これぞ「昔話し盛り」! 日大生が通う「家庭料理の店 Ryo」で3合強の衝撃
日大商学部の砧キャンパス(東京・世田谷)は住宅街にあり、最寄り駅の祖師谷大蔵駅から徒歩12分とやや遠い。それだけにキャンパスから徒歩1分のところにある「家庭料理の店 Ryo(りょう)」は、学生たちにとってありがたい存在だ。アットホームな雰囲気で、店主の藤野麻知子さんは現役の学生や卒業生らからも「お母さん」と慕われている。さらにRyoには「昔話し盛り」という眼福のメニューがあるのも魅力のひとつだ。
卒業式の日、写真を撮るために来てくれる
「少し前はラクロス部の方がよくおいでになってましたね。あとは野球部の子も。こっちから『何のスポーツやってるの? 』とは聞かないから、有名な選手がいても気づかないこともあります。それでも顔なじみになった子の中には、卒業式の日に『一緒に写真を撮ろう! 』って訪ねてきてくれる子もいましたね」
そう言うと、麻知子さんは顔をほころばせた。20年前の開店当初は、麻知子さんと息子の剛(ごう)さん、麻知子さんの妹の3人で営んでいた。後に製麺所を営んでいたご主人の與作(よさく)さんも加わり、今日に至る。将来的には剛さんと剛さんの奥さん、弟さんがメインで切り盛りするお店にしたいと考えているそうだ。
「昔話し盛り」には断固たる決意で挑め!
ランチメニューは750~950円(価格はすべて税込)の定食中心。メインと白飯、味噌汁に加えて、マカロニサラダ、おしんこ、小鉢と盛りだくさんの内容で、ランチタイムは大盛り無料のうれしいサービス。そして気になるのが、プラス300円の「昔話し盛り」だ。
「昔話し盛りって?」。ほとんどの人が、まずそこから入るだろう。「昔話し盛り」とは『まんが日本昔ばなし』に出てきた超大盛りのごはんを具現化したものだ。早速頼んでみようとしたところ、「絶対無理ですよ。やめた方がいいです」と麻知子さん。これはRyoの決まりごとでもある。
10数年前に「昔話し盛り」を始めて以来、麻知子さんはオーダーしてくれた人を「どう? 食べられそう?」「けっこう食べたわねぇ」「ここからが大変なのよ」と、顔をほころばせながら“応援”してくれる。一方で写真をSNSに載せるためだけに注文し、大量に残す人もいるのが悩みの種だ。食べものへの感謝の気持ちを忘れず、どうしてもチャレンジしたいという人は、食べ残しを持ち帰れる用意をしておきたい。
「しっかり食べますから! 」という言葉とともに「昔話し盛り」をお願いしたところ、大盛りとは比べものにならない“標高”25cmの白米の山が出てきた。
「子どものときに見てた『まんが日本昔ばなし』の食事のシーンがすごくおいしそうに感じられたんです。それで思いついたのが、絶対食べられない“やりすぎ”じゃなく、ギリギリ食べられるか食べられないかくらいのてんこ盛りごはんでした」
剛さんはそう話してくれたが、この「昔話し盛り」はそう簡単には完食できない。「(総重量は)1.2kgぐらいかしら」と麻知子さん。つまり3合超えだ。食べきるのはもちろんだが、これほど高く積み上げるのも容易ではない。「その日の炊き加減にもよりますね。少し硬めだと盛りやすいけど、そうでなくても、この高さにまで盛るには技術が必要ですよ」。剛さんも茶目っ気たっぷりに語ってくれた。どんどん山は高くなっていったという。
おかずの味つけは、白飯と合うことが最優先
超大盛りの白飯(しろめし)をおいしく食べてもらうためにも、おかずの味つけには気を遣っている。なによりも重視しているのは、白飯と合うかどうか。メインのおかずだけでなく、小鉢の中身も白飯との相性を考えてある。
一番人気の「鶏からあげ定食」(850円)は余計なものは足さず、最低限の調味料でシンプルに仕上げているのがポイントだ。はっきりした味付けが好きな人のために塩を添えて提供しているが、そのままでも十分おいしく、白飯との相性もぴったりだ。鶏のからあげに熱々のつゆをかけた「旨つゆからあげ定食」(850円)も人気メニュー。大根おろしがたっぷりかかっていて、さっぱりとした味わいが魅力の一品だ。
また酸味の効いた「豚キムチ定食」(800円)も学生からの人気が高い。こちらも余計なものは加えず、キムチの味を前面に出して仕上げている。シンプルで何度でも食べたくなる味なのだ。
こうしたメニューの開発は、息子の剛さんが担当している。「20年の間に値段は少し上がってますけど、値段に見合った料理を出すってことは、ずっと守り続けてます。これからも学生アスリートをはじめとするみなさんに、家庭の味とくつろげる場所を提供し続けたいですね」。そう話す剛さんをはじめとする「家庭料理の店 Ryo」のみなさんのあったかさは、これからも日大生たちを心身ともに満たしてくれることだろう。