、強さの源について教えてくれました。

厳しい練習の合間にリラックスした食事風景。林田さん自ら調理します

普段は朝昼夕の献立を考え、昼は調理もします。合宿では3食の献立と調理も。「食がすすむように心がけていますが、辛いものが苦手という選手もいますし、個別に対応してます。(個別対応が多かった)保育園のときの経験が生きてるのかもしれません」。味付けはもちろん、盛り付け、彩りについても考えているそうです。

マネージャー経験を買われて練習の手伝いも

「選手が飽きないようにお皿を変えてみたり、食事中のBGMも変えたりもしてます。例えば、ガパオライスのときはタイの音楽。朝食のときは朝に似合う爽やかな音楽ですね。さらには選手の好きな音楽、食事内容に合わせてその国の民族音楽を調べてきて流すこともありますね」。食事中の音楽にまで気を配る徹底ぶり! 選手も「今回はどんな音楽でくるか」と楽しみにしているとか(笑)。

時には、選手同士の会話から好きなメニューを耳にして、さりげなく出してみると大変喜ばれるそうです。

「合宿先では、アメリカ・ボルダーの場合はアジアスーパーがあって、お米、納豆、青魚も手に入るのですが、オーストラリア合宿では近くの(といっても車で40分かかる)スーパーに日本食がなく、メルボルンで買い込んで、5時間かけて車で移動したこともあります」
選手のためなら、どこへでも飛んでいきます。

ボルダーのスーパーで食材を購入する林田さん

栄養面のサポートだけではなく、学生時代のマネージャー経験を買われ、なんとポイント練習のタイム計測を手伝うことも。とくに合宿先ではスタッフの人数も限られているため、林田さんもフル稼動! 給水もするそうです。「いままで経験してきたことが、全部生きてますね!」と、笑って話してくださいました。

学生時代の経験を活かして、給水やタイム計測でもチームをサポート

実際に現場で練習を見ていると、献立を考えたりや調理をする際にもイメージがわきやすいとか。タイムだけではなく、「あの選手は汗の量が多かったな」など、自分の目で確かめられることも多いとか。山下佐知子監督からも「どんどん現場で見てほしい」と言われているそうです。厨房とグラウンドの“二刀流”でチームを支えます。

「選手が目標達成のために頑張っているので、自分も常にレベルアップしていきたいですし、ほか競技の栄養士の方とも情報共有をしていきたいです。栄養学は最新情報がどんどんアップデートされていくため、常に情報交換して、知識を吸収していきたいです」と話す林田さん。子どものときの「女子実業団チームの管理栄養士になる」という目標を実現し、楽しそうに目をキラキラ輝かせて語られていたのが印象的でした!

アスリートを食で支える縁の下の力持ち。林田あやさんの熱いサポートに今後も注目ですね!

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