泣いて食らいついた就活、学生最後の大会へ 元中央大ソングリーディング部 大嶋夏実4
大学時代にスポーツに打ちこんだ方に当時を振り返っていただく連載「私の4years.」。中央大学ソングリーディング部「Garnet Girls」で活動していた大嶋夏実さん(25)の4回目は、チアを引退して没頭した就職活動、そして現役復帰して臨んだ最後の全国大会についてです。
胸に刺さった後輩のひとこと
2016年春に卒業した私の年代の就活は、3年生の3月に解禁、4年生の6月が面接解禁という、おそらくここ数年では最も遅いスケジュールでした。3年生の秋ごろから、セミナーや面談も始まっていたので、少しずつ就活を始めてはいましたが、本格的にスタートしたのは世界大会からの帰国後、3年生の1月でした。チアをやりながらだと、必ずどっちもダメになる気がしていたので、「世界大会が終わったら就活に勝負をかけよう」「チアからは離れよう」と決めていました。
というのも、私も何度か面接などで練習を早退していたのですが、世界大会前のある日の練習で、後輩に言われたんです。
「先輩たちは就活で練習を抜けてもレギュラーメンバーでいられていいですね」
このひとことは胸に刺さりました。これも、引退してから就活をやることに決めた一つの理由です。
自分は何をしたいのか、模索の日々
本格的に就活をスタートして、誰もがまず直面するのは「自己分析」だと思います。私は何者なのか、何をしていると力が湧いて、何が得意で何が苦手なのか……。私の場合、好奇心旺盛な性格が裏目に出てしまい、「これ」といった特定の職種を決めて就活をすることができず、よくある「絞れない」「広く浅く」というスタイルで就活に臨みました。
その当時までの自分を振り返ってみると、一貫しているのは「1番が好き」ということ。とりあえずそこだけはブレないようにしようと、さまざまな業界の「いちばん」の企業をひたすら受けました。ご縁のあった企業もあれば、なかった企業もありましたが、割とスムーズに進んでいました。ただ毎回心がモヤモヤとしていたのは「チアとはどう関わっていきたいのか」ということでした。もともとチアは好きでも、なかなかそれだけでは食べていけない職業だということは分かっていましたし、アメリカでは仕事と両立してこそチアリーダーであるという認識もあったので、チアだけで生きていこうとは思っていませんでした。
「キラキラの肩書なんて武器にならない」
そんな時期、就活マインドに火がついた出来事がありました。OG訪問を重ねる中で、私が当時所属していたGarnet Girlsの初代の先輩にお会いしたときのことです。その先輩は私が入ることになる広告代理店に勤めていらっしゃったのですが、あまり就活でつまづくこともなかった私におっしゃいました。
「日本一とか世界一とか、そんなキラキラした肩書きなんて何の武器にもならないような出来事がこれからたくさん出てくるよ、自分の売りはそれしかないの?」
それまでの人生で、立ち直れないほどの挫折という挫折を味わうこともなく、なんとなくチーム競技で割といい成績を収め、自分の嫌いな部分ともあまり向き合ってきませんでした。先輩からそう言われたときに、自分からチアを取った時に何も残らない気がして、とても悔しかったのです。歳を重ねるにつれて、あまり自分を怒ってくれる人も否定してくれる人も少なくなってきたな、と気づき、その先輩についていこうと決めました。
そこからは忙しい先輩のもとに通い詰めました。就活について相談をすると、毎度自分の足りない部分を指摘してくださり、そのたびに家に帰っては泣いて、また出直す日々が続きました。でもどんなに忙しくても絶対に時間を作ってくれ、本気で怒ってくれた先輩の姿に、「先輩を超えたい」「人のことを自分ごととして本気で考えられる人になりたい」と思ったのです。こうして6月ごろからは時に涙を流しながら、歯をくいしばりながら、濃い2カ月を過ごしました。
自分がパフォーマーでいること以外で、私に力が湧いてくる瞬間っていつだろう、夢中になれることってなんだろう、と考えました。私の場合は何か目標に向かってがむしゃらになる瞬間が大好き、一丸となる空間がたまらなく好きなんだ、と気づきました。ただ「1番が好き」という理由だけではなく、本当にやりたいことに対して素直になって就活を進め、最終的には8月末にすべて終え、広告代理店に就職を決めました。
「ありがとう」を伝えるために現役復帰
そして9月1日、念願の現役復帰を果たしました。目標はただ一つ、「ありがとう」を伝えきることです。7年間のチア生活の集大成として1位を飾りたい、という思いはもちろんあったのですが、とにかく感謝を伝えるための3カ月のカウントダウンが始まりました。チームに、先輩に、後輩に、コーチ、支えてくれた方々、家族、そして同期に。一人で頑張った就活を通して、チームで一つの目標に向かって頑張れる喜びを改めて感じてからは、毎日の練習が愛おしくてたまりませんでした。どんなにつらくてもどんなに痛くても、時にはチームを思ってメンバー同士でぶつかった日も、毎日が大切な宝物です。
11月27日、最後の全国大会。結果は2位。笑顔で喜びました。悔しさがなかったわけではないのですが、心から「やりきった」という感情が大きく、演技ですべての方々に「ありがとう」が伝えられたと思っています。