選手復帰3年目を終え「やり切った」引退表明のコージ・トクダ単独インタビュー(上)
Xリーグ「X1 SUPER」のotonari福岡SUNSに所属する、タレントのコージ・トクダさんが3月1日に、今季限りでの現役引退を明らかにしました。4years.では引退に合わせて、単独インタビューを実施。前後編の2回に分けてお伝えします。前編では引退を決めた理由や時期、国内最高峰の舞台で戦った1年間について尋ねました。
最後は勝って終わりたい
――引退の理由、一番の決め手は何だったのですか。
コージ:2020年に選手として復帰したとき、年齢もあるので「3年はまず絶対頑張ろう」って決めたんです。ちょうど3シーズンを終えたときに、一番上のリーグでできて「やり切ったな」っていう思いが、ここにきて急に出てきました。「短いな」と言われれば、そこまでですけど、この3年間はすごく充実したアメリカンフットボールライフを歩んだんじゃないかと思います。
――引退を考え始めた時期、決めた時期はそれぞれいつでしたか。
コージ:昨シーズンの最後の試合ぐらいのときに「よし、この試合を最後にしようかな」というのは、思ってました。特にチームにも言ってなかったですし、どういう風に伝えようかなって、思ってたんですけど。入れ替え戦(X1 SUPERとX1 AREAの入れ替え戦、12月10日、対パイレーツ)に最後勝って、終わりたいなあという気持ちでした。
――他の選手やスタッフの皆さんには、どのような形で伝えましたか。
コージ:チームの代表の吉野(至)君には、なんとなく「今年までかもな」ってことは、チラチラ言ってたんですよ。「いやいや、まだ続けてくださいよ」っていう声もあったんですけど、最終的に伝えたのは、電話で「今年までにしようかと思っている」という話を代表に伝えました。入れ替え戦の後ですね。言うタイミングがすごく難しくて……。3年間一生懸命頑張ってきたので、自分の生活の中における比重が、ほぼアメリカンフットボールになっていたので、「これを今やめたら、どういう風に歩んでいくんだろう」とすごく悩んでました。
――入れ替え戦は色んな思いを背負ってプレーされてたんですね。
コージ:X1 SUPERで戦った1年間だったので、「すごくいい選手もいっぱいいるんだなあ」と、アメリカンフットボールの全てとは言わないですけど、知るべきところは知れたっていう思いはあります。実際に歯が立たない選手って、本当にいるんだなと。そういうことを知ることで、今後、僕がアメリカンフットボールを語るときに、実際に対戦したからこそ話せることも増えてくるだろう思います。
選手を経験したことで、説得力を持って語れる
――10年ぶりに競技に復帰する際、「自分の発信に重みが足りない」とおっしゃっていました。選手生活を経て、発信の重みが増した実感はありますか。
コージ:重みは周りの人が決めることだと思うんですが、僕としては少し説得力を持って話せるようになったというのは思います。実際に「やばかったな」っていう経験って、実際に体を当てないと分からなかったでしょうし、僕の大学時代の経験だけで言うと、変な話、実績は僕の方が良かったら、「やってたら勝ったのに」とか変なことを考えていたんじゃないかと思うので。そこは頑張って、本当にそういう選手がいるんだなということが知れたのは大きいです。
――3シーズンで最も印象に残っている試合や場面を挙げるとしたら?
コージ:2年目に福岡(東平尾公園博多の森陸上競技場)でやった電通戦ですね。勝てばX1 SUPERに上がるという試合でした。(X1 SUPERは)目標の一つではありましたけど、実際目の前にしたときに、すごく高い壁に見えて、不安もあった中、実際に手にできた。「本当にSUPERに上がれたんだ、俺ら」みたいな。不安と葛藤の感じが大学に似てるなと、当時を思い出したような感覚になったので、あの試合は忘れないですね。福岡で、ホームで応援してくれる人たちがいっぱいいる中で、アメリカンフットボールができたというのがすごく幸せだなと感じました。あそこで勝つと負けるとでは、メンバーたちの人生も大きく変わったんだろうなと思います。
――X1 SUPERでは苦しい戦いが続きました。
コージ:大学時代にバリバリやっていた人たちの集まりを対戦相手で見たときは、チームとしてのレベルが全然違うなと思いました。ただ、1個人を見たときのレベルとか、フィールド外での頑張りとか、アメリカンフットボールがどれだけ好きかという思いに関しては、何も負けているところはないし、SUNSの選手が誇れるところですので。負けて、経験して、強くなっていくんだろうなっていうのを、俯瞰(ふかん)して見ているところもありました。最初、絶対避けては通れない道だろうと。みんなそれは覚悟していますし、そんなにすぐ勝てるようにはならない。気持ちが強い選手が多いですから、負けて悔しい思いもあるけど、それ以上にここで渡り合えるようになりたいっていう前向きな思いが強かったんですよ。