陸上・駅伝

特集:第96回箱根駅伝

過去最高のチーム力で臨む東京国際大、4度目の箱根駅伝で必ずや初のシード権を

笑顔で写真撮影に応じる選手たち。仲の良さが見える一場面だった(すべて撮影・藤井みさ)

箱根駅伝に3年連続4度目で出場する東京国際大学の公開練習と合同取材が12月11日、埼玉・坂戸キャンパスであった。和気あいあいと記念撮影に臨んだ選手たちの様子から、チームの状態のよさがうかがわれた。

箱根の目標は「8位でシード権」

東京国際大は10月26日の予選会でトップ通過を果たし、11月3日の全日本大学駅伝では初出場で4位に食い込み、シード権を獲得。立て続けに好成績を残した。大志田秀次監督はつねづね「箱根ではシード権が目標」と言い続け、全日本のレース直後の取材で「もっと上を狙えるんじゃないですか?」と聞いたときも、ぶれることはなかった。しかし、今回の合同取材で初めて「8位でシード権」と、目標順位を明言した。その理由については「学生たちがそこを目指したいと言ってきましたので、そこで私だけが『シード権、シード権』といい続けても変だろうと」。学生の意見を尊重したことを明かした。

主将・内山いわく「大志田監督は、みんなのお父さんみたい」。選手全員に気を配り、話をしているという

しかし、こうも続けた。「全日本がよかったので評価してもらったけど、あれは1日のレース。箱根は2日間あるし、みんな(参加校)の思い入れが違います。11月末にドーンといい記録が出たりしましたし……」。実際、日体大記録会(11月30日、12月1日)の結果などを見て、選手たちがざわついたという。監督は「練習を見れば分かるんだから気にするな、と言いました。今回のエントリーでも29分29秒、39秒の者が落ちてます。チーム内での切磋琢磨(せっさたくま)ができてる形です」と語る。

好結果を残している中、「どうして今年は強いんですか?」と聞かれることも増えたという。それに対し監督は「今年だけが特別というわけではないです」と口にする。「前回(95回)大会である程度今回の箱根を想定した区間配置をして、4区が終わった時点で10位でした。ある程度できるよね、と確認してました。しかしその後の山だったり、9区、10区でうまくいきませんでした。そうなったときに『全員が長い距離、アップダウンのある9区、10区を走れないと勝ち残れないよね』というのを確認してからスタートしたチームです。あの箱根という舞台で緊張せず、どう力を発揮できるか。普段の練習や大会で確認し合った1年でした。そういう意味での成果を確認できる舞台でもあるので、楽しみにしています」

今年は伊藤(前列左)とヴィンセントが引っ張る。切磋琢磨して強くなってきた

穏やかに語ってくれた大志田監督。学生スポーツである以上、4年生を最高地点にしていくという思いで指導しているという。「過去最高のチームができていると思います」。監督はそう言いきった。

主将の内山「チームのみんなに支えられた」

内山涼太(4年、八千代松陰)は立候補して主将になった。「僕と真船(恭輔、4年、学法石川)が立候補して、その2人以外の4年生が話し合ってくれて決まりました」。積極的にチームを引っ張ってる姿が目立つ内山だが、意外にもリーダーの立場は初めてだという。「8月の夏合宿の終わりごろに左足をけがしてしまって、そのときはどうやってチームメイトに声をかけたらいいか分からなかったりして、キャプテンとして苦労しました。自分がつらくて落ち込んでると、どうしてもチームの士気を下げてしまうんで、息苦しく感じたこともありました」

そんな時期の内山を救ってくれたのは選手の仲間たちであり、スタッフだった。「4年生に限らず、チームのみんなに助けられた1年でした。つらいときに監督がご自宅でバーベキューを開いてくれたりもしました」。チームの雰囲気がとてもいいですね、という問いかけには「雰囲気だけは負けないように心がけてます」と返した。

中学まではサッカー部だったという内山。「ワールドカップ目指したかったです(笑)」といって笑わせた

「ここにいるメンバーだけでなく、全員が何かやってやろうという気持ちです。4年生は1年のとき箱根駅伝に出られず、つらいことも経験した学年でもあるので、下級生に同じ経験をさせないようにしないといけないです。歴史が浅い分、僕たちが動くことで(歴史が)変わっていくので、後輩たちが超えられないぐらいの歴史を作ってやろうとは思ってます」と、たのもしい。

副将の真船は「僕は副将らしいことは何もしてないです」と笑う。「内山に任せっきりになっちゃってたので。今回はしっかりチームをまとめるというか、士気を上げていければいいかなと思います」

背中で語るエース、伊藤達彦の存在は大きい

4年生たちは入学当初から仲がよく、切磋琢磨しながらみんなで強くなってきたという意識がある。真船は言う。「仲がいい分、意識し合うところがあります。『あいつが走ったから俺も頑張んなくちゃ』って。達彦(伊藤、4年、浜松商)はすごい努力をしてきて、そこを邪魔しちゃいけないって思いもあります。駅伝は一人で走るんじゃないんで、彼が走った分、僕らも頑張ればそれだけ結果に現れてきたんで、刺激を受けて頑張りたいですね」と話す。努力を怠らず、4年生になってユニバーシアードに出場し、箱根駅伝予選会でも日本人トップで走った伊藤は、やはり大きな存在だ。

実際、伊藤が驚異の13人抜きでトップに立った全日本大学駅伝2区の走りを見て、真船は「気分が上がった」という。「(前の週に)予選会を走ってても走れるんだな、いけるかもって。それまでは緊張してたんですが、達彦の走りを見て少し気が楽になりました」

伊藤の走りを見て真船は「出し切れば、自分もいけるかも」と思えたという

内山は「僕が生活面とか、チームの士気を上げる面を担当してますけど、競技者としては達彦が引っ張る感じです。彼は本当になんにも言わなくて、自分のやるべきことを自分のためにやる、という感じ。それを見て後輩たちが伸びてます。彼なしではこのチームの強さはなかったです」と、同期のエースへの思いを口にする。

東京国際大のエース伊藤達彦「最後は勝って終わりたい」 目指すは2区の区間賞

何かやってくれそう、それが東京国際大

真船は福島・学法石川高校の出身で、同級生には東洋大の相沢晃や明治大の阿部弘輝がいる。「個人では絶対かなわない相手なんですけど、この間の全日本もうちが4位で、東洋が5位で。すごくうれしかったです。自分一人じゃ勝てない相手に、チームで勝てたことが」

一人だけの力では勝てないし、力を合わせればすごい選手のいるチームにも勝てる。それこそが駅伝の醍醐味でもある。「チーム」としてのまとまりを感じさせる東京国際大はやはり、「何かやってくれそう」という雰囲気を感じさせた。1月3日、彼らの襷(たすき)は何番目に大手町のゴールにたどり着くのだろうか。

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