陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

関西外国語大学OG・中島みなみさん、大学駅伝やマラソンを経てシューズ開発の道へ

中島さんは現在、デサントジャパン株式会社でシューズ開発などに携わっています(撮影・M高史、M高史撮影写真以外は全て本人提供)

今回の「M高史の陸上まるかじり」は中島(なかしま)みなみさん(25)のお話です。北九州市立高校(福岡)では全国高校駅伝(都大路)出場。関西外国語大学では全日本大学女子駅伝(杜の都駅伝)に4年連続で出場。大阪国際女子マラソンにはネクストヒロイン枠で出場も果たしました。大学卒業後はデサントジャパン株式会社でランニングシューズの開発などに携わっています。

「楽しく自由に」から「鍛えられた3年間」へ

山口県下関市出身の中島さん。陸上を始めたのは小学2年生の頃でした。「1年生の時に持久走大会で1番になり、得意かもと思いました。また、両親も走っていて、一緒に団地を走ったりしていましたね」。地元のクラブチームで楽しく陸上をやっていたそうです。

小学校時代の中島さん(3569番)。両親の影響もあり、マラソン大会に出場していました

中学に入ってからも陸上部に。「中学では部活が大好きで、勉強そっちのけで走っていました(笑)。いつもあと一歩のところで上のステージに進めなかったです」。800m、1500mで県大会に出場していた中学時代でした。

中学時代の中島さん(写真左)。部活が大好きだったと振り返ります

高校は福岡県の北九州市立高校へ。山口県下関市の自宅から片道1時間半かけて通学していました。「朝練があったので始発で毎日通っていました。卒業して今思うのは親への感謝ですね。私より早く起きてお弁当を作ってくれたり、駅まで送ってくれたり、感謝してもしきれないです」と両親への感謝を口にされました。

中学時代までは「楽しく自由に」だったそうですが、高校では今までやったことないような練習量や質の高い練習に、「最初はついていけなかったですね。ついていくのに必死でした」と振り返ります。

必死で走り続けた結果、2年生、3年生で都大路に出場しました。「走れることだけでも嬉(うれ)しかったです。都大路が一番の目標でしたので。2年生の時はアンカーの5区を任されたのですが、自分のゴールした順位でチームの順位が決まってしまうんだという緊張感がありました」。1つでもチームの順位を押し上げようという思いだったそうです。

高校時代は都大路に2度出場(前列左端が中島さん)

「忍耐力が鍛えられた3年間でした。鍛えていただいたからこそ、今、頑張れます。この3年間があっての今の自分ですね」と心身ともに鍛えられた高校3年間となりました。

陸上も英語も! 関西外国語大学へ

高校卒業後は関西外国語大学へ。「チームの雰囲気に惹(ひ)かれました。あとは山本監督のお人柄、魅力ですね。入部してみて、あったかいチームだなと思いました。練習は真剣ですが、練習から離れるとみんなですぐふざけるんです(笑)。楽しく過ごせました」。初めての寮生活もチームの雰囲気も良くて、楽しかったそうです。

山本泰明監督は筑波大学で箱根駅伝を走り、実業団でもマラソンで活躍。現在も指導しながら走っています。「ときには練習を引っ張って下さいます。言葉にも説得力がありますし、朝練習も家から寮まで走ってくるので、朝から私たちより走っているんじゃないかと(笑)」

恩師・山本監督(後列一番左)の指導のもと、楽しく陸上や勉強に打ち込みました(前列一番左が中島さん)

外国語大学ということで語学の勉強は必須です。「勉強は大変でしたね。語学に興味はあったのですが、実は一番苦手だった科目が英語でした(笑)。英語を話せたらカッコいいなと思っていたのと、苦手を克服できるかもと思っていました。基本的に英語の授業が多く、入学した時よりも上達しましたね」。陸上も語学も日々コツコツと継続することが大事と改めて感じたそうです。

関西外大女子駅伝部では多くの部員が短期留学を経験します。中島さんはオーストラリアのブリスベンに3カ月ほど留学しました。

「人も温かくて、周りの方に助けられながら過ごしていました。ホームステイをしていたのですが、ホストファミリーの方がいろいろなところに連れて行ってくれたり、お弁当も作ってくれたりしました。オーストラリアのお母さんのような存在です!」。最初はうまく話せなかったそうですが、ホストファミリーの温かさに段々会話もできるようになっていきました。

「陸上部や駅伝部で走っていると、なかなか長期間離れることが少ないですよね。今まで門限もあって、朝練もあってという中、初めて普通の大学生を経験しました(笑)。いい意味で外の世界を知れて『こんな世界があるんだ!』と感じましたし、楽しかった思い出ですね!」

オーストラリア・ブリスベンへの短期留学は貴重な機会となりました(座っているのが中島さん)

留学を経て、陸上から離れようと思ったそうです。「小学生の時から陸上のある生活しか知らなかったです。留学してみて自分の知らないことばかりで、ちゃんと社会に出て1人の人間として生活できるような人になりたいと思い、陸上は大学までという選択をしました」と、人生についてしっかりと考える貴重な機会にもなったそうです。

駅伝とマラソンの両立

競技の方では4年連続で杜の都駅伝に出場。全日本大学女子選抜駅伝(富士山女子駅伝)にも3年連続で出場しました。

「特に印象に残っているのは4年生の年ですね。同級生の5人が杜の都、富士山でメンバーに入ることができました。ずっと1年生の時から練習も生活もともにした仲間と襷(たすき)をつなぐ経験ができました。こんなにみんな頑張ってるから、より一層頑張れると力になりました。最後の年は特に楽しかったです」。同級生の存在が力となりました。

杜の都駅伝にてチームメートと(前列右端が中島さん)

駅伝だけではなくマラソンにも挑戦。「両親がマラソンをしていたこともあり、マラソンを走ってみたいと思っていたところ、山本監督にご相談したら快諾していただきました。駅伝シーズン中にもかかわらず、マラソンを走らせていただきました」。在学中に6度もマラソンに挑戦しました。

中でも印象に残っているのは2018年の下関海響マラソン。2時間43分20秒の女子の部・優勝(大会新記録)で故郷・下関に錦を飾りました。ちなみにこの年、M高史もゲストランナーで下関海響マラソンを走っていたのですが、折り返しで「先頭の女子選手速いなぁ! お、関西外大の選手だ!」と思っていたのですが、その時に先頭を走っていたのが中島さん! 時を経て、こうして取材させていただけることに感謝です。

下関海響マラソンは中間点を過ぎると海峡の橋や激しい起伏を何度も上って下る難コースにもかかわらず2時間43分台! ただ、中島さんによるとマラソン練習らしい練習はしていなかったそうです。「特別な練習は特にしていなかったですし、ポイント練習は基本的に10kmから15kmくらいです。なので、普段のジョグの時に長く走ることを心がけていました」と、チームの練習に加えて普段のジョグを意識的に長く走って対応していました。

大阪国際女子マラソンではネクストヒロイン枠で出場。大学ラストレースとなりました。「招待選手や日本のトップ選手がそろう中、こんな経験2度とできないと思いましたし、選んでもらったからにはしっかり走らないと思っていました」と意気込んで出場したものの、結果は途中棄権となりました。

ネクストヒロイン枠で大阪国際女子マラソンにも出場しました(後列右から2人目が中島さん)

「ラストレースということで両親も山口から応援に来ていたのに申し訳なかったですね。両親からは『頑張ったね』と言ってもらいましたが、悔しかったですね。いつかちゃんと大阪国際に出て完走するところを見せたいなと思いました」。改めて走ることが好きだなと気づけた4年間となりました。

シューズやウエアを通してランニングの魅力を伝えたい

大学卒業後はスポーツメーカーのデサントジャパン株式会社に入社。「スポーツに関わる仕事がしたいと思っていました」と中島さん。入社してからは営業担当でしたが、昨年4月からはマーケティングでフットウエア担当となりました。シューズの開発に携わりたいと思っていた中島さんにとっても念願の部署でもありました。

シューズの試し履きの一コマ(奥の白いシャツが中島さん)

ランニングシューズの開発にも携わっています。「ゼロからイチにするのは大変なことも多く、なかなかうまくいかないこともありますが、自分の経験を活(い)かせているのかなと思うことも多く、楽しく仕事できています。速く走りたい選手から楽しく走りたい方までシューズを履いていただけたらいいですね。担当している選手が駅伝で活躍しているのを見ると嬉しいです!」。皆さんに愛されるシューズを開発し、展開していきたいと未来図を描いています。

大学卒業後も時間を見つけて走っているという中島さん。「卒業してからも『あ、走らなきゃ!』と思って、走っちゃいます(笑)。学生時代までは速く走るために走る、練習するといった感覚でしたが、今は気分転換で走ります。走るといろいろ悩んでることも忘れて気持ちもリセットできますね!」と、学生時代までとは違った走る魅力にも気づかされました。

自身の経験を活かし、ランニングの魅力を笑顔で伝えていきます(撮影・M高史)

小学校から大学まで競技として、陸上や駅伝に打ち込んできた中島みなみさん。社会人になり、新たなランニングの魅力に気づき、シューズやウエアを通して、ランニングの楽しさを多くの方に伝えていくため、笑顔で前を向いて現状打破し続けます!

M高史の陸上まるかじり

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