陸上・駅伝

特集:第101回箱根駅伝

城西大学は箱根駅伝4位以上目標 斎藤将也「全区間準備している。真のエースになる」

オンラインでの会見に出席した(左から)櫛部監督、斎藤、平林、久保出(すべて写真提供・城西大学男子駅伝部)

第101回箱根駅伝を前にした12月16日、城西大学のオンライン会見が開催された。櫛部静二監督と主将の平林樹(4年、拓大一)、久保出雄太(4年、小松大谷)、斎藤将也(3年、敦賀気比)が出席し、それぞれが目標や意気込み、箱根駅伝に対する思いを語った。

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櫛部静二監督「成長率は他大学を見てもトップレベル」

まず箱根駅伝における目標をたずねると、「4位以上」と答えた櫛部監督。11月の終わりから12月はじめにかけて合宿を行い、その仕上がりを見て学生たちと目標を決めたという。

「学生からは当初『4位』と私の方に話があったんですが、合宿の成果も順調に進みました。4位は妥当かなと思っていますが、それ以上の成績も可能性が十分にあると考えて、『4位以上』としました」と意図を説明。少し中途半端な数字だとは認めつつ、國學院大學、駒澤大学、青山学院大学の「3強」の存在を考えると簡単には3位以上とは言えない。だが、前回総合3位になったことを考えると、可能性も捨てきれない……。複雑な心境も感じ取れた。

冷静な語り口の中にも、チームづくりへのたしかな自信を感じさせた櫛部監督

前回は山本唯翔(現・SUBARU)が5区で2大会連続となる区間新記録で区間賞を獲得し、チームに勢いをつけたことが過去最高の総合3位につながったと櫛部監督。前主将の野村颯斗(現・中国電力)、山中秀真(現・トーエネック)と山本の「3本柱」が卒業し、新チームがスタートした当初は戦力ダウンになったと率直に認める。

しかしそこから一人ひとりが強化を進め、走力を上げることを目指してきた。「比較的順調に強化も進み、成長率としては他の大学を見渡してみても城西大学がトップレベルだと思っています」と手応えを語った。

山本唯翔の抜けた穴をどうするか、との質問には「適任としては斎藤だと思っています。個人的には彼に走ってほしいですが、(斎藤を)2区ということも頭に入れつつ構成を考えています」。斎藤の他に5区候補がもう1人おり、最終段階で調子を見て決めていきたいという。

今季は主将の平林、斎藤、ヴィクター・キムタイ(3年、マウ)がチームの中心となる「3本柱」だと櫛部監督は認めている。その他に注目すべき選手を聞いてみると、真っ先に久保出の名が上がった。「同好会から駅伝部に入部し、全選手の中でも成長が著しいと思っています」と評価した。

エースだけが強いのではなく、全員が強さを持つチームになってきた(左から平林、斎藤、久保出)

その他、3年の鈴木健心(一関学院)についても「入学当初から非常に力がありましたが、けがを繰り返しなかなか走れない時期がありました。しかし成長して今回の大会に臨んでいます」。また、4年の林晃耀(いわき総合)もタイムはないが、駅伝では安定した力を持っている。「そういった選手が城西大の主軸となっています」

今回のエントリーメンバーに入った1年生の小林竜輝(鹿島学園)は6月のU20日本選手権5000mで13分55秒04をマーク。11月の上尾シティハーフマラソンでは後半にペースダウンしたものの、1時間3分04秒だった。同じくルーキーの三宅駿(四国学院大香川西)も上尾ハーフで1時間2分58秒と好走した。「1年生としては非常に戦力となります」とルーキーの活躍も期待される。

平林樹「往路でチームに貢献を」

主将の平林は、櫛部監督いわく「言葉ではなく、姿勢で見せるタイプ」。今年は5月の関東インカレ1部10000mで、チームメートのキムタイに先行して28分03秒13の自己ベストをマークし2位となった。櫛部監督は「本人も自信になっただろうし、チームとしても盛り上がった象徴的なシーン」と表現。キャプテンとして牽引(けんいん)する役割を果たしてくれていると信頼を寄せている。

平林は最後の箱根駅伝に臨む意気込みとして「今シーズンは(前回)箱根駅伝で3位に入ってかなり注目される中での駅伝になりました。駅伝シーズンは目標に今ひとつ届いていないですが、チーム全体としての力、厚さは出ている感触はあります。昨年とは違い、『全員で戦う』ことを意識して4位以上を目指していきたいです」と口にした。

2年、3年と駅伝では納得ができる走りをできていない。最後はチームを助ける走りをしたいと平林は言う

平林は、個人個人が自分の目標に向かって最大限努力していくチームにしていきたいと考えた。「『これをやって』と言い続けるのではなく、各自で考えてやってほしいと思いました。上に立って自分が言っていくというよりは、目標を明確にして取り組んでもらうように動いてきました」

主将として苦労したことを聞かれると「特にないです」という。「みんな自分でいろいろやってくれたりしているので。主将として苦労したことはないけど、夏合宿で足を痛めて走れない期間があったり、出雲駅伝、全日本大学駅伝では主将としてあまり誇れる走りができませんでした。少し不甲斐(ふがい)ないと感じました」と競技面での反省点を語った。

2年時、3年時と連続して9区を走っている平林だが、今年は往路を任されるつもりで1年間準備してきた。「1区、3区、4区なら自分の力を出せると思います。どこの区間を走っても、しっかり先頭が見える位置で進めないと4位は見えてきません。区間3位以上を目指して、常に上位で争っていけるような走りをしていきたいと思います」

久保出雄太「監督に恩返しの走りをして、区間賞を」

櫛部監督にも主軸の1人として指名された久保出は、「まだ区間は言われていませんが、自分の中で予想した上で、今考えている区間は1区か9区だと思っています」とまずは予想を口にした。「1区であれば集団についていってラストでの勝負、9区であれば10区の前に試合の結果を決めるような走りができればと思います」と具体的にイメージを語った。

高校時代に実績のなかった久保出は、入学当初は陸上同好会からのスタート。入部に必要なタイムをクリアし、2年の春から陸上部に入ったタイミングが最大のターニングポイントだったと語る。「こんなに素晴らしい監督に教えてもらうことがなかったので。基礎練習や走り込みだけでは手に入らないものというのがあって、タイム的にも一番成長できたなと感じています」

4年間での成長率はチーム内でもトップ。「9区なら68分を切っていきたい。それぐらいじゃないと区間賞を取れない」

他の部員よりも遅いスタートだったが、2年生の時から「箱根駅伝を走るんだ」という気持ちを持っていた。「4年生で走れればいいや、と思っていたら走れないと思いました」と強い思いを持ち続け、前回の6区で箱根駅伝デビュー。今年は関東インカレ1部ハーフマラソンで7位入賞と結果を出し、出雲駅伝6区、全日本大学駅伝7区といずれも長い区間を任せられている。

箱根駅伝への思いを問われると「監督への恩返しという思いが一番強いです」といい、「笑顔でしっかり襷(たすき)リレーをして、区間賞で終わりたいです」と意気込んだ。

斎藤将也「真のエースになるために強さを見せる」

終始強気な発言が目立ったのが斎藤だ。「いろんな記事を読んだんですが、全てにおいて『日本人エース』としか書かれていません。箱根駅伝で真のエースになるために、ヴィクター(キムタイ)よりも強さを見せていきたいと思っています」とまず強い口調で意気込みを述べた。

1年間通して継続した練習ができており、5000m、10000mの自己ベストも更新。特に11月23日の八王子ロングディスタンスでは、実業団選手と走って27分45秒12をマーク。「去年以上の強さはありますし、調子も上がっているので、いい走りができるのではないかなと思います」と自信を見せる。

以前は2区への思い入れを語っていたが、走りたい、想定している区間を聞くと「全区間準備しています」との答え。「走る準備はできています。あとは言われた区間を走るだけです」という。

淡々とやるべきことに向かい、強くなってきた。斎藤の言葉からは自信が感じられた

前回は2回目の2区に臨み、櫛部監督からは設定された67分30秒をターゲットとして走った。結果として67分15秒と設定を15秒上回ったが、区間上位6人が66分台で走り、斎藤は区間8位だった。「想像以上に66分台が出て、固定観念を変えていかないといけないと感じました」。チームは往路優勝を目指した中で、トップの青山学院大と3分以上の大差をつけられた。「悔しかったです。リベンジができるように、任された区間で区間賞をとって、チームに勢いをつけたいです」

1年時には「仮想箱根駅伝5区」と言われるレース「激坂王決定戦」で、先輩の山本に先着して優勝した。上りの適性について聞かれると「適性があるかはわかりません。ただ全力で駆け上っているだけです。自分の中では平坦(へいたん)も上りも同じなので、どれだけきつさを我慢できるか。メンタルでは負けたくないです」との答え。負けず嫌いの性格をここでも隠すことなく、「勝ちたい」という気持ちが伝わってきた。

積極的にハイペースに持ち込み、そのペースを維持できるところが自らのスタイルであり、長所だという斎藤。どの区間になっても「真のエース」を目指し走る。

一人ひとりが着実にレベルアップして、チーム全体が強くなってきた。箱根路でどのような戦いを見せるか

「チームの特徴として、わずかながらではあるが層が厚くなったと自負しています」と語った櫛部監督。地道な強化が実り、チーム力が着々と底上げされてきている。4位「以上」の目標へ、全員駅伝で臨む。

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