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連載:野球応援団長・笠川真一朗コラム

同志社大学の四川雄翔主将 最後の同立戦で意地の3安打 

同志社大学の主将としてチームをまとめた四川雄翔(撮影・すべて笠川真一朗)

4years.野球応援団長の笠川真一朗さんのコラムです。各地の秋季リーグは大詰め。関西学生は近畿大学の3季ぶりの優勝で幕を閉じましたが、4年生にとっては最後となる伝統の一戦を感じるため、甲子園を訪ねました。

逆転で立命館大の優勝の可能性消す

関西学生最終の第7節。同志社大学対立命館大学の「同立戦」に注目した。2勝すれば近畿大学とのプレーオフに進めるという優勝の可能性を残していた立命、それに対して優勝はなくなっていた同志社がどのように挑むのか。どちらにせよ、現在のチームで戦うのは最後だ。勝って終わりたい。そんな両チームの熱いぶつかり合いに期待した。

試合は接戦の末、2-1で同志社が勝利。同志社は同立戦では2年ぶりとなる勝利を果たし、立命の優勝の可能性を消し去った。僕が注目したのは同志社4年の四川雄翔(よつがわ・ゆうと)主将だ。この試合では五回裏に同点に追いつくタイムリーを放つなど、立命の有村大誠(4年、秀岳館)から3安打の活躍。チームに大きな流れを呼び込んだ。

大事な試合で3安打と奮闘した

四川が打つとベンチからは「よっちゃんナイスバッティング!」と歓喜の声が飛び交う。チームメートから「よっちゃん」という愛称で親しまれる主将。その信頼感は抜群だ。澁谷卓弥監督は「四川にはキャプテンシーがある。人をまとめる力というか。それが行動にも言葉にも表われいてるので信頼している。すごく良い人間です」と歯切れよくハッキリと言い切った。そして副将、小川晃太朗(4年、龍谷大平安)は「まさに背中でみせる主将。主将を決めるときも満場一致で四川。自分が活躍しててもしてなくても、チームが苦しいときに鼓舞するような声をみんなにかけてくれます。めちゃくちゃいいやつです」と敬意を示した。

履正社高でも主将

四川は履正社高時代にも主将を務めた。「高校時代は全員甲子園を目指して履正社に来ていました。だから別に僕が何も言わなくても自然にみんな練習もやってくれるチームでした」と当時を振り返る。大学での主将はどうだったのかを問うと「大学はいろんな人が野球部に入ってきます。スポーツ推薦の人もいれば、一般入試で入ってくる人もいます。だから全員と同じ目線に立って、コミュニケーションを取ってきました」と主将としての取り組みを語ってくれた。四川はチームメートのどんな人間に対しても分け隔てなく会話を積み重ねることで、チームをひとつにしようと牽引してきた。

伝統の同立戦では2年ぶりの勝利だった

主将として選手として戦い続けてきた四川は「絶対に勝ちたい、負けられない」と語る試合で、プレーでもチームを勝利へと導いた。「泣いても笑ってもこれで最後。ほとんどの4年生が野球を続けないので。最後はみんなで力を出し切りたくて1週間練習してきました。同立戦で勝つのは2年ぶり。今までずっと負けて嫌な終わり方をしてきたので、絶対に負けられないという気持ちでした。順位は決まっていても勝ちにこだわる。それをしっかりみんなで体現できたと思います」と語る言葉に力強さを感じた。

四川自身も野球を続けない。正しく言うと続けられない。上の世界で野球をやるには声をかけてもらわなければならないからだ。社会人野球やプロ野球の世界でプレーすることは本当に難しい。四川でさえ厳しいのだ。その悔しさはあると素直な気持ちを語ってくれた。だからこそ、この試合にかける思いは強かっただろう。きっと噛み締めるようにプレーしたはずだ。

2番打者のこだわり

この日の3本の安打も決して綺麗な当たりとは言えなかった。でもその安打に四川の気持ちが表われていたのかもしれない。そこには2番に座る打者としてのこだわりも垣間見えた。「簡単にアウトにならないように意識しています。アウトになったとしても良いアウトに。追い込まれてもしっかり粘り、選球眼にはこだわりを持っています」と語る。

この日はどの球種もコースに決まり、比較的まとまっていた有村の投球に対して、しっかりと球を見極めて、甘く入ってくる球を逃さなかった。「有村はストレートも走っていたし、スライダーもキレていました。まとまっていたのでそれを良いように考えて。積極的に振りにいったら内野の間を抜けてくれました。チームに良い波を持ってこられてよかったです」と謙虚に振り返る。取材中も他人を思いやる発言が多かった。そんな姿を見ていると、チームメートから愛される理由が僕にも確かに伝わってきた。人間としてすごく魅力的だと感じた。これが今年の同志社の主将だ。かっこいいと思う。

「主将になってみんなが支えてくれた」

四川は大学野球生活を振り返った。「正直、野球に関してはつらいことの方が多かったですね。チームでも個人的にもいい成績を残せなかったので。もっとみんなで勝ちたかったなって思います。でも仲間には本当に恵まれました。主将になったときもみんなが支えてくれたので」と正直な気持ちを口にした。そして最後まで仲間への感謝を忘れない。そんな言葉にはすごく重みを感じた。

成績のことはこれから先忘れたとしても、仲間との4年間は決して忘れることはないはずだ。それだけでも大きな財産だ。チームのことをこれだけ考えられる四川主将のもとで、学生野球を終えれたチームメートは幸せ者だと思う。それは選手たちも実感していることだろう。

「野球にいろんなこと教わった」

卒業後は就職する。「僕は野球にいろんなことを教わってきました。それを社会でも生かしたいです。そしてもし野球に携わる機会があれば、次の子たちに自分が学んできたことを伝えたい」と言う。自分と向き合い、人に寄り添い、人に支えられながら、様々な苦楽を経験してきた四川の優しさと強さは、きっと社会に出ても変わらず誰かを救うだろう。僕はどうも四川を見ていると、そんな気がしてならない。

学生野球生活、そして主将としての1年。本当にお疲れさまでした。これからも応援しています!

野球応援団長・笠川真一朗コラム

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