陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

大八木監督に恩返しを 駒大高・渡邉先生

渡邉先生はいま、駒大高陸上部の顧問として駅伝に関わっています
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駅伝シーズンが終わり、各大学は来シーズンに向けて動き出しています。この「M高史の駅伝まるかじり」も、気持ち新たに走り続けます!! これまでは駅伝シーズンのチームの活動について紹介してきましたが、ここからは駅伝に関するさまざまなお話を紹介できればと思ってます。その一つが私、M高史のように現役時代はマネージャーとして活動し、その後も駅伝に携わっている方々のストーリーです。今回は駒大時代に副務を経験し、現在は駒大高校(東京)の陸上部で顧問をしている渡邉聡先生の素顔に迫ります。

渡邉先生は1991年生まれ。拓大一高(東京)、駒澤大を経て、現在は駒澤大学高校の教員です。2017年より陸上競技部の長距離部門を指導し、昨年は東京都予選で初優勝を飾り、暮れの全国高校駅伝(都大路)に初出場。駒大で大八木弘明監督のDNAを受け継いだ一人です。

父の勤務校で練習

渡邉先生は同じく教員で陸上部の顧問をしているお父さんの影響で、小学4年生のときに地域のマラソン大会に出ました。それがきっかけで走り始め、やがて箱根駅伝にはまる駅伝少年になりました。どんどん詳しくなり、毎月陸上雑誌を読むのが楽しみだったそうです。

なのに、進学した地元の中学には陸上部がありませんでした。そのため週に1~2日、お父さんの勤める学校に通っては、一緒に練習をしていました。残りの日は河川敷で自主練習を積み重ねる日々。3年生のときに3000mで9分5秒をマーク。高校からは本気でやりたいと決意したそうです。

拓大一高でようやく陸上部に入部。1年生のときは補欠でしたが、チームは都予選で優勝し、都大路に出場しました。2年生のときには都予選で7区のアンカーを走り、優勝のフィニッシュテープを切ります。都大路でも7区を走りました。3年生ではキャプテンとしてチームを引っ張りましたが、都予選で3位に終わり、都大路は走れませんでした。

渡邉先生は拓大一高2年のときに、アンカーで都大路を走りました

当時の5000mの自己ベストは14分42秒と全国的には目立つ成績ではありませんでしたが、根っからの駅伝少年には「箱根」「駒大」「大八木監督」に対して強いあこがれがありました。「厳しい環境でやりたい! 追い込まれたい!! 一流の指導者と選手たちの中でやりたい!!!」。指定校推薦で駒大入学を果たすと、強い決意で陸上部の門をたたきました。

駒大の同期に窪田、油布

期待に胸を膨らませて始まった大学生活でしたが、渡邉先生は当時を振り返り、「窪田忍(現・トヨタ自動車)、油布郁人(富士通OB)といった同期が活躍する中、自分自身は朝練と快調走ばかりの選手生活でした」と話します。そして2年生の箱根駅伝が終わったころ、大八木監督からマネージャー転向の打診がありました。

「最初はいやでした。でも次第に、選手として入ったのにチームに迷惑をかけてばかりいるより、残りの2年間は全力でマネージャーをやる方がいいんじゃないか、と思うようになりました」。渡邉先生は決心し、2年間副務を務めました。渡邉先生はマネージャー時代を振り返り、こう話します。「裏方だけど、選手のために頑張ればチームに貢献できるし、性格も向いてたかもしれないです。ただタイムを計測するだけでなく、天候や選手の体調に合わせて練習内容を微調整する面白さ、奥の深さに魅了されました」

駅伝に青春を捧げた駒大時代。左から2人目が油布さん、3人目が渡邉先生、4人目が窪田さん(写真提供・水上俊介)

大八木監督の勧めもあり、在学中に教員免許を取得しました。さらに監督から「部活の顧問をするなら体育もとった方がいい」とアドバイスをされたそうです。駒大は体育系の学部がないため、卒業後はアルバイトをしながら通信制の星槎大で勉強し、体育教諭の免許もとりました。その間、母校の拓大一高で外部コーチも務めました。

時間かかっても都大路優勝を目指す

そして、いまは駒大高校陸上部にて、監督の草島文勝先生とともに長距離部門の指導にあたってます。17年の都大路の東京都予選は2位でした。「次は優勝を狙おう」と冬季に練習量を増やしたところ、故障者が続出。その影響もあってか、春先からなかなか結果が出なかったそうです。夏合宿でしっかり走りこみましたが、9月に出場した「しらかわ駅伝」でライバルの國學院大學久我山高校に惨敗。「ライバルを意識し過ぎるよりも、いまのベストを尽くすしかない」。渡邉先生は気持ちを切り替えたといいます。

陸上部の顧問になるために、渡邉先生は体育教員の免許もとりました

さらに結果が出ず苦しんでいたとき、大八木監督から「指導では練習メニューやタイムよりも、あいさつ、礼儀、掃除など、基本的なことが大切」「人としての成長が何より大事」というアドバイスを受けます。恩師の言葉を力に変え、渡邉先生は「人として成長できれば自ずと結果はついてくる」「感謝の気持ちを忘れずに」の二つを指導の基本に掲げました。チーム一丸となって挑んだ昨年11月の東京都予選で初優勝。ついに都大路出場を決めました。

20位を目標に挑んだものの、結果は30位。「都大路は高速化してます。とても悔しかったです」と渡邉先生全国の壁を痛感しました。今後の目標はもちろん、都大路でのリベンジ。「やるからにはどんなに時間がかかっても入賞、そして優勝を目指したいです。簡単にはいかないけど、目指さないことには何も始まらないですから」

渡邉先生には、全国的にも強いと言われる選手を育てたいという思いもあります。「駒澤でもエースになれるくらい、花の2区を任されるくらいの選手になってほしいです」。大八木監督に恩返しできるような指導者。それが渡邉先生の目標です。

昨年夏、駒大高の選手たちが駒大の合宿に参加。大八木監督からアドバイスを受けました

大八木監督は渡邉先生について「指導者として熱心に子どもたちを見てます。強くさせたいという情熱を感じる」と言います。そして「先生が本気になってる姿勢、情熱があれば、子どもたちにも伝わって本気になる。情熱を持ち続けて頑張ってほしい」とエールを送っています。

「謙虚な気持ちを忘れず、生徒とともに成長していきたいと思ってます!! 」と語る渡邉先生の挑戦は、始まったばかりです。

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M高史の陸上まるかじり

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