帝京大2年連続11回目の大学日本一 新監督「ど真ん中のラグビー」で圧勝
第59回全国大学ラグビー選手権大会決勝
1月8日@国立競技場(東京)
帝京大学(関東対抗戦1位) 73-20 早稲田大学(関東対抗戦3位)
監督が代わっても「紅い旋風」の強さは揺るがなかった。
1月8日、ラグビーの大学選手権決勝が東京・国立競技場で行われた。2年連続11回目の優勝を狙う帝京大(関東大学対抗戦1位)と3年ぶり17度目の優勝をうかがう早稲田大(対抗戦3位)との激突となった。
準決勝で帝京大学は筑波大(対抗戦5位)に71-5で大勝し、早稲田大は京都産業大(関西大学Aリーグ1位)に34-33で競り勝ち、決勝に進んでいた。
帝京先制も序盤は早稲田がリード
試合はいきなり動いた。前半2分、キックオフを蹴った帝京大が相手のミスに乗じて攻め込み、FL青木恵斗(2年、桐蔭学園)からオフロードパスを受けたSO高本幹也(4年、大阪桐蔭)が飛び込み7-0と先制する。
ただ、早稲田大も接点の強い相手に2人、3人で対抗しつつ、「キックをタッチに蹴らず、インプレーを増やしつつ、敵陣で戦う」ことを意識して戦った。相手FWの体力の消耗も狙っていた。
すると前半11分、早稲田大はスクラムを起点としたアタックを見せて、SO伊藤大祐(3年、桐蔭学園)の打ち返しのパスからWTB槇瑛人(4年、國學院久我山)が走り込んでトライを挙げ、7-7の同点に。さらに17分、ラインアウトからボールを左に大きく動かし、WTB松下怜央(4年、関東学院六浦)がトライを挙げて7-12と逆転に成功した。
3連続トライで帝京が逆転
しかし、「ハードワークして、痛いプレーをしながら楽しもう」をテーマに掲げていたディフェンディングチャンピオンは、焦ることはなかった。セットプレーが強みの帝京大は、しっかりとキックをタッチに蹴りつつ、「すごくこだわりを持っている。我々が我々であるためのすごく重要な要素」(相馬朋和監督)という接点の部分で、常に前に出続けた。
すると22分にはキックカウンターからボールを継続しFL青木がトライ、27分にはラインアウトを起点にNO8(ナンバーエイト)延原秀飛(しゅうと、3年、京都成章)がトライを挙げて、21-12とリードに成功する。
さらに前半終了間際、早稲田大が攻め込む中で、ハイボールキック処理でボールをこぼした後、帝京大はすぐに反応し、SH李錦寿(2年、大阪朝鮮)がWTB高本とむ(3年、東福岡)にパスし、高本が50mを走りきってトライ。28-12と大きくリードして前半を折り返した。
得点・得点差・トライ数…記録ずくめ
後半3分、早稲田大はCTB吉村紘(4年、東福岡)がPGを成功させて 28-15と13点差とした。しかし帝京大の勢いは止まることなく、6分にはPR上杉太郎(3年、熊本西)、11分にはSO高本が裏に蹴ったボールを自らキャッチし2本目のトライ、18分にはスクラムでプレッシャーをかけた後、FL奥井章仁(3年、大阪桐蔭)がインターセプトからトライを挙げて、47-15と30点差を超えて勝負あり。
帝京大はさらに4本のトライを重ねる一方で、早稲田大は後半、WTB槇がインターセプトからトライを挙げるのがやっとだった。結局、準決勝に続いて油断も隙も見せなかった帝京大が11トライを挙げて73-20で大勝し、2年連続11回目の栄冠に輝いた。決勝戦での73得点、53得失点差、11トライは大会新記録となった。
早大主将「接点・セットプレーに差」
早稲田大の大田尾竜彦監督は「勝たせられなかった。大差がついた展開になってしまったのは、選手たちはすごくつらかったと思いますが、全部僕の責任で、力のなさを痛感しました。(帝京大は)ボールを失わない力があり、前半は人数かけていてもボールを取れる気がしないし、そこからオプションを持ったアタックをしてきた。またラインブレークの数も違った。あれだけファーストフェーズでブレークされるのは想定にはなかった」と振り返った。
キャプテン相良昌彦(4年、早稲田実)は「今年、積み上げてきたはずの接点とかセットプレーが足りなかった。100%やってきたつもりではいるんですが、やっぱりもっと頑張らないといけなかったのかな。また帝京大はどこからでもトライを取れるチームで、接点でいかれた部分もあったが大外で行かれる部分もあり、FWだけでなくBKもすごかったなという印象です」と相手の強さに脱帽していた。
帝京大主将「メンバー外含め全員の勝利」
就任1年目の相馬監督は、国立競技場の宙を11度舞った。「学生たちが本当に素晴らしいパフォーマンスを見せてくれて、優勝という形で今季を終えることができて本当に幸せだなと思っています。(前監督の)岩出雅之先生が作った文化がまず一番、重要な要素だと思います。キャプテンを代表に努力することの素晴らしさを知っている学生たちが厳しい練習に耐えて、スタッフが彼らを包み込むように指導、サポートしているのは、このチームの強みだと感じています」としみじみと語った。
キャプテンのCTB松山千大(ちひろ、4年、大阪桐蔭)は、「この1年、メンバーだけでなく、メンバー外、全員が戦った結果、このような結果が生まれた。昨季の決勝は出場時間もあまりなく、うれしさの半面、悔しさもありました。(キャプテンとなった)この1年、自分は何ができるかを考え、チームを引っ張る立場としてハードワークした結果、優勝できてうれしく思います」と破顔した。
相馬新監督、隙のないチーム作り
昨季、10度目の優勝を成し遂げて岩出監督からバトンを渡された相馬監督は、公式戦の初采配だった春季大会で敗れたものの、そこからチームをブラッシュアップし、昨季と比べてFWでもBKでもトライの取れる、より隙のない強さのチームを作り上げた。スクラムはもちろん自ら指導し、元日本代表PRだった相馬監督は自分で組んで見せたこともあったという。
昨年3月の新監督就任会見時、埼玉パナソニックワイルドナイツでの指導経験を踏まえて相馬監督は、「世の中から見たとき、こういうラグビーをやっているという、そのど真ん中のラグビーをやろうと思います」と宣言し、まさしく有言実行して見せた。