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「縦のメイジ」vs「横のワセダ」

早稲田が誇る若きBK陣。左からFB河瀬、WTB長田、WTB古賀 (撮影・斉藤健仁)

関東大学対抗戦Aグループ

12月2日@東京・秩父宮
早稲田大(5勝1敗)vs 明治大(同)

いよいよ臙脂(エンジ)と紫紺の94回目を迎える伝統の一戦だ。今年は5勝1敗同士の激突で、勝者はすでに6勝1敗で全日程を終えた帝京大と同時優勝となる。例年以上に注目の一戦となり、チケットは完売した。

過去の通算成績は早稲田の53勝2分38敗と優勢だが、昨年は明治が勝っている。今年も明治が勝てば対抗戦1位通過での大学選手権出場が決まり、早稲田が勝つと帝京が1位、早稲田が2位通過となる。

◇過去5年の対戦
2013年 ○早稲田15- 3●明治
  14年 ○早稲田37-24●明治
  15年 ●早稲田24-32○明治
  16年 ○早稲田24─22●明治
  17年 ●早稲田19-29○明治

メイジはFBに1年の雲山を抜擢

まずは明治のメンバーから見ていこう。慶應に負けた(24-28)が、帝京に勝ち(23-15)、勢いに乗る。帝京戦から先発2人、リザーブを2人替えてきた。

帝京戦でスクラム、接点とFW戦で勝利したこともあり、FW8人は変更なし。ただBKは司令塔の10番はゲームコントロールに長けた忽那鐘太(4年、石見智翠館)から、アタックが魅力の松尾に替えた。またFBは山沢京平(2年、深谷)を外し、1年の雲山を抜擢(ばってき)した。控えのFWにはジュニア選手権の決勝(42-26東海大)で20年ぶりの優勝に貢献したメンバーから 、PR笹川とFL朝長がメンバー入りを果たした。

◇明治 先発予定メンバー
1 安昌豪(3年、大阪朝鮮)
2 武井日向(3年、國學院栃木)
3 祝原涼介(4年、桐蔭学園)
4 片倉康瑛(2年、明大中野)
5 箸本龍雅(2年、東福岡)
6 石井洋介(3年、桐蔭学園)
7 井上遼(4年、報徳学園)
8 坂和樹(3年、明大中野八王子)
9 福田健太(4年、茗渓学園)
10 松尾将太郎(4年、東福岡)
11 髙橋汰地(4年、常翔学園)
12 森勇登(2年、東福岡)
13 渡邉弐貴(4年、國學院栃木)
14 山村知也(3年、報徳学園)
15雲山弘貴(1年、報徳学園) 

リザーブ
16松岡賢太(3年、京都成章)17齊藤剣(4年、能代工)18笹川大五(3年、明大中野)19小宮カズミ(4年、目黒学院)20朝長駿(4年、長崎北陽台)21飯沼蓮(1年、日川)22射場大輔(3年、常翔学園)23山﨑洋之(3年、筑紫)

明治のセットプレーの要、HO武井 (撮影・斉藤健仁)

やはり勝敗の鍵を握るのは帝京戦でMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に輝いたHO武井、FL井上らを中心とした明治のFW陣だろう。帝京戦では相手ボールのスクラムをターンオーバーし、WTB高橋のトライにつなげたシーンが印象的だった。

「シンプルに、かつ自分たちの強みを出そうと臨み、選手たちが我慢強くプレーした結果、勝ちきることができた。セットプレーの強さについては、去年からこだわって取り組んできたことが、積み上がってきました」。田中澄憲監督は、より自信を深めた。キャプテンのSH福田は「来年1月12日の大学選手権決勝まで、ブレないでやっていくとともに、対抗戦での順位を意識することなく早稲田戦に臨みたい」と意気上がる。

明治が伝統の一戦に勝利し、3年ぶりの対抗戦優勝だけでなく、大学選手権の第1シードを奪取できるか。

セットプレーの安定が鍵。BK陣が少ないチャンスをものにできるか

それでは、創部100周年のアニバーサリーイヤーを迎えて何としても優勝したい早稲田のメンバーを見ていこう。春から鍛えてきたディフェンスや接点でも上回り、21-14で勝った早慶戦から、先発のメンバー交替は1人だけ。HOの先発を峨家に、宮里を控えに回した。スクラムの強い明治への対策だろう。SH齋藤、SO岸岡のハーフ団やPR小林、WTB長田、FB河瀬の3人のルーキーは、慶應戦から変わらずスターターに名を連ねた。

◇早稲田 先発予定メンバー

1 鶴川達彦(4年、桐蔭中等教育)
2 峨家直也(4年、報徳学園)
3 小林賢太(1年、東福岡)
4 中山匠(3年、成城学園)
5 下川甲嗣(2年、修猷館)
6 柴田徹(3年、桐蔭学園)
7 幸重天(3年、大分舞鶴)
8 丸尾崇真(2年、早稲田実)
9 齋藤直人(3年、桐蔭学園)
10 岸岡智樹(3年、東海大仰星)
11 古賀由教(2年、東福岡)
12 中野将伍(3年、東筑)
13 桑山淳生(3年、鹿児島実)
14 長田智希(1年、東海大仰星)
15 河瀬諒介(1年、東海大仰星)

リザーブ
16千野健斗(4年、成蹊)17宮里侑樹(4年、名護商工)18土田彬洋(2年、茗渓学園)19松井丈典(4年、旭野)20佐藤真吾(4年、本郷)21貝塚陸(4年、本郷)22船越明義(4年、早大学院)23佐々木尚(4年、桐蔭学園)

早稲田の前3人はセットプレーを安定させられるか (撮影・斉藤健仁)

先発15人のうち4年生は2人だけ。7人の3年生が中心となる早稲田はまず、セットプレーを安定させられるかがキーとなるだろう。PR鶴川、HO峨家、さらに控えの1列の千野、宮里といった4年生の奮闘に期待したい。またBK陣はやや早稲田が有利と見られており、少ないチャンスでしっかり取りきるのも欠かせない。

就任1年目の相良南海夫監督は「ディフェンスをしっかり積み上げていくこと。明治さんはスクラムが武器だとよくわかっていますので、準備が限られた期間の中でしっかりやりたい。勝てば優勝ということなので1点でも多く上回れるような気持ちのこもった試合をしたい」と意気込んだ。また残念ながら、早慶戦に続いて控えに回った佐藤キャプテンは「アタックもディフェンスも、いままでやってきたことは変わらないので、精度を高くしていきたい」と静かに闘志を燃やしていた。

早稲田はライバルに勝利し、記念の年に8年ぶりの優勝を飾ることができるか。

伝統のカラー、今年は色濃く

今年の明治はFWが強くて「縦のメイジ」、早稲田はBKに展開力があって「横のワセダ」という、両校の伝統のカラーがより色濃く出る勝負になるだろう。優勝のかかった大一番ということともあり、秩父宮は例年にない盛り上がりを見せるのは間違いない。ノーサイドのホイッスルが鳴った後、歓喜に湧くのは臙脂か紫紺か。両雄の激突は12月2日14時にキックオフのときを迎える。

大舞台で15番に抜擢された明治1年雲山 (撮影・斉藤健仁)

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