陸上・駅伝

特集:第97回箱根駅伝

M高史×たむじょー対談(下)「無観客の箱根駅伝、走れる自分を誇って自慢して!」

2人にとって箱根駅伝とは?も書いてもらいました!(ポートレート撮影・すべて齋藤大輔)

4years.陸上応援団長のものまねアスリート芸人・M高史さんと、帝京大学駅伝部出身でランニングコメディYouTuberとして活躍するたむじょーさんの対談後編! お互いの箱根駅伝の思い出や、走る選手たちへのメッセージなど、話があっちにいったりこっちにいったりで盛り上がりました。

M高史×たむじょー対談(上)「箱根駅伝、どの大学が勝つのか予測不可能!」

スポンサーで「たむじょー」どうですか?

4years.編集部(以下、――)今年はユニフォームにスポンサーのロゴが解禁されたことも、ジワジワと話題ですよね。

M高史:たむじょーさん、どうですか? 帝京大のユニに「たむじょー」って入れるのは。

たむじょー:YouTubeで儲かったら入れたいですね! あ、でも監督が変わったら……(笑)。僕の同期の岩佐(壱誠、現・大塚製薬)とか、先輩の佐藤諒太さん(現・警視庁)とかが監督になったらやりたいなあと(笑)。

――中野孝行監督ではちょっと気まずいと(笑)。

たむじょー:ノーコメントにしておきます(笑)。

いままでのタイムが全く役に立たない、新時代に入ってきているとMさん

M高史:マネージャー目線でいうと、過去の情報が全然当てはまらない領域に入ってきてるなって思います。通常だと、先輩の記録を参考にしたりして「〇〇先輩と同じぐらい」とか「1キロ3分でいけば上位争いできるぞ」とか声かけできるんですけど、高速化しすぎて役に立たない。常に今の情報、タイム差を取り入れて監督に伝えて指示を出す、という臨機応変さが求められるなと思ってます。

たむじょー:走ってる選手が自分で判断していかないといけない、というのもありますよね。

給水スキルも高難度!? 新時代の大会運営

M高史:前回、往路があまりにも速いペースで進んだので、復路は給水員の集合時間が10分早まったんですよ(笑)。

たむじょー:マジっすか!

M高史:本当に通過予想が役に立たないです(汗)。全体のレベルがすごい上がってますね。

たむじょー:Mさんといえば給水ですけど、今回は大変そうですね。

前回も給水したMさん。選手が水を飲んでいるタイミングでタイム差なども伝えます(撮影・藤井みさ)

M高史:給水員はゴーグル、マスク、手袋をしないといけないんです。キロ3分より速く走ってる選手と並走するのに、ゴーグル、マスクって息で曇って目の前が見えなくなりそう(汗)。給水のときにタイム差を伝えたりもするので、手袋をしてたらうまく時計が見えるのかな? とか、めちゃくちゃ技術が必要になりそうです、支える側も。

たむじょーが運営管理車からかけられた言葉は……

――Mさんは運営管理車に乗っていたし、たむじょーさんは実際に走ったから監督から声をかけられていたんですよね。実際、運営管理車からの声って聞こえるものなんですか?

たむじょー:正直、応援が大きすぎてあんまり指示は聞こえなかったです(笑)。僕は2年生のときに8区を走ったんですが、もらった時9位で、前には城西大学と日本体育大学がいたんです。それで「5キロで追いつくぞ!」って言われて「了解」って意味で手を上げたんですけど、追いつけなくて(笑)。8キロ地点で後ろから来た中央学院大学に抜かれちゃって10位になって。そのあとまた抜き返して、前から落ちてきた拓殖大学を抜いたり、抜き返したりしてるときに「絶対勝て!」ってまた檄(げき)がきて。「勝てるなら勝ちたいけどがんばります~~~~」って思いながら走ってました(笑)。結局遊行寺の坂で離されて、9番でもらって9番で襷(たすき)渡し。まあまあ……っていう感じでしたね。

中野監督から「追いつくぞ!」と声をかけられたものの…

M高史:今年は無観客で、ということで声はもっと聞こえそうですよね。そういえば、僕も前回8区で給水しましたけど、たむじょーさんは給水もらうときどんな感じでしたか。

たむじょー:1回目の給水は同期からもらって、2回目は先輩が待っててくれたんですけど、もうあまりにもキツくて、「あぁ、水大丈夫です、いらないっす」って断っちゃったんです(笑)。

M高史:給水員は、選手通過の1時間前にはスタンバって準備してるんですが、断られると寂しいかも(笑)。

たむじょー:ほんとすみません(笑)。

M高史:給水といえば、6区は給水もないし、運営管理車も終盤までつかないので、選手の判断や経験がすごく重要になってくる区間だなと思います。

たむじょー:今回は無観客ということで、山下りはかなり寂しそうですよね(汗)。

――6区といえば、前回の東海大学の館澤亨次選手(現・横浜DeNAランニングクラブ)の走りはすごかったですね。

館澤選手の空前絶後の走りは、記憶にも記録にも残るものでしたね(撮影・佐伯航平)

M高史:驚異の57分台(57分17秒)、ありえないです! 下りもですけど、最初の上りが驚異的に速かったのもあの記録につながりましたよね。シューズの進化もありますけど、各コースの戦略もどんどん変わってきてると思います。それにしてもこの記録はなかなか抜けないと思います。

「これが夢が叶う瞬間なんだな」

――たむじょーさんは、箱根を走る前ってどんな気持ちだったんですか?

たむじょー:どんなパフォーマンスしようかな、とか考えたりしてました(笑)。というのは半分冗談で、箱根に出るのが小学生のときからの夢だったので、「あ、これが夢が叶う瞬間なのか」ってちょっと不思議な気持ちと、ワクワクする気持ちが混ざってました。走っててキツくなった時も、「夢の舞台でこんなふうに終わったらだめでしょ」って思いで走りきった感じでしたね。

僕に襷を渡してくれたのが、千葉県の先輩でもある佐藤諒太さんなんですけど、いまでもご飯に誘ってくれて毎月一緒に食べに行ったりしてて、ずっと繋がりがあります。僕の箱根での最初で最後の襷リレーが佐藤さんで良かったなって思います。

M高史:やっぱり学生時代、4年間をともに捧げてきた仲間って特別ですよね。僕の今の取材活動にはその時のつながりがすごく活きていて、本当に駅伝のおかげだなあって思います。

たむじょー:そのつながりは大きいですよね。

M高史:97回続いてるわけですからね。

たむじょー:あと少しで100回ですけど、100回目、どうなるんですかね。どんな大会になるんだろう。

無観客、ラッキーだしみんなに自慢してほしい

――今回は無観客ということで、その100回近い歴史の中でも初めての大会になりますよね。

たむじょー:これは別のインタビューでも言ったんですけど、選手たちには逆にラッキーだと思ってもらいたいんですよ。普通、「◯◯年に走った」って言ってもみんなわかってくれないですけど、「あの無観客のときの」って言ったら誰もがわかってくれるっていう。僕だったらめっちゃ自慢しますよ。あの時走ったんだぞって。

過去にもないし、この先の未来にももう二度とないかもしれない。このときのことを将来自慢してもらいたいし、堂々と走ってもらいたいです。走った感想はその人にしか言えないので、今回が「特別な大会なんだ」っていうモチベーションになってくれたら嬉しいなと思います。

駒澤のスローガンは「原点と〇〇」でずっと継承されています

M高史:マネージャー出身者から言うと、試合がないと、選手が結果出してこそのマネージャーだと思うので、存在意義ってなんだろう? って思ってしまったこともあると思うんです。だからこうして試合が開催されるだけでもすごくありがたいこと。今年の前半は試合がなくて、マネージャーの皆さんももんもんとしながらも、あの手この手でチームをサポートしてきたんだろうなと。その思いも1本の襷につながってると思うんです。

だからといって選手はあまりプレッシャーに感じないでほしいんですけど……。とにかく、本気でやってきたことは卒業してからも活きると思うので。僕自信も学生自身しんどい面もありましたけど、本気で取り組んだ経験はどんな仕事にも絶対に活きてくると思います。まさか将来、芸人やYouTuberになるとは……ですけど(笑)。悔いなく現状打破してほしいです!

――おふたりに改めてお聞きします。「あなたにとって箱根駅伝とは?」

M高史:僕は「原点と魂」です。これは僕が4年生のときの駒澤のスローガンでもあるんです。魂っていうのは、体がきつくてもメンタルを奮い立たせてやろう、という意味で決めました。最初、「原点と基本」になりそうだったんですよ。でも「原点も基本も同じじゃん!」ってなってこれに変わりました。今だからいいますが、「魂」は僕の大好きなB'zの「ウルトラソウル」からも取ってます(笑)。やっぱり箱根駅伝は僕の原点、魂だなって思ってます。

――たむじょーさんは「夢と約束と恩返し」ですね。

やっぱり箱根駅伝は特別な存在です!

たむじょー:ずっと箱根駅伝に出るのが「夢」だったのと、「約束」というのは僕の中学の親友で陸上をやっていたタケと一緒に「大学で襷つなごう」って約束してたんですが、彼はけがで陸上を続けられなくなってしまって。そのときに「俺だけでも出る」って約束して。実際に走ったときに、支えてくれた親や親友、周りの人たち全てに感謝だなっていう思いがあって、これにしました。

M高史:めちゃくちゃいいこと言ってる。

たむじょー:ちょっと笑いとか考えたんですが、まじめにいきました(笑)。

――箱根駅伝まであと少し、大会が楽しみすぎますね。おふたりとも、お忙しいところありがとうございました!

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