アメフト

22日に国立競技場で国際親善試合「ドリームボウル2023」 活躍誓う大学生たち

5日間の練習でしのぎを削り、60人の「チーム」になった全日本選抜(すべて撮影・北川直樹)

アメリカンフットボールの国際親善試合「ドリームボウル2023」が1月22日、東京・国立競技場でキックオフを迎える。新たな国立競技場では最初のアメフトの試合だ。選考会を経て結成された全日本選抜チームが、アメリカ北東部のハーバードやプリンストン、エールといった名門私立大8校からなるアイビーリーグの選抜チームと対戦する。全日本選抜は外国籍の選手を含み、社会人Xリーグから54人、大学生から6人が選ばれた。大学生のうち、昨秋のリーグ戦や甲子園ボウルを沸かせた5人を紹介する。選手名の前の数字は試合当日の番号です。

もう1人は「NFLを目指す元アマチュア横綱」、記事はこちら

物質設計を学ぶ「理系OL」

#62 OL石井潤(法政大4年、佼成学園高)

1年生から法政大学オレンジのオフェンスを支えてきた石井は、選考過程の練習で結構出番があったため、「(最終メンバーに)入れたんじゃないかな」との思いがあったという。「選ばれたときはレベルの高い人ばっかりだったので、やっぱりうれしかったです」と振り返る。

全日本の練習ではOLの中でも同じT(タックル)の町野友哉(京都大学~富士通)とコミュニケーションをとり、テクニックを教えてもらったそうだ。「町野さんは富士通でもカナダのCFLでも経験豊富なので、すごく参考になりました」

佼成学園高校時代にクリスマスボウル3連覇を経験している石井は、生命科学部で物質設計を学ぶ「理系OL」だ。来年は留年して研究に励むが、その先でアメフトを続けるかどうかは「考え中」という。

その前にドリームボウルという晴れ舞台が目の前にある。「アメリカに対してビビってたら勝てないので、しっかりバチコンいって、1対1で勝ちたいと思います」。いい笑顔で石井が宣言した。

高校時代はサッカーのGKで選手権出場

#31 WR衣笠吉彦(関西学院大3年、関西学院高)

サッカーのGKとして全国高校選手権にも出場した男が、大学では名門アメフト部に入った。2年生の秋シーズンにWRとして頭角をあらわし、昨春からレギュラーに定着した。そんな衣笠も全日本選抜チームの選考会に参加し、代表クラスのレベルの高さに驚いていた。関学でナンバーワンのスピードを誇る衣笠はある程度自信をもって練習に参加したが、自分の走力が生かしきれていないのを痛感したという。

関学の先輩でもある松井理己(富士通)から体の重心の置き方やスピードを出しやすいポジションどりを教えてもらった。そして、今のやり方では40yd走で4.8秒程度のプレースピード(衣笠のベストは4.3秒台)しか出せてないとの指摘を受けた。

「関学のルートは、レシーバー全員が同じタイミングでキャッチするポイントに到達するのを大事にしているので、全日本選抜の練習に参加してから自分が遅く走ることに慣れてしまってると痛感しました。ブレイクの方法ひとつでも感覚が全然違う」

近江克仁(立命大~IBM)からは細かい技術の指導も受け、大いに収穫があったという。「僕はレシーバーの中ではデカい方なんで、アメリカ人相手にもブロックでは勝ちたいと思っています。実力は下の方だと自覚してます。少しでもチャンスがあればモノにしたい」。持ち前の速さ、力強さで勝負する。

競技歴2年足らずで日の丸を胸に

#38 WR溝口駿斗(関西大2年、滝川高)

全日本選抜チームで最年少の20歳。高校時代はソフトボール部で、引退後にアメフト部の練習に参加していたが、本格的に始めたのは指定校推薦で関大に入ってから。そこから2年足らずで全日本選抜チームに入ってしまうのだから驚きだ。ただ本人は「選ばれると思ってました。決まったときは『やったろう』って気持ちになりました」と涼しい顔で言う。

昨秋の関西学生リーグ1部第2節の神戸大戦。6キャッチ167ydで二つのタッチダウンを決め、一気に注目を集めた。スピードがあって球際の勝負強さも抜群だ。同学年のQB須田啓太(関大一)との間でホットラインを形成し、リーディングレシーバーに輝いた。

全日本選抜の練習では、マンツーマンでXリーグの外国人DBをタテに抜き去ってのキャッチもあった。しかし最後の実戦的な練習となった1月15日は何度も捕れるボールを落とし、落ち込んでいた。「マンツーマンで絶対捕れるボールを2回続けて落としてから、なぜか捕れなくて。初めてでした。捕られへんってこんな感じなんや、って」。練習後もしばらく引きずっていた。こういう受け止め方ができるからこそ、まだまだ伸びるのだろうと感じさせられた。

「アサイメントミスはありえないと思うんで、プレーブックを見直して、少しのミスもなくしたい。もう練習がないから信頼を取り戻すのは無理。でも試合に出られたら、エグいキャッチをしたいです。外国人選手と一緒に練習してみて、日本の社会人の人らが英語でしゃべってるのがすごいと思いました。僕も英語しゃべりたいです」

屈強で物腰柔らかな元ラガーマン

#93 DL山田琳太郎(早稲田大4年、川和高)

選抜チームで2番目に背の高い196cm。ただ大きいだけではなく、プレーでもしっかり存在感を示した。スピードとハンドテクニックに優れ、社会人OLのパスプロテクションを破るシーンが何度もあった。

見かけによらずと言っては失礼だが、山田は非常に物腰が柔らかい。社会人選手たちとの練習を謙虚に振り返った。「参加できた4日間の練習で、技術の差をすごく感じました。自分は腕が長いので、思いっきりスタートが切れたときは社会人の方にも通用したのかなと思います。スピードとブルラッシュが強みなので、そこを生かしたいと考えています」

DLは学生からは1人だけ選ばれると思っていたそうで、それが自分だという自信はそこまでなかったという。しかし当初から山本洋ヘッドコーチら首脳陣からの評価は高かった。

高校時代のラグビーから転向し、甲子園ボウルの大舞台も経験。さらに国際試合のチャンスまで手にした。「学生の自分たちに与えられるチャンスは多くはないと思いますが、少ないチャンスをしっかりつかんでいきたいです」。自分にとって最後のフットボールの試合になるかもしれないドリームボウルで、すべてを出しきるつもりだ。

学生MVPが狙うQBサック

#97 DLトゥロターショーン礼(関西学院大3年、関西学院高)

「大学生枠が6人と書いてあったので、頑張れば選ばれるかなと思ってました」。リーグ戦の途中から出場して2022年シーズンの学生の年間最優秀選手賞・チャックミルズ杯を手にしたラッキーな男は、漠然とした自信を持って選考会に臨んだ。

しかし、いざ練習に来てみたら不安になったという。「社会人の方々のフィジカルがすごくて強すぎて……。関西学生リーグとは全然レベルが違って驚きました。大学生相手だと自分主導で動ける感じだったんですが、ここではそんなにうまくいかなかったです」

一方で手応えもあった。「得意なパスラッシュは通用したと思っています」。関学の練習とはまったく違った練習もあって、自分から攻めていく、当たりにいくプレーはよくなったと感じている。

DLからは学生でほかに前出の山田と元アマチュア横綱の花田秀虎(日体大3年)が選ばれた。「山田くんは規格外のデカさと強さがありますし、花田はアメフト経験半年とは思えない実力がある。彼らと一緒にやれるのは楽しいですね」

ドリームボウルではチャンスが必ず回ってくると考えている。そこでビッグプレーを起こすのが目標だ。「しっかり相手のイメージをつけて、サックできるように頑張ります」

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