箱根駅伝の運営管理車の秘密、教えちゃいます
いよいよ箱根駅伝が近づいてきました。12月29日には区間エントリーも発表されました。当日の朝も、往路と復路合わせて4人まで選手交代ができます。駅伝ファンの方にとっては最終的に誰がどの区間に入るのか予想するのも楽しみの一つですね。今回は僕が3、4年生のときに乗らせていただいた運営管理車についてのお話です。
まるで大名行列
その昔、箱根は選手の真後ろに各校のジープがつき、マイクで叱咤激励しながら進んでいくのが名物だったそうです。瀬古利彦さんを育てた故・中村清さんは、早大の校歌を大声で歌われたとか! ジープは廃止され、数校の監督が1台の車に乗り合わせるスタイルを経て、第79回大会からいまの1校1台になりました。
運営管理車に乗るのは、ドライバー、各校の監督、主務、走路管理員、審判の5人。基本的には選手の後方につきますが、車の順番については本部から指示があります。集団で走っているときは、運営管理車が順番に交代しながら集団の真後ろにつきます。
大変なのがトイレを我慢することです。スタート前から乗車してフィニッシュするまで、約6時間近く、基本的にはトイレに行けません。だから僕は、なるべく当日の朝から水分をとらないようにしてました。のど飴は監督の分も含めてたくさん用意します。僕の母校である駒大の大八木弘明監督は往路と復路で約11時間、声を枯らして選手に熱い激励をされるので、とくにのど飴が重要アイテムです(笑)。
スタート前に車内で感じたのは「まるで現代の大名行列だなあ」ってことです。いまも鮮明に思い出せます。交通規制のため道路から車が消え、箱根駅伝のためのコースになります。沿道には応援の方々が二重三重に並んで選手を待ち構えます。主務をさせていただいてしんどいことも多々あったはずなのに、これを目にするとすべて吹っ飛ぶような。そんな魅力的で壮大な景色でした!
大八木監督の愛情
そうこうしているうちにスタートです。運営管理車内での主務の役割は、主に以下の三つです。なお「現地タイム係」は「箱根の情報戦を制するために」をご参照ください。
・1kmごと、5kmごとにラップタイムやポイント地点の通過タイムを計測する
・前後との差や区間順位など、情報収集をする
・沿道に配置されている現地タイム係に指示を出す
レース中、監督が選手にマイクで指示を出せるポイントがあります。主務はタイム差や区間順位など、監督が指示を出しやすいように情報の収集や整理をします。寮で待機しているマネージャーやOBとも連絡を取り合い、監督の指示を受けて現地タイム係への連絡もします。
大八木監督の檄(げき)はもはや箱根名物! その檄を聞きたくて、わざわざ各区間の5km地点とか10km地点で応援する駅伝ファンもいらっしゃるとか(笑)。そんな檄を誰よりも近く、生で聞けるのが主務の特権です!
運営管理車での一番の思い出は4年生のときの10区です。アンカーを走ったのは同級生の治郎丸健一(じろまる、現・ラフィネ陸上部コーチ)でした。治郎丸は4年目にして初出場。仲がよかった同級生の最初で最後の箱根ということもあり、後半は車内で「治郎丸行けー!」「ラストだー!!」と監督に負けずに叫んでました(笑)。
終盤にさしかかったころ、大八木監督が「お前が言っていいぞ」とマイクを渡してくださいました。情熱的で厳しくも常に本気で指導をされてきた大八木監督の愛情や優しさを感じ、感謝の心を込めてラストスパートをかける治郎丸をマイクで激励しました。
余談ですが、レース後に「運営管理車から声聞こえた? 」と治郎丸に聞いたところ「いや、全然聞こえなかったよ」。10区は左耳だけ痛くなるほど沿道からのものすごい声援を受けます。とくに終盤は他校との競り合いでラストスパートの真っ最中だったので、僕の声はまったく聞こえなかったようです(笑)。
さあ、いよいよですね! 走る選手はもちろん、運営管理車に乗車する監督さんやマネージャーさんにも注目してみると、箱根がより一層深く、面白く感じられるかもしれません!