大学ラグビー

特集:第56回全国大学ラグビー選手権

11シーズンぶり王者の早稲田 決戦、その瞬間の思い【齋藤・岸岡・幸重 ホンネ鼎談1】

岸岡、齋藤、幸重(左から)の3人が、あの一戦とラストシーズンを振り返る(撮影・佐伯航平)

新たな国立競技場に11シーズンぶりの「荒ぶる」が響き渡った。1月11日、ラグビーの大学選手権決勝で早稲田大(関東対抗戦2位)が明治大(同1位)と対戦し、45-35で41日前のリベンジを果たした。

4years.編集部では、3人の4年生に決戦を振り返ってもらいました。すべてのキックを成功させた主将のSH齋藤直人(桐蔭学園)、冷静にゲームメイクし続けたSO岸岡智樹(東海大仰星)、接点やセットプレーで体を張った副将のFL幸重天(ゆきしげ・たかし、大分舞鶴)。もちろん試合以外にも、相良南海夫監督(50)が率いて2シーズン目のチームの変化などについても大いに語ってくれました。全3回でお届けする鼎談の初回は、決勝のあの瞬間、何を思ったのかについてです。

早稲田が明治を下し、11シーズンぶりの大学王者 「荒ぶる」を高らかに
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FWから「モールを組みたい」

――大学選手権に優勝して数日が経ちました。率直にいまの気持ちは?

幸重:2、3日経って、やっと優勝したという実感が湧いてきました。

岸岡:うれしいという言葉に尽きるかな。大学1、2、3年生と悔しい思いをしながら、やっと4年目に結果として報われたかなと思いました。

齋藤:うれしいのはもちろんですけど、ホッとした気持ちもあります。(自分たちは)期待されてた代でしたけど、(対抗戦の)早明戦でボロ負けして、このまま終わってしまうのか、変わって勝てるのかが分からなかった。何だかんだ決勝までいけて勝てたので(うれしいとホッとしたのと)半分半分ですね。

――まず明治との大学選手権の決勝から振り返ってもらいたいと思います。その前に、齋藤キャプテンは決勝に向けて髪を切っていましたね。サイドを刈り上げてきました。

主将の齋藤(手前)は準決勝、そして決勝の前にも髪を切った(撮影・安本夏望)

岸岡:気合い入れてたね!

齋藤:(CTBの中野)将伍(4年、東筑)と同じ美容室に行きました。でも「ここで色気を出したらダメだ」と思いました。 

幸重:髪をセットしたらダメだと(苦笑)。

齋藤:だから決勝にはジェルやワックスをつけず、あえてボサボサにしていきました!

――それでは決勝、どんなプランで臨もうと思っていたのでしょうか?

岸岡:プランとしては、最近の早稲田は、セットプレーから少ないフェイズで(トライを)取るパターンと、かなりフェイズを重ねて(トライを)取るパターンと2種類がありました。だから試合前はサインで崩す練習ばっかりしてて、サインミスをしたときにどう戦うかだなと思ってたけど、前半はあれだけサインプレーがはまるのか、と。

齋藤:一つ目の(No.8丸尾)崇真(3年、早稲田実)のトライは、(ラインアウトからの1次攻撃で)ボールがきれいに出る体でやってたんですけど、ラックからボールがこぼれちゃって、それでも(CTB中野)将伍がうまく伸びてくれました。(対抗戦の)早明戦ではキックしていたエリアからもアタックしようと話していたけど、その機会はなかったよね?

岸岡:なかったけど、そのエリアからの練習、サインプレーを用意してただけでも、心の余裕があった。

幸重:FWは練習が終わった後、サインプレーで誰が入ってもできるように確認しましたし、(対抗戦の)早明戦ではゴール前のラインアウトでめちゃくちゃ競られたので、特別なサインをたくさん作って、確実に(ボールを)取れるようにって準備してました。

――二つ目はラインアウトからの1次攻撃でCTB長田智希(2年、東海大仰星)がトライ。三つ目はFWがモールでトライを挙げましたね。

準決勝の天理戦からずっと、FWはモールにいい感触を持っていたという(撮影・谷本結利)

幸重:いままで見せてないオプションだったので、競られなかったです。下川(甲嗣、3年、修猷館)を前で見せて、僕が後ろに入っていって、パッと取って押し込みました。 

岸岡:最初はもっとポイントが真ん中だった気がして、僕はショットかなと思ってたら、実際はライン際15mくらいだったので、下川とかFWから「モールを組みたい」と熱い要望がありました。

齋藤:そうそう! あのとき最初は「スクラムを組みたい」という選手もいたけど、「ちょっと待てよ」と。「ラインアウトからでもトライ取れよ!」と思いました。

幸重:(準決勝の)天理戦からモールはいい感触がありました。結果、ラインアウトでよかった。明治のお株を奪うじゃないですけど、キツかったんじゃないでしょうか。

31-0で迎えた後半、どんどん相手ペースに

――四つ目は、FL相良昌彦(1年、早稲田実)がトライを取って31-0とリードし、試合を折り返しました。ハーフタイムではどんな心境だったのでしょうか? 

齋藤:やっぱり怖かったです。どう思った?

岸岡:勝ったと思った。

幸重:いけるかもと思ったけど、この気持ちを持ったらダメだぞって思ってました。

齋藤:僕も一緒で、そう思ったらダメだと言い聞かせてました。

岸岡:1年生のときの(大学選手権準々決勝の)同志社戦は(0-31でリードされて)逆の展開だったけど、早稲田は追いつけませんでした。明治の監督さんが言った通り、前半がすべてだったと思います。

――でもやっぱり、後半3分でトライされたときは焦りましたか?

幸重:0-0の気持ちでいこうと話してたけど、3分でこれか、やばいと。3年生のときの(対抗戦の)早明戦も結構リードしたけど、最後は追い上げられました。

後半開始早々に明治の反撃が始まった(撮影・谷本結利)

岸岡:くると分かってても止められなかった。対抗戦のときの早明戦に似た雰囲気がありましたね。前半はゆっくりやってたけど、急がなければならないような圧、プレッシャーがありました。

齋藤:ゴール前で全然トライが取れなくて、相手のディフェンスが破れませんでした。

幸重:後半、明治のやりたいアタックをされてて、嫌だなと思ってました。逆に僕らのアタックで明治が崩れなくなってきて、どんどん相手のペースになっていく感じがありました。

――そんな中でも後半10分、相手のスクラムをターンオーバーして攻撃を継続して、トライを取りきりました。

幸重:あのスクラムでペナルティーを取られたら、相手にペースがいってしまう。だから「ペナルティーはなしにしよう」と話してて、いい形でプレッシャーをかけられて、早稲田に流れがくるポイントになりました。FWとしてはしっかり継続して、少しでもオーバーラップ(数的優位)を作ればBKが取りきってくれると話してました。

齋藤:(対抗戦の)早明戦の後、少しブレイクダウンが変わりました。まず2人目が(相手を排除するように)いききりました。

幸重:試合を通して、ブレイクダウンでのノットリリース(・ザ・ボール)の反則がゼロでした。 

岸岡:いつもは反則が8個とか10個だったんですけど、早稲田の反則は(後半4個と)少なかったですね。前半はゼロだった。

苦しい場面で「8単」が決まった

――明治に連続3トライをされて、後半30分で10点差になったときはどうでしたか?

幸重:やばい、負けるかもと思いましたね。

岸岡:その前の後半20分で17点差になったとき、返せる点差なのでやばいと思った。

齋藤:キツくて、そのあたりのことはあまり覚えてないです(苦笑)。10点差になり、アタックしてるときは「どうしよう」と思ってましたね。相手のディフェンスを破れないし、前に出られない。裏に蹴ろうとも思ったけど、ボールは保持しておこうと話してました。

岸岡:セットプレーから決まったプレーではかなりチャンスがあったけど、ボールを継続しても得点できる像があまり見えてませんでした。

――そんな中で、後半34分にスクラムからNo.8丸尾が抜け出し、最後はWTB桑山淳生(4年、鹿児島実)がトライ。45-28として勝負を決めました。

スクラムのサインプレーから展開し、WTB桑山がダメ押しのトライを決めた(撮影・安本夏望)

齋藤:スクラムからの「8-9」のサインプレーでした。

幸重:スクラムを若干押されたけど、逆にそれで相手のフランカーが(バックアップでディフェンスに回るときに)コケてた。試合前から「8単(エイタン)」を入れて、相手にスクラムだけに集中させないようにしようと話してました。明治も「丸尾、8単」ってずっと言って警戒してたし。

岸岡:最初から使うかという議論もしてました。(8単を)使うタイミングもよかったです。このトライで「勝った!」と思いました。

――結果、45-35で勝ちきりました。

齋藤:ここ数試合で一番しんどかったですね。走行距離もみんな、めっちゃくちゃ出てました。

岸岡:齋藤が一番走行距離のデータが出てて、8kmくらいでした。

齋藤:最後の方は足がつりかけてました。ホーンが鳴った後もしっかりと全員が走れていたのが、このチームの成長したところかなと思います。

幸重:最後は(脳しんとうで交替してピッチに)いなかったんですけど、守りきってくれました。

岸岡:途中、しんどい時間もあって「時間が早く過ぎて試合が終われ」と思いつつ、新しい国立競技場の大観衆の前でもう早明戦はできないので、「もっと続いてくれ」とも思ってました。

幸重:僕は「早く終われ」としか思ってなかったですね(苦笑)。

ノーサイドの笛が新国立競技場に鳴り響き、歓喜の瞬間が訪れた(撮影・谷本結利)

●齋藤・岸岡・幸重 ホンネ鼎談

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