言い訳せず、プラス思考で「台風の目」に 東京大学・笠原健吾主将
8月10日に開幕する東京六大学野球春季リーグ戦で、東京大学は昨秋王者の慶應義塾大学との開幕戦に臨みます。新型コロナによる活動停止期間が約4カ月と、六大学では一番長かった中、懸命にチームを仕上げてきた笠原健吾主将(4年、湘南)に話を聞きました。
全体練習が再開されたのは開幕の20日前
笠原が1年の秋(2017年)、東大は慶應大に勝ってリーグ戦2季ぶりの白星をもぎ取ると、法政大とのカードに連勝。30季ぶりに勝ち点を挙げた。最下位脱出こそならなかったが、早稲田大と並ぶ5位になっている。だがこの法政大戦を最後に白星から遠ざかり、昨秋まで重ねた連敗は引き分けを挟んで『42』。笠原は「先輩たちが残してくれたものを活かせていないのは、僕たちの責任です」と話す。
まずは1勝を。元プロの井手峻(たかし)氏を新監督に迎えた東大は、連敗ストップに向け、春の練習を順調に消化していった。チームの状態も良かった。オープン戦では1年秋にリーグ戦デビューを果たした笠原や、昨秋までリーグ通算50試合出場の岡俊希(4年、小倉)ら、神宮経験豊富な野手が引っ張っていた。笠原によると今年のチームは、井手監督が選手の考えを尊重するのもあり、一人ひとりが主体的に動けるのが特徴だという。
ところが新型コロナウィルスの影響で、3月27日よりチームとしての活動が停止に。期間は東京六大学では最も長く、全体練習が大学から許可されたのは7月20日。春のリーグ戦開幕の20日前だった。
「長かったというより、不安の方が大きかったですね。いつから野球ができるようになるか全くわからなかったので。(東京六大学の)他校はほとんどが6月上旬には活動を再開していたので、焦りもありました」
東大球場でのチーム練習が再開されても、最初の1週間は時間と人数が制限された。通常の形に戻ったのは翌週から。まだ対外試合は認められていないことから、オープン戦もしていない。
約4カ月の活動停止による一番のマイナスは、実戦感覚が鈍ったことだという。トップバッターを任されるのが濃厚な笠原は「投手の生きた球に目を馴らしている段階です」と明かす。
真剣勝負の野球ができるのは今年が最後
戦う前にハンディを負った形になってしまったが、笠原は練習再開の遅れを言い訳にするつもりは毛頭ない。
「時間がないのは確かですが、その中でいかにペースを上げるか。これがチームの合言葉になっています。コロナ禍の中でリーグ戦ができるのはありがたいことなので、開幕までにしっかり仕上げていくつもりです」
チーム内のコミュニケーションも取れている。活動停止中もほとんどの部員が改築で今年3月に生まれ変わった一誠寮に残ったため、一体感は保持された。
スイッチヒッターの笠原は3年春、チーム最多の安打をマークした。守備では二塁と遊撃を堅実にこなすが、野球は大学までと決めている。真剣勝負ができるのはあと2シーズン。春のリーグ戦への思いも強いが、個人的な目標は全く設定していない。「主将でもありますし、チームがいい方向にいくためにできることは全てやるつもりです」
春のリーグ戦が1試合制総当たり形式で行われることはプラスにとらえている。東大は過去の歴史を振り返ると、1カード1勝することはできても、(勝ち点奪取のための)2勝目が高いハードルになっているが、「一発勝負の1試合制ならチャンスはあると考えています」。
ゲンもいい。東大は前回1回戦総当たりだった終戦直後の1946年春、4勝1敗で2位になっている。これは東大にとって最高順位である。加えて開幕戦でぶつかる慶應大は井手監督が東大投手時代に相性が良かったチームで、4年春(1966年)は慶應大から2勝を挙げている。
ネガティブになることなく、プラスになる要素は全部自分たちの武器に。まずは1勝の扉を開き、真夏の神宮で“東大旋風”を巻き起こす。
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