陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

箱根駅伝の「チームエントリー」「区間エントリー」「当日変更」の裏側、教えます

エントリーメンバー後の記者発表の様子です。監督たちの表情はにこやかですが、勝負はもう始まっています(撮影・藤井みさ)
元中央大陸上部主務・木村泰人さんが描くマラソンの未来予想図

いよいよ箱根駅伝がそこまで近づいてきました! 12月10日にはチームエントリーで、各チーム16人の選手がエントリーされました。そして12月29日の区間エントリー、そして大会当日の選手変更と続いていきます。「何が違うの? 」「どういう狙いがあるの? 」と思われる方も多いのではないでしょうか。今回はそんなお話です。

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12月10日の記者会見、僕も学生時代に登壇しました

まずは12月10日、チームエントリー後の記者発表では、各チームの監督と主務がメディアのみなさまの前でチームの状況と10000mの平均タイム、今大会の抱負などを話します。各チームとも主務、監督の順で発表します。

第82回、83大会(2006、07年)の記者発表では、駒澤大学の主務だった僕も登壇させていただきました。とくに3年生のときは前年度優勝校(4連覇中!)ということもあり、トップバッターでした! 何を話すか事前に下書きをして、大八木弘明監督に確認していただき、本番前にも寮のマネージャー部屋で練習をしてから臨みました(笑)。目の前には見たこともないほどたくさんのカメラと記者さん。手に汗をかくほど緊張したのを、いまでもよく覚えてます。

主務のコメントの後は監督が話をされます。大八木監督は箱根駅伝の運営管理車からの「大八木節」のような熱い感じではなく(笑)、記者発表の際はいつも冷静にチーム状況や目標を話されます。

監督たちのうしろに各チームの主務が控えています。前回の順位+関東学生連合チームの順で一人ずつ発表します(撮影・藤井みさ)

前回大会の5位までの監督が、続く「監督トークバトル」にも登壇されます。僕が学生のときは一足先に寮へ帰って選手のサポートやマネージャーの仕事をしていました。一人の陸上大好き人間としてはトークバトルの内容も気になるところですが(笑)、なるべく早く帰り、いつものマネージャー業に戻ってましたね。

区間エントリーの補欠にエースがいるわけ

チームエントリーが終わると、次は12月29日の区間エントリー、そして当日の選手変更です。当日の選手変更は、区間エントリーされた人同士の変更はできず、補欠に回っている選手がエントリーされる形になります。当日変更は最大4人まで可能です。

箱根駅伝は12月29日に区間エントリーですから、往路は中3日、復路は中4日と時間があるのがポイントです。ほかの駅伝大会では、大会前日に区間エントリーをして、当日は急病やけがなどのアクシデントで医師の診断が必要な場合のみ、補欠選手をエントリーするパターンがほとんどです。

29日の区間エントリーの時点では、エース格の選手を補欠に回すチームが多いです。戦略を読まれたくないという面はもちろんありますが、それとは別に、想定外のことが起きたときに対処するため、いうのも一つの理由です。

仮に29日の時点でチームの1番手から10番手の選手までを10区間にエントリーし、補欠は11番手以降の選手でそろえたとします。エース区間を走る予定だった選手が風邪をひいてしまった場合、11番手の選手がエース区間を走らざるを得ません。そういった事態を防ぐために、エース格の選手もいったん補欠に入っているのが、箱根駅伝の区間エントリーでは一般的です。エース格の選手のほかにも、5、6区の山区間を走れる力のある選手、またはどこでも走れる器用な選手は、いったん補欠に回っていることが多いです。

往路スタート前、各チームの最終エントリーがスタートエリア側に張り出されます(撮影・松永早弥香)

いつ何が起こるか分からないのが箱根駅伝です。最後の最後(当日の朝まで)、どんな立場の選手も走るための準備は怠りません。

冷え込むこの時期は体調不良やけがのリスクも平時以上でしょう。体調管理を徹底している選手のみなさんも、体調を崩すことはあります。日ごろから鍛錬しているアスリートですから体脂肪が少ないですし、箱根駅伝前ともなるとさまざまなプレッシャーもあり、免疫力が低下することがあります。エントリーメンバーはもちろんですが、メンバーに入れなかった部員やマネージャーも、体調には細心の注意を払います。寮生活をしていますので、風邪が流行すると大変です。

マネージャーもみんな、チーム一丸となって挑む

僕が駒澤大学の主務として戦った第82回大会は、亜細亜大の総合優勝で幕を閉じました。監督としてチームを率いた岡田正裕さんは今年、拓殖大の監督を勇退されました。岡田さんは「一人一役」をテーマに掲げ、チーム作りをされてきました。走る選手はもちろん、走れなかった選手もマネージャーも一人ひとりが自分の役割をまっとうし、それぞれが最高のパフォーマンスを発揮しようというのが、岡田さんの教えでした。まさに「チーム一丸」となっている大学は強いですね。

現役部員とともにOBもサポートにまわります。前回、僕も1区の沿道でボードを掲げ、選手の走りをサポートしました(写真は本人提供)

マネージャーのみなさんも日々の練習のサポートはもちろん、レース当日にサポートする部員の動きをまとめた配置表の作成、メディア対応、OBや関係者のみなさんへの連絡、提出書類の作成……。業務は多岐に渡ります。

怒濤(どとう)の日々だとは思いますが、マネージャーのみなさんも体調に気をつけて乗りきってほしいですね。各チームの選手のみなさんはもちろん、走れなかった部員のみなさん、マネージャーのみなさんのことも全力で応援したいと思います!

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