サッカー

浦和レッズMF長澤和輝、早大大学院で実感している「いま学ぶ価値」

長澤は今年の4月に早稲田大の大学院に進学した(左から3人目が長澤、写真は本人提供)

Jリーグ浦和レッドダイヤモンズのMF長澤和輝(27)は、プロサッカー選手であるとともに大学院生でもある。昨秋、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科を受験して合格。今年4月に入学し、日本陸上競技連盟の理事などを務める平田竹男教授の研究室でスポーツビジネスを学んでいる。現役Jリーガーはどんな未来を見すえ、机に向かっているのか。

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ドイツでの経験を学術的に残したかった

いまになって大学院に通う理由は二つある。長澤は元来スポーツビジネスに関心があったそうだが、現役選手であるうちに学ぶ意義に気づいたことが一つの理由。プロサッカー選手としての視点から、より現実的にプロスポーツの仕組みを捉えたいという思いが湧いてきた。

もう一つの理由は自らの経験に基づくものだ。専修大学で4年間を過ごした後、長澤はドイツのプロリーグへと渡った。所属先は1.FCケルン。そこで過ごした2年間は、非常に貴重なものだったという。

異国の地で活躍するには、相応の苦労が伴うものだ。長澤も生活環境や言葉の壁を乗り越え、チャンスをつかんだ。その経験を分析し、学術的なものとして後進に残すための研究をしてみたかったのだという。長澤は言う。「これまで数多くの日本人選手がドイツのプロリーグでプレーしてきましたけど、どうすれば活躍できるのかを明確なものにして若い選手たちに伝えられたら、彼らにとってはいい材料になりますからね」

ピッチ外ではスポーツビジネスと向き合う

長澤が通う早大大学院の社会人コースの授業は夕方にある。授業がある日だけ大学に行き、一般企業の会社員らと机を並べて受講する。本業との兼ね合いで授業に参加できなければ、クラスメイトにノートを見せてもらったり、パワーポイントのデータを貰ったりしながらインプットしているのだという。

大学院ではサッカーだけではなく、さまざまなスポーツを通じての学びがあると長澤

「大学に行って学ぶことがすべてではなくて、後からでも十分にカバーできます。時間を有効活用しながら学んでいます」と長澤。ピッチから離れればスポーツビジネスと向き合い、大学院では有意義な時間を過ごしている。「僕が通っているスポーツ科学研究科は、平田教授がこれまで培った経験を日本のスポーツ界に生かしたいという狙いがあって始まったものです。各界からいろんな方が参加していて、同期では空手の強化アドバイザーやテレビの報道局の方もいます。それぞれが専門知識を交換し、お互いが学び合うという関係が築けていますね」

サッカー選手の立場からすると、空手やバレーボールにおけるトレーニング方法だけを見ても、さまざまな気づきや発見があるそうだ。「それぞれがいろんな情報を持ってそれをアウトプットしていくので、お互いに情報交換をしながら『こういう感覚でやってるんだ』『こんな視点があるんだ』と思いながら、すごくインスパイアされています」。ほかのスポーツに携わる人とコミュニケーションをかわせる場で、大きな刺激を受けている。

プロ選手と大学院生の両立は難しくない

プロスポーツ選手と研究を両立する上で、長澤は「難しさは感じない」と言いきる。サッカー選手の場合、日々の練習に割かれるのはせいぜい2、3時間。それ以外は基本的に自由時間だ。サッカーに支障が出ない範囲でスポーツビジネスを学んだり、自らの研究テーマに没頭したりするのは十分可能だと長澤は考えた。

「もちろん、休養も必要ですけど、それ以外の時間を使うことはできる。僕は大学時代、教職の科目をとってたので、朝9時から午後6時まで授業で埋まる日もありました。練習する時間は限られていましたけど、それでも大学サッカーで優勝することはできたので、時間の使い方次第でどうにでもなるものなんですよね」

日本のスポーツ界を押し上げるために、長澤は現役のうちから動いた

将来的に長澤は、大学院で得た知識でサッカー界の発展に寄与したいと思っている。そのためにも現役であるうちに学習する価値があると力説する。「いま、日本のスポーツ界を押し上げるために、かつてアスリートだった方々がたくさん活躍されています。そういう意味では現役のうちに勉強するってことがすごく価値のあることですし、選手を経験した人たちが今後のスポーツ界を引っ張っていかなきゃいけない。実際に大学院で学んでいて、そんな思いも強くなっているんです」

修士課程は1年。長澤の歩みは、まだ先へと続いていく。

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