陸上・駅伝

特集:第55回全日本大学駅伝

駒澤大学は4連覇をめざす 青山学院・中央も優勝狙う 全日本大学駅伝監督アンケート

前回大会の1区、集団で走る選手たち。今年栄冠をつかむのは?(撮影・杉本康弘)

いよいよ11月5日に開催される第55回全日本大学駅伝。全国から27チームが日本一をかけて伊勢路を駆け抜ける。先月発表されたチームエントリーの際に全日本大学駅伝事務局が行ったアンケートから、各大学の監督・チームの目標についてまとめた。大会前日には監督の会見が予定されており、各チームのエントリーや戦略に注目が集まる。

※回答は10月11日締め切りのチームエントリー時点のもの。

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駒澤大など優勝を狙う3校

「優勝」とはっきり目標に書いたのは駒澤大学・青山学院大学・中央大学の3校。駒澤大は大会4連覇がかかる。今年から監督に就任した藤田敦史監督は「世界を見据える高いレベルの選手が数名おり、そこを必死に追いかけようとする選手の集合体。チームの結束力は随一」と自信をのぞかせる。鈴木芽吹(4年、佐久長聖)、篠原倖太朗(3年、富里)、佐藤圭汰(2年、洛南)の3人のエースがどの区間に配置されるかにも注目だ。出雲駅伝は連覇を果たし、全日本大学駅伝も優勝すると、チームが目標としている「2年連続三冠」に王手がかかる。

今年の出雲駅伝1区区間賞の駒澤大・篠原(右、撮影・藤井みさ)

青山学院大の原晋監督はチームの特徴について「チーム全体で成長していくメソッドを擁する」と分析する。昨年度チームを引っ張った近藤幸太郎(現・SGホールディングス)や岸本大紀(現・GMOアスリーツ)が卒業し、今年はまさに「成長」の年。全日本大学駅伝経験者も佐藤一世(4年、八千代松陰)、 山内健登(4年、樟南)、若林宏樹(3年、洛南)の3人のみで、多くの選手が初出走となる。

中央大の藤原正和監督はチームを「各学年に主軸となる選手がおり、年々層を厚くできている。湯浅仁(宮崎日大)を中心に4年生が安定しており、モチベーションの高い集団」と評する。その言葉通り、4年生の吉居大和(仙台育英)と中野翔太(世羅)のWエースを中心に、3年生には阿部陽樹(西京)、2年生には吉居駿恭(仙台育英)や溜池一太(洛南)、1年生には本間颯(埼玉栄)などのように、各学年に中心となるメンバーがそろい、チャレンジャーの立場から優勝をめざす。

中央大が誇るスピードランナー・溜池(撮影・藤井みさ)

■目標が「優勝」のチーム(前回順位/今大会出場回数/過去優勝回数)
駒澤大学   1位/28大会連続30回目/15回
青山学院大学 3位/11大会連続13回目/2回
中央大学   7位/3大会連続30回目/0回

國學院大、順天堂大、創価大、早稲田大が上位をうかがう

「3位以内」と回答したのは、國學院大學、順天堂大学、創価大学、早稲田大学の4校。國學院大の前田康弘監督は目標を表彰台としながらも「てっぺんも目指し全力で挑みます」と意気込む。伊地知賢造(4年、松山)、平林清澄(3年、美方)、山本歩夢(3年、自由ケ丘)の3本柱を中心に出雲駅伝で1区区間3位の上原琉翔(2年、北山)やU20日本選手権5000m優勝の⻘木瑠郁(2年、健大高崎)も勢いがある。

順天堂大を率いる長門俊介監督は「学生たちは3位以内を目指しているが何としてもシードは死守したい」という。今後の日本陸上競技界を牽引(けんいん)するであろう三浦龍司(4年、洛南)や吉岡大翔(1年、佐久長聖)などがいることを強みとして、個々の競技力向上を図ってきた。出雲駅伝では10位と厳しい結果になったが「出遅れていたメンバーも合流し、各学年でバランスの良いチームができている」と自信を見せた。

関東インカレ男子1部5000mで優勝した順天堂大の三浦(撮影・藤井みさ)

創価大は出雲駅伝で準優勝し、勢いがある。榎木和貴監督は「昨年までのような絶対的なエースはいないが、次のエースは自分だという意識の中で高めあい、先輩後輩関係なく明るい雰囲気の中で切磋琢磨(せっさたくま)できている」と雰囲気の良さを押し出した。出雲駅伝で区間賞を獲得した山森龍暁(4年、鯖江)と吉田響(3年、東海大静岡翔洋)や10000mで27分台の自己記録を持つリーキー・カミナ(3年、チョメ)なども順当にエントリー。昨年度の5位を上回る3位以上が目標だ。

就任2年目となる早稲田大の花田勝彦監督は「3位以内が目標となるが、最低でも昨年の6位を上回りたい」と話す。チームの特徴は「各学年に核となる選手が2,3人いて、バランスの取れたチームである。また、世界を意識しているメンバーも増えてきて、チームの意識も上がってきた」と回答。今年は海外にも目を向けてきた。8月に中国で行われたFISUワールドユニバーシティゲームズ男子3000m障害では菖蒲敦司(4年、西京)が銅メダルを獲得。9月のチェコ・プラハで行われた10kmロードレースに石塚陽士(3年、早稲田実業)、伊藤大志(3年、佐久長聖)、山口智規(2年、学法石川)が出走し、確実にレベルアップしている。

■目標が「3位以内」のチーム(前回順位/今大会出場回数/過去優勝回数)
國學院大學 2位/9大会連続11回目/0回
順天堂大学 4位/7大会連続28回目/1回
創価大学  5位/2大会連続2回目/0回
早稲田大学 6位/17大会連続29回目/5回

城西大、大東大、東洋大などシード権争いも注目

シード圏内の順位を目標したのは城西大学、大東文化大学、東洋大学、東海大学、東京国際大学、東京農業大学、帝京大学、そして関東以外から唯一、立命館大学。

城西大学は「5位」が目標。櫛部静二監督の「他チームと比べても成長著しく勢いがある」という言葉通り、ヴィクター・キムタイ(2年、マウ)が5月に10000m28分24秒57の自己ベストを出すと、エース山本唯翔(4年、開志国際)が7月に5000mの自己ベストを更新。出雲駅伝でも安定感を見せ3位となった。3大会ぶりの全日本大学駅伝で躍動できるか。

今年の出雲駅伝3位でフィニッシュする城西大の山本(撮影・藤井みさ)

10月の箱根駅伝予選会をトップ通過した大東文化大学は「8位」を目指す。真名子圭監督はチームを「仲間思いでまとまりがある」と評する。16人中8人が10000m28分台の自己ベストを持ち、箱根駅伝予選会では西川千青(3年、九州国際大付)、久保田徹(4年、聖望学園)、菊地駿介(4年、仙台育英)の3人が1時間2分台の好走を見せ、勢いに乗る。

東洋大の酒井俊幸監督は「今季台頭してきた選手がレースを重ねながら成長を遂げてきた」とチームを分析。復活のエース松山和希(4年、学法石川)を中心に、関東インカレ男子1部ハーフマラソンで3位入賞を果たした梅崎蓮(3年、宇和島東)や同大会1部10000mで8位入賞の小林亮太(3年、豊川)など前半シーズンで経験を積んだ選手たちの走りに期待したい。

東海大の目標は8位。エントリーメンバーにはエース石原翔太郎(4年、倉敷)や関東インカレ1部10000mで28分15秒65の自己ベストで2位となった花岡寿哉(2年、上田西)など粒ぞろい。箱根予選会から1カ月を開けずしてのレースにはなるが、入賞ラインに絡みたい。

箱根駅伝予選会で3秒に泣き、本選出場を逃した東京国際大も「シード権獲得」が目標だ。横溝三郎監督は「強力な留学生選手がいること」を特徴に挙げた。圧倒的な力で幾度も区間新記録を打ち立てたイェゴン・ヴィンセント(現・Honda)が卒業し、今年2人の留学生選手が入学した。今回エントリーメンバー入りを果たしたのはアモス・ベット(1年、イテンミックスデイ)。10000m27分台を持つ選手だ。今年度の3大駅伝はこの全日本大学駅伝のみ。一発勝負で目標達成を目指す。

箱根駅伝予選会日本人トップの前田和摩(1年、報徳学園)を擁する東京農業大の小指徹監督はチームの雰囲気を「学年問わず選手同士の仲が良い」と話す。10年ぶりに箱根駅伝本選への出場を決め、勢いそのままに伊勢路でシード権獲得なるか。

帝京大の中野孝行監督は自校を「スピード・スタミナのバランスが取れたチーム」とする。10000m28分台の主将・西脇翔太(4年、名経大高蔵)を主軸に3大会ぶりの入賞を狙う。

関西勢を代表する立命館大。山菅善樹監督はチームの特徴を「3年生の大森駿斗(智辯学園奈良カレッジ)、中田千太郎(智辯学園奈良カレッジ)、山﨑皓太(洛南)をチームの柱としつつ、層の厚い2年生をと勢いのある1年生が実力をつけてきており、チームのメンバー争いが激しくなっている」と回答した。4年生は北辻巴樹(清風)、谷口晴信(網野)の2人のみだが、その2人がしっかりとチームをまとめ「いい緊張感」があるチームになっている。前回大会は18位。関東勢に一矢を報いることができるか。

■目標が「シード権」または「8位入賞」のチーム(前回順位/今大会出場回数/過去優勝回数)
城西大学   -位/3大会ぶり10回目/0回
大東文化大学 14位/2大会連続44回目/7回
東洋大学   8位/16大会連続31回目/1回
東海大学   10位/10大会連続36回目/2回
東京国際大学 11位/5大会連続5回目/0回
東京農業大学 -位/14大会ぶり20回目/0回
帝京大学   -位/2大会ぶり15回目/0回
立命館大学  18位/23大会連続35回目/0回

関西勢は関東勢の一角を崩すことが目標

チームの襷(たすき)を最終走者までつなぐことを目標にするのは北海道地区の札幌学院大学。鹿内万敬監督は「3年生が主体のチーム。そこに新入生がようやく調子を上げてきた。夏場の走り込みを通じて、安定感が増してきている」といい、伊勢路で力を出し切りたい。

13大会ぶりの出場となる東北学院大学は20位以内が目標。北目秀哉監督は「ほぼ初出場と同じなので、大会を経験し、人間として、競技者として成長してほしい」と話す。

まずは経験を積み、10位を目標にするのは国士舘大学。小川博之監督は「4年生を中心に明るく個性の強いチームであり、どんなときでも前向きに持ちタイム以上に勝負どころで力を発揮するところが長所である。2、3年生に主力選手が多く今後も楽しみなチームである」といい、来年以降を考えたオーダーになりそうだ。

新潟大学は北信越記録の更新と20位以内が目標だ。天野達郎監督は「学生主体で活動しているチーム。陸上が好きな学生が集まり、学業と両立させながら競技に取り組んでいる」と国公立大学ならではの特徴を挙げた。

名古屋大学は関東勢以外の最上位である16位を目標に据える。林育生監督はチームの特徴を「一人ひとりが自主的に考えられて行動できる力がある」と回答。関西地区の大学も多くが16位を目標にしており、関西地区選考会をトップ通過した大阪経済大学の青木基泰監督は「大エースはいないが、レギュラー争いが熾烈(しれつ)な過去最強チーム」と評し、常に緊迫感のある練習ができているという。

関西大学はスポーツ推薦による入部者が24人中10人と非常に少ない分、一般受験などで入部した選手もチームの主力として活躍している。吉田有輝監督は「関東勢以外の最上位だけでなく、関東勢の下位校とも勝負する」と意気込む。

関西大の亀田。関東勢とどこまで争えるかも注目される(撮影・藤井みさ)

関西学院大学も「地方勢1位、関東勢の一角を崩すこと」が目標。竹原純一監督は「走り込みによる選手力の底上げを行い、チーム一丸となり切磋琢磨している」と回答した。

中国四国地区代表の環太平洋大学は「関西の大学に1つでも勝利すること」が目標だ。4年生中心のチーム編成で、吉岡利貢監督は期待する選手に中川太智(4年、南宇和)、髙嶋荘太(2年、中京大中京)、佐野泰斗(1年、平田)を挙げた。

九州地区代表の鹿児島大学の目標は「他の国公立大学に競り勝つ」こと。今回は3校の国公立大学が出場。塗木淳夫監督は「創意工夫とコミュニケーション力」がチームの武器だと考える。

全日本大学駅伝では、毎年成績に応じて翌年大会の地域に割り当てられる枠の数が変動する。各8地区の基本枠は1ずつ。現在はシード枠として1~8位の大学が自動的に次回大会の出場権を得て、9位~17位の大学の所属地区に成績枠計9を配分する。各地区の出場枠は最大で15とするルールになっている。上位は関東勢が占めることが予想され、関東勢以外は少しでも地方枠を増やすために上位を狙っていく。

■目標その他もしくは回答なし(前回順位/今大会出場)
札幌学院大学 19位/6大会連続30回目
東北学院大学 -位/13大会ぶり17回目
国士舘大学  -位/7大会ぶり12回目
新潟大学   24位/2大会連続14回目
名古屋大学  -位/11大会ぶり16回目
大阪経済大学 17位/3大会連続25回目
関西大学   -位/7大会ぶり13回目
関西学院大学 16位/5大会連続13回目
環太平洋大学 22位/3大会連続4回目
鹿児島大学  -位/39大会ぶり9回目

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