陸上・駅伝

特集:第97回箱根駅伝

東海大・石原翔太郎、青学・佐藤一世……箱根駅伝往路を彩ったルーキーたちの思い

東海大学の石原(左)は全日本大学駅伝に続いて、箱根駅伝でも区間賞を獲得した(撮影・北川直樹)

1月2日の第97回箱根駅伝往路には、関東学生連合チームを含む全21チームより17人の1年生が出走した。この代は、3000m障害(SC)日本歴代2位の記録をもつ順天堂大学の三浦龍司(洛南)や5000mU20日本記録保持者である中央大学の吉居大和(仙台育英)、また、昨年11月の全日本大学駅伝で区間賞を獲得した青山学院大学の佐藤一世(八千代松陰)や東海大学の石原翔太郎(倉敷)などの活躍で、多くの話題を呼んでいる。そんな彼らの箱根デビューを振り返る。

超スローペースの1区、ラスト勝負に課題

1区には順大の三浦や明治大学の児玉真輝(1年、鎌倉学園)、また当日変更で駒澤大学の白鳥哲汰(1年、埼玉栄)などが出走した。多くの選手が高速レースを見越して備えていた中、はじめの1kmは3分30秒という超スローペース。「レースプランを立てずに、集団の流れに合わせていこう」と考えていた三浦も、この想定外のペースに困惑したという。児玉も最後のスパートを視野に入れて集団の中で無駄なく走ろうと切り替えたが、15km地点で足が重くなってしまった。六郷橋の下りから始まったラスト3kmのスプリント勝負に対応できず、三浦は10位、白鳥は15位、児玉は16位で襷(たすき)をつないだ。

全日本大学駅伝で1区区間賞だった順天堂大学の三浦(左)。しかし箱根駅伝では1区区間10位と課題が残るレースとなった(撮影・北川直樹)
明治大学の児玉(右)は全日本大学駅伝で1区区間3位とチームに流れをもたらしたが、箱根駅伝では1区区間16位に沈んだ(撮影・北川直樹)

エース区間の2区を任された東洋大学の松山和希(1年、学法石川)は、「今まで10年以上、この大会のためにやってきたようなもの」と話し、プレッシャーがある中でも楽しむ気持ちを持って初の箱根路に挑んだ。ハーフマラソン以上の距離を走るのは初めての経験。「1年生なんだし、他の大学の力も借りて最後は自分の力でいこう」と酒井俊幸監督から言われていた通り、先行する選手の力も借りながら走り、14km付近の権太坂を過ぎてからは自分のペースでレースを進めた。

9位で受け取った襷を5位で渡し、区間4位。最後まで崩れない走りができた手応えがあった一方で、1秒差で日本体育大学の池田耀平(4年、島田)に区間3位を譲ったことに、「追い込みが足りなかったのかなと思っています」と自らの課題を見いだした。

東洋大学の松山(左)は1年生ながらエース区間の2区を任された(撮影・藤井みさ)

東海大・石原、4年生の塩澤と名取の思いも受け止めて

3区には当日変更で東海大の石原と中央大の吉居が出走。石原は1区の主将・塩澤稀夕(きせき、4年、伊賀白鳳)と2区の副将・名取燎太(4年、佐久長聖)が3位でつないでくれた襷の重みを感じながら、またコロナ禍でありながら箱根駅伝を走れることに感謝の気持ちをもってスタートした。

大舞台への緊張に加え、ハーフマラソン未経験ゆえの不安もあったが、4年生を中心にして総合優勝を掲げるチームの中で鍛えられてきた自信をもってレースに臨めた。得意の下りでは積極的な走りを、風の影響を受けやすい海岸沿いでも粘り強い走りを続け、スタート時には1分1秒の差があったトップの東京国際大学の背中を捉えると一気に前へ。石原は1時間2分5秒の記録で区間賞を獲得し、首位で襷をつないだ。

中央大の吉居は18位で襷を受け取って必死に前を追ったが、1時間5分2秒の区間15位。順位を上げられず、苦しい走りとなった。

当日変更で3区に配置された中央大学の吉居(左)は区間15位と苦しんだ(撮影・北川直樹)

4区には当日変更で青山学院大の佐藤と順天堂大の石井一希(1年、八千代松陰)らが配置された。ふたりは八千代松陰の同期であり、佐藤は「彼(石井)がいたからこそ自分もここまで伸びたと思っているので、ライバルであり感謝もしています」と話す。全日本大学駅伝で同じ5区を走り、箱根駅伝でも同じ4区で顔を合わせた。レース前には「また同じじゃん。今回は負けないぞ!」と言い合ったそうだ。

佐藤は11位で襷を託された。想定よりも低い順位ではあったが、トップとの差を縮めることだけを考え、自分のペースを刻んだ。単独走の中、原晋監督からは「楽しんで、前だけを追う走りをしてほしい」と声をかけられた。ハーフマラソン未経験の佐藤は途中、「長いな」と感じてしまったという。順位をひとつ上げての区間4位という結果に満足しておらず、自己評価は100点中50点。「単独走というのもこの1年練習してきたので、それで出し切れなかったのは自分の実力不足だと思います」と悔しさをにじませた。

前の走者と1分19秒差で走り始めた青山学院大学の佐藤(右)は、単独走でのレースとなった(撮影・北川直樹)

駒澤・鈴木、大八木監督から「自信をもって最後はいけ!」

5区には当日変更で駒澤大の鈴木芽吹(1年、佐久長聖)が出走した。鈴木は昨年7月、大八木弘明監督から5区を示唆された時、「冗談半分」だと思っていたという。「(上りの適性が)あるか分からないけど、苦手意識はありませんでした」と鈴木。11月から本格的に5区候補に挙げられるようになり、山登りに挑む覚悟を決めた。

鈴木は2位で襷を受け取り、その後ろには5区区間記録保持者の東洋大・宮下隼人(3年、富士河口湖)が迫っていた。向かい風の中、設定タイムよりも遅い走りに焦りが募る。それでも、28秒差から追い上げてきた宮下に抜かれてからは冷静に対応できたという。2位は死守するという気持ちで宮下に食らいつく。後半、寒さで体が動かなくなり、宮下から離されてしまったが、「5区の中で10000mの持ちタイムはお前が持っているんだから、自信をもって最後はいけ!」という大八木監督の言葉に力をもらった。鈴木は苦しい表情を浮かべながら、往路3位でフィニッシュ。宮下に次ぐ区間4位だった。

駒澤大学の鈴木は5区記録保持者である東洋大学の宮下に食らいつく走りを見せた(撮影・佐伯航平)

駒澤大の大八木監督は1区と5区というポイントとなる区間に1年生を配置した狙いとして、「1~2年生がいい練習をして力をつけていたので、次につながるようなレースをしたかった」と話している。駒澤大に限らず、それぞれのレースで得た自信、課題、悔しさが今後のチームの力になっていくことだろう。

往路を走った1年生たちの記録

1区
順天堂大・三浦龍司(洛南) 1時間3分31秒(区間10位)
駒澤大・白鳥哲汰(埼玉栄) 1時間3分47秒(区間15位)
明治大・児玉真輝(鎌倉学園) 1時間4分6秒(区間16位)
国士舘大・山本龍神(米子松蔭) 1時間4分34秒(区間18位)
山梨学院大・新本駿(報徳学園) 1時間5分4秒(区間20位)

2区
東洋大・松山和希(学法石川) 1時間7分15秒(区間4位)

3区
東海大・石原翔太郎(倉敷) 1時間2分5秒(区間1位)
中央大・吉居大和(仙台育英) 1時間5分2秒(区間15位)
山梨学院大・島津裕太(九里学園) 1時間5分13秒(区間16位)

4区
青山学院大・佐藤一世(八千代松陰) 1時間3分9秒(区間4位)
順天堂大・石井一希(八千代松陰) 1時間3分35秒(区間5位)
関東学生連合チーム・中山凜斗(立教大、九州学院) 1時間5分33秒
東海大・佐伯陽生(伊賀白鳳) 1時間5分43秒(区間19位)

5区
駒澤大・鈴木芽吹(佐久長聖) 1時間12分44秒(区間4位)
城西大・山本唯翔(開志国際) 1時間13分3秒(区間6位)
早稲田大・諸冨湧(洛南) 1時間17分6秒(区間19位)
専修大・野下稜平(鳥栖工) 1時間19分15秒(区間20位)

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