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関西学院大、立命館大のOBがエール 28日に甲子園ボウルをかけて決戦

最後のライバル対決に臨む関学のQB奥野(左、撮影・北川直樹)と立命のRB立川(撮影・篠原大輔)

アメリカンフットボールの関西学生リーグ1部は11月28日、トーナメント決勝で関西学院大学と立命館大学がぶつかる。2016年に全日本大学選手権に関西から2校(19年からは3校)が出られるようになると、両校が甲子園ボウル出場をかけて4年連続して「2度目の関立戦」に臨み、すべて関学が勝ってきた。今年は選手権が中止となり、決勝の勝者が甲子園ボウルへ進む。関学が勝てば5年連続の甲子園ボウル出場、立命なら5年ぶり。

5年ぶりの一発勝負

4years.では社会人Xリーグでプレーする両校OBに大学時代を振り返り、5年ぶりの一発勝負に臨む後輩への思いを語ってもらった。関学は昨年の甲子園ボウル最優秀選手でアサヒ飲料チャレンジャーズの阿部拓朗さん(22)、立命は5年前に甲子園ボウルに出たときのQB(クオーターバック)でみらいふ福岡SUNSの西山雄斗さん(25)です。

関学WRだったアサヒ飲料の阿部拓朗さん

阿部さんは11月14日のX1AREA西日本のトーナメント(参加4チーム)決勝で社会人として初のタッチダウン(TD)を決め、勝利に貢献した。「TDをとったパスは練習ではやったことのないルートやったんですけど、それまでのシリーズであそこが空くのは分かってたんで、チームでコミュニケーションをとって狙いました。ごっちゃんのTDです」。関学出身のWR(ワイドレシーバー)らしいクレバーさが生きた。

阿部さんはXリーグのアサヒ飲料でプレーを続けている(撮影・篠原大輔)

関学の4年生で副将だった昨年のシーズンは苦しんだ。リーグ4戦目の神戸大学戦で17―15と大苦戦。全勝で迎えた最終戦で1敗の立命と戦い、7―18で負けた。同率優勝ながら2位扱いとなり全日本大学選手権へ。最終戦から中5日で西南学院大学、さらに中7日で神戸大と戦って勝ち、立命との西日本代表決定戦にたどり着いた。

「あんな試合はもう経験できない」昨年2度目の対戦

阿部さんは立命との再戦を振り返り、「あんな試合はもう経験できないと思います」と言った。「自分のすべてをかけて、やってきたことを証明しようと。試合前は涙が出るぐらいたかぶってました。あんな気持ちになることは、もうないと思います。あればいいんですけど」。再戦は21―10でリベンジし、4年連続で甲子園ボウルへコマを進めた。

阿部さんは昨年の甲子園ボウルで10キャッチ135ydで2TD。最優秀選手に(撮影・安本夏望)

立命との戦いでとくに期待する後輩を尋ねると、阿部さんは4年生のQB奥野耕世(関西学院)とWR鈴木海斗(横浜南陵)、2年生のWR糸川幹人(箕面自由学園)を挙げた。奥野と鈴木にはここまで2試合の試合前と試合後に連絡をとっている。「引退の日が近づいてきました、ってふざけて返してくるぐらいなんで心配してません」と笑う。「去年の代表決定戦はランに助けられたから、今年はパスで勝ってほしい。そのためには、この3人に頑張ってもらわないと。ボール勘がすごい梅津(一馬、2年、佼成学園)も出てきました。バック(RB)陣も急成長してて頼もしいです」

最後に阿部さんは願いを込めて、こう言った。「4回生は4年間のすべてを出しきってほしい。ほんとに勝ってほしいです」

立命QBだった福岡SUNSの西山雄斗さん

西山さんは2018年春に立命館大を卒業してから福岡県内で働いている。社会人になった当初は立命館宇治中学校から10年間やってきたフットボールを続ける気がせず、福岡SUNSから誘われても断っていた。しかし「そんなに自分が必要とされているなら、そういうところでやるのもいいかな」と思い直し、約1年のブランクを経て競技に復帰した。福岡SUNSのエースQBで、副将としてもチームを引っ張っている。X1AREA西日本のトーナメント決勝でアサヒ飲料に敗れると「自分次第で勝てた試合でした」「ラッキーパンチのゲームではなく、安定的にドライブしないと」と、反省の弁が口をついて出た。

みらいふ福岡SUNSの副将として奮闘する西山さん(撮影・篠原大輔)

大学時代は2年生だった15年から同学年のRB(ランニングバック)西村七斗、WR近江克仁らとともに中心選手として活躍。チームとして5年ぶりに出た同年の甲子園ボウルで早稲田大学に競り勝った。ライスボウルではパナソニックに惜敗したが、西山さんは鋭いパスで東京ドームを沸かせた。ただ、その翌年から関学との再戦に負け続けた。4年生の17年は西日本代表決定戦の試合中に負傷退場し、サイドラインで仰向けに寝かされたまま戦況を見つめた。負けて横になりながら泣いていた西山さんの姿が忘れられない。

万博記念競技場の前を通ると思い出す関立戦

今年も関立決戦の舞台となる万博記念競技場(大阪)の前を車で通るたび、西山さんは学生時代の関学戦を思い出すそうだ。「人生で一番緊張したし、興奮もしました。大学のときは毎日がフットボール漬けで、毎日の濃さが違う。後輩には絶対勝ってほしいですね」

4年生のリーグ戦での関学戦でTDを決め、仲間に持ち上げられてガッツポーズの西山さん(撮影・篠原大輔)

とくに思い入れのある後輩は主将でエースRBの立川玄明(たつかわ・ひろあき、4年、大阪産大附)だという。西山さんの学生ラストイヤーは、絶対的なエースだった西村七斗が春に大けがをして、秋のリーグ戦終盤まで戦列を離れた。その間、1年生ながらパワフルなランで西村の穴を埋めたのが立川だった。「七斗がいない間、ほんとにいいプレーをしてチームに貢献してくれました。今年はアイツのチーム。一番頑張ってほしいです」と熱っぽく語った。

最大のライバルに挑むパンサーズの後輩たちへ、アドバイスをもらった。「最後まで具体的に課題をつぶすこと。気持ちの部分も大事ですけど、(プレーの)細かいところに目を向けてほしい。『これをやっとけばよかった』というのをなくさないと。最後まで突き詰めて頑張ってほしいと思います」

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